株式会社JPX総研「Hitachi Advanced Database」導入事例

【後編】移行の壁を越え、変化に強い審査基盤を実現

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2026年10月1日

複数候補を対象としたPoC*¹を経て、売買審査システムの次期分析基盤に日立の「Hitachi Advanced Database*²」(以下、HADB)を選んだ株式会社JPX総研(以下、JPX総研)。本番移行では従来と同じ処理結果を保ちながら、既存SQL*³をHADBの特性に合わせて書き換え、最適化する必要があった。さらに、プロジェクト期間中も注文件数は想定を上回る勢いで増加。2026年9月28日の稼働開始まで、JPX総研と日立は変化する前提条件にどう向き合ったのか。

 

*¹ Proof of Concept(概念実証)

*² 内閣府の最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(中心研究者:喜連川情報・システム研究機構機構長/東大特別教授)の成果を利用。

*³ Structured Query Language(リレーショナルデータベースを操作するための言語)


移行性を見極め、「HADB」の性能を引き出す

JPX総研の売買審査システムの新たな分析基盤として日立の「HADB」の適性を見極めるPoCに先立ち、両社は従来製品からの移行性を確認した。まず日立は、JPX総研から提供された一部の表定義やSQLを分析して互換性や修正の必要性などを机上で検証。さらに、SEと製品部門が協力して、PoC用の実機環境を設計し、実際の取引データを使って従来環境との処理性能を比較。限られた期間内に、ハードウェアの調達から環境構築、SQLの移植、そして測定まで工程を進めた。

画像2 増山 友基(株式会社日立製作所 金融第二システム事業部 金融システム第一本部 第三部 主任技師)

しかし、このPoCでは技術的な困難にも直面する。「従来環境のSQLをHADB向けに変換するだけでは期待した性能が出ない処理があったのです。結果の同一性を保つことを大前提に、HADBのアーキテクチャーや得意な方式に合わせて処理方法を組み替えるのが、技術的に最も苦労した点でした」と明かすのは、プロジェクトマネジャーとして新たな分析基盤の構築と従来環境からの移行を率いた日立の増山 友基だ。

 

従来のデータや業務ロジックを生かしながら性能を高めるには、データベースやハードウェアだけでなく既存アプリケーションの仕組みへの理解も欠かせない。そこで日立は、PoCの段階からSEやHADBの製品部門、ハードウェア部門が連携する体制を整備。

 

その結果、従来環境の約4分の1の処理時間となる性能を引き出した。PoCを経て採用が決定した後の本番環境構築・移行フェーズでも、設計・構築から既存SQLの移植・最適化、性能検証までワンチームで取り組んだ。

画像4 野崎 陽平(株式会社日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 ミドルウェアサービス本部 DB部 主管)

HADB製品部門で技術支援を担った日立の野崎 陽平は「PoC前の調査でSQLの互換性とHADBへの移行性を確認しました。従来環境を踏まえてハードウェア構成などを検討し、速やかに検証環境を整えられたことも成果につながったと考えています」とPoCの成功要因を考察。事前に移行性を見極め、製品やSE、ハードウェアの各部門が早くから連携したことが、PoCを円滑に進める土台になったという。


変化する要件と性能課題に応えるチーム力

プロジェクト期間中にも、次期売買審査システムを取り巻く前提条件は大きく変わった。相場の急変などを背景に、注文件数が要件定義時の想定を上回る水準へ増えたためだ。JPX総研と日立はスモールスタートの方針を見直し、CPUなどを増強した構成で稼働を迎える計画へ切り替えた。

 画像4 大野 光誠(株式会社JPX総研 ITビジネス部)

「日立さんはDB部門だけでなく、情報系共通基盤のインフラ部門とも調整し、構成変更を支えてくださいました。状況が動く中でも着実に前へ進めてもらえたことを心強く感じます」と語るのは、本件のプロジェクトリーダーを務めたJPX総研の大野 光誠氏だ。大野氏自身も売買審査部と日立の間に立ち、要件や課題の調整に当たった。

 画像5 岡江 慧(株式会社JPX総研 ITビジネス部 課長)

一方、本番移行で浮かび上がったのが、個々の性能課題に対する日立の対応力だ。本件のプロジェクトマネジャーとして全体を統括したJPX総研の岡江 慧氏は「一つの処理で思うような性能が出ないと、こちらとしては不安になります。それでも日立さんは原因を突き止め、修正するまでのスピードが、私が経験したほかのプロジェクトと比べても圧倒的に速かった。アプリとDBを同じ日立のチームが担う強みを実感しました」と評価する。


協創で審査基盤のさらなる進化へ

稼働開始前、JPX総研は日立のシステムテストと並行して検収テストを実施した。従来システムと新システムの抽出結果を照合すると、同じであるべき箇所は一致し、改修部分では狙いどおりの差異を確認。また、従来システムでは注文が集中した日に朝8時までの処理完了要件を超えることもあったが、新システムではPoCと同等以上の大幅な処理時間短縮を実現し、ピーク時の大量データも所定時間内に処理する要件を満たしている。岡江氏も「今後は朝までに処理が終わるのかと心配することもなくなりそうです」とHADBの導入効果に満足げだ。

 

なお、SQLによる抽出結果は売買審査業務を担う日本取引所自主規制法人に提供される。新システムではその方法も見直し、従来システムに備わっていたWeb画面を廃止して、汎用的なCSV形式のファイルとして出力する方式に変更。あえて機能を絞ることで追加改修時の影響範囲を狭め、開発リードタイムの短縮を図る。

 

今回のプロジェクトを振り返って「改修や新たな抽出ロジックを盛り込んだにもかかわらず、テストで見つかった不具合はごく少なく、品質の高さを感じました」と評価する大野氏。今後は性能向上に加え、AI活用についても日立と議論を重ね、新たな開発につなげていきたいという。岡江氏も「取引手法が複雑化する中、新しい切り口や機能を加える必要は今後も生じると思います。日立さんと追加改修をより短いリードタイムで進めたいですね」と先を見据える。

こうした期待に応えるべく、日立ではAI活用やデータ利活用の高度化を見据え、HADBの性能向上に加えて外部データレイクの活用にも対応し、多様化する分析ニーズに応えていく考えだ。公正で透明性の高い市場を支える売買審査基盤。その進化をめざすJPX総研と日立の協創はこれからも続いていく。

 

株式会社JPX総研

[所在地] 東京都中央区日本橋兜町7-1

[設 立] 2021年12月1日

[従業員数] 263人(2026年3月31日現在)

[事業内容] 金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービスおよびシステム関連サービスの提供、取引所金融商品市場の開設に関連する業務など

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