2026年10月1日
2026年7月29日・30日の2日間、パシフィコ横浜にて「KubeCon + CloudNativeCon Japan 2026」が開催されました! 本レポートでは、事業部広報として現地に参加した筆者の視点から、クラウドネイティブ技術の最新トレンドやAIセキュリティの最前線について、日立メンバーが登壇したセッションや日立ブースでの展示を中心に、現地の様子をお届けします。
キーノート会場の様子
キーノートのオープニングを飾るCNCF幹部陣 Chris Aniszczyk 氏 (CTO)と Jonathan Bryce 氏 (CEO)
KubeCon + CloudNativeCon Japan 2026は、クラウドネイティブ技術の開発や普及をグローバルにリードしている非営利団体Cloud Native Computing Foundation (CNCF)が主催する世界最大級の公式カンファレンスであり、世界中からオープンソースソフトウェア(OSS)の開発者やコミュニティメンバーに加え、IT企業のエンジニアが参加します。日立も本イベントにおいて、登壇や展示ブースを通じ、AI時代に求められる安全で信頼性の高いクラウドセキュリティに必要な最先端の取り組みを紹介しました。
キーノートで「ID沼」をテーマにAI時代のアイデンティティ管理を語る中村
イベントのメインプログラムであるキーノート(基調講演)には、CNCFのボードメンバーおよび本イベントのCo-Chair(共同議長)を務める、Head of Hitachi OSPO (Open Source Program Office)の中村 雄一が登壇しました。中村は、AIネイティブ時代の到来により、アイデンティティ(IDやアクセス権限)管理がこれまでにない新たな技術的課題に直面していることを紹介しました。こうした複雑な状況を「ID沼」とユーモアたっぷりに表現したスライドでは、会場から笑いと共感が起こるなど、多くの参加者の強い関心を集めました。講演では、AIの普及に伴い複雑化するセキュリティや安全なアイデンティティ管理のあり方について、これまでの歩みとこれからの展望を解説しました。
Keycloakを用いたAIエージェントの認証・認可について解説する乗松
Maintainer Trackセッションには、Keycloakのメンテナ(OSSプロジェクトの中核的な開発推進者)として活躍する、日立 OSPOチーフOSSスペシャリストの乗松 隆志が登壇しました。近年、複数のAIエージェントが協調しながら業務を遂行するAgentic AIの普及が進む中、その安全性が課題となっています。乗松は、Keycloakを用いたAIエージェントのアイデンティティと認証について解説しました。AIエージェントを安全に活用するためには、そのエージェントが「何者か」を確認する認証(Authentication)と、どの情報や機能へのアクセスを許可するかを判断する認可(Authorization)が重要になります。
Keycloakは、こうした認証・認可を一元的に管理する代表的なOSSです。乗松はそのメンテナとして、Keycloakの主要機能の開発をけん引しています。本セッションではIBMに所属するメンテナと共同登壇し、AIエージェントと外部ツールをつなぐ共通規格MCP(Model Context Protocol)における安全な認可の仕組みを紹介しました。さらに、AIエージェント向けの認可サーバーとしてKeycloakを実際に動作させるデモ実演により、聴講者の関心を集めていました。
AuthZENインタフェースとKeycloakの連携について講演する田畑
日立OSPOのチーフOSSコンサルタントである田畑 義之が登壇し、安全・安心なAI活用を支えるセキュリティ技術の最新動向について講演しました。田畑は、Linux Foundation傘下でAgentic AI Foundation (AAIF)の認知度向上やコミュニティ活性化をリードする初代AAIFアンバサダーに、2026年6月に就任しました。講演では、AIエージェントに対して「どのシステムへのアクセスを許可するか」「どの操作まで認めるか」を適切に制御する「認可」の重要性を説明しました。そのうえで、認可の方法を共通化するための標準仕様「AuthZEN Authorization API 1.0」を解説。さらに、Keycloakを活用し、AIエージェントにアクセス許可証(トークン)を与え、あらかじめ定めたルール(ポリシー)に基づいて操作の可否を判断するまでの流れをデモで実演しました。セッション終了後も聴講者から質問が相次ぎ、対面イベントならではの熱気あふれるセッションとなりました。
多くの来場者でにぎわった日立ブースの様子
展示ブースの説明員のメンバー
展示エリアの日立ブースでは、OSSを活用し、企業のDXやAX (AIトランスフォーメーション)を加速させるサービスやソリューションを紹介しました。主に、AIエージェント同士を安全に連携させる「AIエージェント連携ソリューション」や、開発者が効率よく安全にアプリケーションを構築するための基盤環境である「Platform Engineeringサービス」を展示。イベント開催中は国内外の多くのエンジニアやコミュニティメンバーが足を止め、熱心に質問や意見交換をする姿が見られ、大盛況となりました。
これまでの日立によるグローバルなOSSコミュニティへの継続的な貢献が評価され、本イベントでは中村がCo-Chairとして初日のキーノートの司会進行や二日目のキーノート登壇を務めました。また、日立メンバーは、日本企業として最多となる複数のセッションに登壇し、さまざまな取り組みを発信しました。こうした登壇や展示を通じて、日立がOSSの発展をグローバルにリードする存在であることを、強く印象付ける機会となりました。AIエージェントやクラウドが社会に深く浸透する今、その根底を支える「安全・安心なセキュリティ基盤」としてのOSSの役割・価値がますます大きくなっていることを改めて認識しました。