東北電力ネットワーク「引込線以下設備不良予兆検知システム」導入事例

【後編】「IT×OT×AI」で電力保安の現場を変える

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2026年9月24日

スマートメーターのイベント情報を「回数」ではなく「密度」で分析し、AIを活用して設備不良を停電前に捉える「引込線以下設備不良予兆検知システム」。東北電力ネットワーク株式会社(以下、東北電力ネットワーク)と日立は共同研究で得た技術をシステムへ実装し、管内全域で試行を重ねた。技術を作るだけでなく、停電前に現場へ向かうという新たな業務を定着させ本格運用へ移行した取り組みは、現場の働き方と電力保安をどう変えたのか。


技術から業務へ、試行運用で築いた現場定着

東北電力ネットワークと日立が共同研究で開発に挑んだ「引込線以下設備不良予兆検知システム」は、実用化に向けて段階的に検証と試行運用を進めた。システム化前は分析結果を現場へ渡し、社員が設備を確認。不良の有無や現場写真を分析側へ戻し、予測結果と実際の設備状態を照合しながら精度を確かめていった。2022年のMDMS※1への実装後は東北6県と新潟の全域で試行運用へ移行し、その過程で本格運用を見据えた管理画面や業務フローも整備。この試行期間は単に精度を見極めるだけでなく、実際の業務に定着させるために必要な機能や運用を整理する時間でもあった。

 

というのも、従来は停電が起きてから現場へ駆け付けており、予兆段階で設備を確認するために足を運ぶこと自体が追加業務のように受け止められる可能性もあるからだ。そうなると、現場の理解や協力を得るのが難しくなってしまう。こうしたことから、試行運用では予測精度の確認だけでなく、新たな保守の考え方を現場に受け入れてもらうことも重要なテーマとなった。「試行期間をある程度長く取って、実際にそこに不良設備があることを肌で感じてもらえるようにしました。そうした経験の積み重ねを通じて、ようやく本格運用を迎えられたように思います」と回想するのは、本格運用後の現在もシステムの利用状況の集約や機能改良を担っている東北電力ネットワークの柴田 豊氏だ。

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また、システム面では現場の使い勝手を高める改良も欠かせなかった。試行期間中には本格運用で必要となる機能を整理し、すでに対応予定の案件を繰り返し通知しない仕組みのほか、日付や条件による絞り込み、対応状況を入力できる管理機能なども追加。さらに開発ではアジャイルで試行錯誤を重ね、その成果をまとめて本番システムへ反映した。

 

※1 Meter Data Management System

的中率92%、現場に表れた予兆検知の効果

そして2024年4月、引込線以下設備不良予兆検知システムはいよいよ本格運用を開始。その後も予測精度の改善は続き、現在の的中率、つまり同システムが「設備不良あり」と予測した対象のうち実際に不良が確認された割合は92%に達している。

 

本格運用1年後の現場担当者へのアンケートでも、87%が業務効率化を実感したと回答。その点について「私が勤務した事業所では、予兆が出た案件には全て停電前に対応できていました。その分、夜間や土日に突然停電して対応するケースが減ると考えれば、社員の負担だけでなくお客さまへの影響も小さくできます」と話すのは、共同研究や本格運用への移行に携わった東北電力ネットワークの風張 勇介氏だ。

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さらに、予兆検知がもたらした価値は単なる業務効率化だけにとどまらない。柴田氏は「それまでにない発想で新たな業務を確立できたことは大きな成果です。私たち配電部門の社員だけでなく、停電が起きないことでお客さまサービスの向上にもつながっており、両面でメリットが出ています」と評価する。

予兆検知から設備管理へ、広がる次の一手

情報システムでデータを処理し、電力設備に関する現場知見を取り込んで、機械学習による予測につなげる一連のアプローチは、いわば「IT×OT※2×AI」の具現化でもある。そして、その高度化を追求する取り組みは現在も続いており、2023年度に研究したカバー率向上の成果は今年度中にシステムに実装される計画だ。さらに東北電力ネットワークでは、的中率92%という実績を背景に社員の現地確認を経ず、予測結果を基に工事会社へ直接修繕を依頼する運用も検討している。

 

また、数百万規模の設備を経過年数だけでなく実際の状態に応じて管理できれば、延命や計画的な更新を支えるアセットマネジメントの高度化も見えてくる。「今後もお互いの知見を持ち寄りながら、一緒に新たな価値を生み出す協創を続けていきたいですね。こうした取り組みを通じて、電力会社の働きやすい環境づくりや企業イメージの向上にもつながればと思っています」と予兆検知を含むMDMSの開発を統括する日立の和田 義將はこれからを見据える。

活用の舞台もさらに広がる。すでに第2世代スマートメーターへの更新も始まっており、より粒度の高いデータを新たな分析や業務へどう生かすかが次のテーマだ。そして、2024年度には両社による全国の主要な一般送配電事業者への横展開も始動。管内で確かな実績を上げている本システムのさらなる普及・拡大をめざす。

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今後について「日立さまのAIの技術や知見をMDMS以外にも生かせれば、当社の働き方改革やお客さまの信頼度向上にもつながります。これからも小さな気づきを大事にしながら、システム化をさらに進めていきたいですね」と風張氏は期待を寄せる。スマートメーターの新たな価値の探求から始まった、6年以上に及ぶ東北電力ネットワークと日立の息の長い協創。停電を未然に防ぐ予兆保全として結実したその取り組みが次に見据えるのは、人々の暮らしを支える電力保安のさらなる進化だ。

 

※2 Operational Technology(設備や機器の運用・制御技術)

 

 

 

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風張 勇介

 

東北電力ネットワーク株式会社

配電部(スマートメーター運営)

主査

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柴田 豊

 

東北電力ネットワーク株式会社

配電部(スマートメーター運営)

主務

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和田 義將

 

株式会社日立製作所 社会システム事業部

エネルギーシステム第一本部 エネルギーシステム第一部

担当部長

東北電力ネットワーク株式会社

[所在地] 宮城県仙台市青葉区本町一丁目7番1号

[設 立] 2019年4月1日(2020年4月1日より事業開始)

[従業員数] 6,381名(2026年3月末現在)

[事業内容] 一般送配電事業、離島における発電事業 等

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