こくみん共済 coop「Risk Simulator for Insurance」導入事例

【前編】Web完結型共済を支える新たな引受審査の仕組みづくりへの挑戦

画像1: こくみん共済 coop「Risk Simulator for Insurance」導入事例 【前編】Web完結型共済を支える新たな引受審査の仕組みづくりへの挑戦

2026年8月25日

全国労働者共済生活協同組合連合会(以下、こくみん共済 coop)が2026年5月に提供を開始したWeb完結型の新商品「こくみん共済 あっと」。『一番身近で、手にとりやすい保障』というコンセプトのもと、スマートフォンからも申し込めるこの商品の引受審査業務を支えているのが、日立の「Risk Simulator for Insurance」だ。共済事業としての公平性を守りながら、シンプルで迅速な加入手続きを可能にした革新的な引受審査のかたちは、どのように実現したのか。


共済事業の公平性を担保する引受審査とその課題

組合員の相互扶助によって成り立つ共済において、申込手続時の告知内容をもとに加入可否を判断する引受審査は、掛金収入・共済金支払いの収支バランスと組合員間の公平性を支える重要な業務だ。 万一のリスクを組合員全体で分かち合う共済だからこそ、告知内容を適切に評価し、公平な引受判断につなげる必要がある。

 

この引受審査について、「重要な業務ですが、そこに十分な人的リソースを割けていなかったのが実情です。また、当会には長らく使ってきた引受審査の基準がありますが、そのアップデートにも苦労している状況でした」と従来の課題を振り返るのは、共済商品の開発部門を統括するこくみん共済 coopの三羽 克洋氏だ。 同会の既存商品の引受審査では、申込書を受け付けた事務部門が一次判断を担い、判断が難しい案件については、共済開発部など商品を所管・開発する部門に照会。 商品開発や制度設計などの担当者が課内で分担しながら、複雑化した基準や例外条件を確認し、諾否を検討してきた。

 

その一方で、告知内容に一律的な判断がしにくい“グレーゾーン”の与件が含まれる場合、個々の担当者の経験値に頼らざるを得ない面も大きくなる。 こうした審査業務の属人化に伴い、担当者の育成に加え、その異動時には蓄積された知見をどのように引き継ぐかといった課題も生じていた。

Web完結型商品が求めた、質問項目の設計と引受審査の見直し

こうした課題を見直す大きな契機となったのが、Web完結型の新商品「こくみん共済 あっと」の開発だ。背景には、従来の「こくみん共済」がファミリー層向けの印象を持たれやすく、20代・30代などの若年層に「自分たち向けの商品」と受け止められにくいという問題意識があった。同商品では医療保障と死亡保障のいずれか一方、または両方を選択できる。さらに、死亡保障は1年更新で見直しやすく、医療保障は公的医療保険の対象となる入院・手術などの自己負担分に備えられる保障とすることで、若い世代にも分かりやすい商品設計をめざしている。

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とはいえ、Web上で申込み手続きを完結させるには、引受審査のあり方も見直す必要があった。この新商品の開発で新たな引受審査の検討に携わったこくみん共済 coopの阿部 泰央氏は「既存商品では紙や対面で組合員の方とやり取りし、必要に応じて追加告知書を書いていただくことを前提に引受を進めています。そうした細やかな確認手続きを取りにくいWeb申込みで、正しい告知に必要な情報を確実に取得するためには、質問項目や引受の仕方をあらためて考える必要がありました」と説明する。

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この質問項目の設計において重要な役割を果たしたのが、共済金支払業務の知見だった。「以前在籍していた部署での経験から、Web上ではシンプルさや見やすさを大切にしながらも、公平にリスクを取るために必要な情報はきちんと取得しなければならないと考えていました」と語るのは同会の根倉 未衣氏。共済金請求時の告知内容を確認する業務経験をもとに、「こくみん共済 あっと」の申込時に使用する質問項目の検討に参加した。そこで重視されたのは、組合員が迷わず回答できる分かりやすさと、公平な引受判断に必要な情報の取得を両立させることだ。

ルールベースからデータに基づく引受審査へ

こうした中、こくみん共済 coopと長年にわたりシステム領域で関係を築いてきた日立が、Web完結型商品に求められる引受審査を実現する新たな仕組みとして提案したのが「Risk Simulator for Insurance」(以下、Risk Simulator)だった。医療ビッグデータを用いたこのリスク分析ソリューションは、健康状態に関するデータをもとに将来の疾病リスクを評価し、引受判断に活用するスコアとして可視化できる。

 

検討の過程では、疾病ごとに定めた基準や条件に告知内容を当てはめて判断する「ルールエンジン」という仕組みも、他の選択肢として候補に挙がっていた。このようなルールベースの審査支援は判定ロジックが明快な一方で、膨大な疾病すべてに個別のルールを整備し、基準改定のたびに更新し続ける必要がある。また、ルールエンジンでカバーしきれないケースでは、人が対応することで結果を出すまでにより多くの時間がかかってしまう可能性もあった。

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これに対してRisk Simulatorは、健診・レセプトデータなどの実データからリスクの傾向を読み解き、スコアとして評価する。そこには、ルールに基づく演繹的な判定から、データに基づく帰納的なリスク評価へ、という発想の転換がある。

 

「今回の『あっと』は、既存の仕組みから切り離して一から作る取り組みでもあります。だからこそ、従来とは異なる仕組みに挑戦する価値があると考えました」という三羽氏の言葉のとおり、同会はRisk Simulatorの採用を決定。Web完結型商品を支える新たな審査基盤づくりに向けてプロジェクトを本格化させる。そのプロセスは、従来のルールベースとは異なる、実データにもとづくリスクのスコア化を活用した“新たな引受審査”への挑戦でもあった。

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三羽 克洋

 

こくみん共済 coop

共済開発部 部長

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根倉 未衣

 

こくみん共済 coop

共済開発部 生命共済課 課長補佐

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阿部 泰央

 

こくみん共済 coop

共済開発部 生命共済課

こくみん共済 coop

[所在地]東京都渋谷区代々木2-12-10
[設 立]1957年9月29日
[常勤役職員数]3,587名(2025年5月末現在)
[事業内容]消費生活協同組合法に基づき、共済事業を担う協同組合。各種共済の元受事業、受託事業などを展開

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