UR都市機構「健康なまちづくり」協創事例
UR都市機構「健康なまちづくり」協創事例
2026年10月22日
2025年11月、独立行政法人都市再生機構(以下、UR都市機構)は千葉県八千代市の高津団地で住民の健康増進と地域活性化をめざすサービス実証を開始した。5者連携による本実証では、日立が担うスマホアプリやポイント施策をはじめ、地域のイベントなど複数の施策を組み合わせ、住民の外出や社会参加を促進。「楽しさ」を入り口に人を動かす仕掛けは、どんな手応えを生み、どんな可能性を示したのか。
2025年11月、高津団地で始まったサービス実証では、住民の外出や社会参加を促しながら健康増進と地域活性化につなげる仕組みづくりが進められた。UR都市機構と八千代市、民間企業3社が連携する中、日立はスマホアプリの活用や「団地ポイント」の仕組みづくり、データ分析などを担当。団地内の拠点や連携先のQRコードを読み取ることでもポイントがたまり、健康相談会などへの参加も対象となる仕組みを構築した。また、ためたポイントは健康食品などの景品と交換でき、複数の施策をつなぐ仕掛けとして設計。対象を高津団地の住民に限定せず、団地内のチラシや掲示に加えて周辺地域のフリーペーパーでも周知したため、団地外から本実証に参加する人も現れた。
高津団地で実証推進や関係者との調整を担ったUR都市機構の赤堀 圭佑氏は「ポイントがとても受け入れられると分かったのは大きな収穫です。日立さんもアプリの提供だけでなく、他の企業のサービスやイベントとの連携も図り、現場でもイベント等でご一緒するなどし、住民の方と同じ場に入りながら取り組みを進めてもらえました」と説明。実際、日立の担当者も休日に団地へ足を運び、住民と一緒にウォークラリーを歩くなどイベントの現場にも加わった。普段は接する機会の少ない団地住民からアプリの使い勝手などを直接聞けたことは、日立側にとっても貴重な機会になったという。さらに、ポイントがどれだけたまったかを話題に住民同士の会話が弾むなど、行動を促すだけではない効果も生まれている。
とはいえ、アプリを用意するだけでは参加は広がらない。「『アプリはどうやってダウンロードするの』というところから始まる方もいます。イベントの時に一人ずつ質問を受けながら説明しました」と振り返るのは、本実証で住民への案内や問い合わせ対応を担ったUR都市機構の鷲足 涼氏。アプリの利用には初期設定などからサポートが必要なケースもあり、現地での丁寧な対応が欠かせない。日立の担当者もダウンロード支援などに加わりデジタルの仕組みを現場で一緒に支えた。
本実証までには、健康を前面に出したイベントでは思うように人が集まらなかった経験もあった。そこで今回は、コーヒーや会話を楽しむ住民が集うコミュニティ拠点を入り口に、健康へ自然に関心を向けてもらうアプローチを重視。その結果、八千代市の講座でも普段とは異なる層が参加するなど、健康への関心が高い人以外にも接点が広がった。

本実証の全体企画や関係者との調整を担ったUR都市機構の松尾 知佳氏は「単独の組織だけではなく、さまざまな関係者が連携して協創したこと自体が成功のきっかけになったと思います。行政や企業など異なる立場の組織が共通の目標に向けて連携する『コレクティブ・インパクト』という考え方に近い取り組みです」とそのアプローチを捉える。日立のアプリやポイントも他の企業や地域の施策と組み合わされ、一つのサービスでは完結しない仕組みとして機能した。
UR都市機構が築いてきた住民や行政との接点に日立も加わり、サービスを提供する側と利用する側が同じ場で声を交わしたことも、この実証ならではの協創の姿といえる。データ活用では、個人を直接特定できないIDを用いて、UR都市機構側のデータとアプリから得られるデータを突合できる仕組みを構築した。独立行政法人として求められる厳格な情報管理に対応するため、セキュリティやコンプライアンス部門、事業者間で事前調整を重ねるなど、その準備には半年程度を要したという。日立は歩数やイベント参加状況などの分析結果をUR都市機構へ返し、現場で得た感触とデータの双方から施策の効果を捉えられる環境を整えていった。
実証を積み重ねる中で、健康や生きがい、社会参加といったテーマもデータによる裏付けを得ることで捉え方が具体化してきた。一方で、新たにアプリをダウンロードしてもらう難しさは残り、シニア層では女性の参加が目立ったことから高齢男性へのアプローチも今後の課題として見えている。楽しさやポイントを入り口に、スマートフォンを持たない人も含めてより幅広い層をどう巻き込むか。デジタルとリアルを組み合わせた新たな仕掛けの検討も続く。
次に見据えるのは、高津団地で得た知見を団地の外へ広げることだ。これについて「団地のお客さまだけでなく、団地を核とした健康なまちづくりを地域へ広げていきたい。楽しみながら健康になるという形も見えてきたので、ビジネスとして進めていく考えです」と赤堀氏。団地ごとの特性に応じて施策を調整しながら、行政との連携も視野に地域ごとに持続可能な形を探っていきたいという。
楽しさを入り口に社会参加を促し、住民の健康増進とまちの活性化につながる仕組みを探った「健康なまちづくり」実証。提案当初にビジュアルで描いた事業展開イメージに沿って丁寧に育んできた協創は、団地と地域、そして人と人とをつなぐ新たな可能性を示した。そして日立はこれからも、UR都市機構とビジョンを共有しながら地域に新たなつながりと“元気”を生み出す協創を支えていく。
松尾 知佳
独立行政法人都市再生機構
ビジネスコミュニケーション部 企画課
(兼務 ウェルフェア推進部 計画推進課)
主幹
赤堀 圭佑
独立行政法人都市再生機構
東日本賃貸住宅本部 千葉エリア経営部
団地マネージャー
鷲足 涼
独立行政法人都市再生機構
東日本賃貸住宅本部 千葉エリア経営部
団地マネージャースタッフ
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
[所在地] 神奈川県横浜市中区本町6-50-1 横浜アイランドタワー
[設 立] 2004年7月1日
[職員数] 3,225人(2026年4月1日現在)
[事業内容] 都市再生事業、賃貸住宅事業、災害対応支援、海外展開支援 等