株式会社JPX総研「Hitachi Advanced Database」導入事例

【前編】公正な証券市場を守る売買審査システムを刷新

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2026年10月1日

株式市場が活発化する中、相場操縦やインサイダー取引といった不公正行為を監視・抑止する売買審査業務の重要性も高まっている。この業務をシステム面から支える株式会社JPX総研(以下、JPX総研)の売買審査システムでは、審査対象データが増え、その処理能力が限界に近づいていた。そこで同社はその刷新を決断。次期データ分析基盤に選ばれたのは、日立の「Hitachi Advanced Database*¹」(以下、HADB)だった。

 

*¹ 内閣府の最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた最高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(中心研究者:喜連川情報・システム研究機構機構長/東大特別教授)の成果を利用。


膨大な取引から不公正の兆候を捉える「売買審査システム」

東京証券取引所では株式など金融商品の注文と約定が日々大量に発生する。その中に相場操縦やインサイダー取引などの兆候がないかを調べ、不公正取引を監視・抑止するのが日本取引所自主規制法人(以下、JPX-R)の売買審査業務だ。株式会社日本取引所グループ(JPX)傘下で、市場データや指数の提供とシステム関連サービスを担うJPX総研は、JPX-Rが利用する売買審査システムの開発・維持管理を通じてその業務を支えている。

画像2 岡江 慧(株式会社JPX総研 ITビジネス部 課長)

この売買審査システムについて「公正で透明性の高い市場を守るためにも、不公正取引を適切に監視・抑止し、迅速かつ的確な審査を支える仕組みはますます重要になっています」と説明するのは、さまざまなプロジェクトで業務部門とシステム部門をつなぎ、マネジメントを担うJPX総研の岡江 慧氏。市場利用者が安心して取引できる環境の整備を同社の重要な使命と位置付ける。

 

そもそも売買審査は特定の事象だけを捉えて一律に判定できる単純な業務ではない。多様な観点から取引の動きを検証し、専門的な知見に基づいて判断する必要がある。だからこそ、その前段で大量データから審査対象を抽出するシステムには、処理の速さだけでなく確実性も欠かせない。


市場取引の多様化と取引量の増大。待ったなしの基盤刷新

しかし近年、個人投資家の裾野が広がり、市場参加者の多様化と取引手法の複雑化が進む中、売買審査で多角的に分析する注文情報や約定情報も増大。売買審査システムの分析基盤は処理能力の限界に近づきつつあった。

 

その限界が顕在化していたのが、取引終了後に注文・約定データを処理する夜間バッチだ。通常の件数なら朝2~3時ごろに終わる一方、注文が集中した日には、業務部門が定める朝8時までの処理完了要件を超えるケースが目立ち始めていた。未処理分は別の時間帯や環境を使って補い、審査漏れを防いでいたものの、運用面の負担は少なくなかったという。

 

加えて、売買審査システムの分析基盤として利用してきた従来製品のサポート期限も迫っていた。そこで同社は、当面のオンプレミス運用と将来のクラウド移行を見据えて、性能や拡張性、長期運用、コストなどを総合的に評価する次期基盤の選定に着手。通常時だけでなく、注文集中によって処理量が大幅に増えた場合でも所定時間内に処理を完了できる性能が、新たな分析基盤に求められる絶対条件となった。


実データのPoCを経て「HADB」を選定

JPX総研では新基盤の選定に当たり、複数の候補製品を対象としたPoC*²を実施。従来システムで長時間を要していた処理も含めて、実際の取引データを使って本番運用に近い条件で性能を検証した。また、このPoCでは日立のSEと製品部門が連携して実機環境の設計から性能検証までを支援。その結果、次期分析基盤として採用されたのが大規模データの検索・集計に特化した日立の「HADB」だ。

 画像3 増山 友基(株式会社日立製作所 金融第二システム事業部 金融システム第一本部 第三部 主任技師)

「新たな分析基盤に特に求められたのは処理性能と拡張性でした。その点で、HADBなら注文件数の増加に対応でき、将来クラウドに移行した場合も同様の性能を発揮できます」と振り返るのは、SEとしてPoCから提案、さらにプロジェクト発足後の推進まで一貫して担った日立の増山 友基。HADBが要求性能を満たせることを確認できたPoCを通じて、確かな手応えを得られたという。

画像4 野崎 陽平(株式会社日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 ミドルウェアサービス本部 DB部 主管)

HADBが要求性能を満たすうえで鍵となったのが、CPUやストレージの処理能力を効率よく引き出す独自の「非順序型実行原理*³」だ。大量の注文が集中する状況でもCPUを動的に割り当てられるため、負荷の変動が大きな売買審査の処理にも適していた。

 

製品部門でHADBの提案シナリオ策定と技術支援体制の構築を担った日立の野崎 陽平は「性能に加え、CPUコア数ではなくデータ容量を基準とするライセンス体系のほか、長期サポートやサーバーやストレージなどを柔軟に組み合わせられる拡張性も提案しました」と説明。性能面だけでなく、長期運用やデータ量の増加、構成変更、将来のクラウド活用まで見据えた柔軟性もHADBの強みだった。

 画像5 大野 光誠(株式会社JPX総研 ITビジネス部)

「PoCでは、従来長時間を要していた処理が大幅に短縮され、性能の高さを実感しました。また、コスト面もHADBの大きな魅力です」と日立の提案を評価するのは、売買審査システムと内製システムを担当し、開発やテストにも携わるJPX総研の大野 光誠氏だ。従来の売買審査システムのアプリケーションを担ってきた日立が、次期分析基盤まで一体で支援できる点も選定時の安心感につながったという。これは性能を最優先としながら、コストや長期運用も含めて総合的に評価した結果だった。

 

こうして要求性能を満たすことを前提に、コストや長期サポート、ライセンス体系、拡張性などを比較したうえで、HADBを次期分析基盤に選んだJPX総研。次に待っていたのは、従来の処理結果を変えずに既存SQL*⁴を移し替え、HADBの性能を最大限に引き出す難度の高い移行プロジェクトだった。

 

*² Proof of Concept(概念実証)

*³ 喜連川 情報・システム研究機構機構長/東大特別教授、合田東大教授が考案した原理。

*⁴ Structured Query Language(リレーショナルデータベースを操作するための言語)

 

株式会社JPX総研

[所在地] 東京都中央区日本橋兜町7-1

[設 立] 2021年12月1日

[従業員数] 263人(2026年3月31日現在)

[事業内容] 金融商品市場に関係するデータ・インデックスサービスおよびシステム関連サービスの提供、取引所金融商品市場の開設に関連する業務など

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