Physical AI Day 【General Session 01】

【第2回】フィジカルAIが拓く、社会インフラの新たな未来――100年の現場知見と最先端AIが融合

2026年8月26日

日立製作所は2026年5月20日にフィジカルAIがもたらす変革や活用について考える「Hitachi Physical AI Day」を開催した。社会課題とその解決へのフィジカルAIの活用について、お客さま、パートナーと議論し展望する三つのGeneral Sessionのうち、日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長の津坂美樹氏をゲストに迎え、日立製作所執行役常務の細矢良智とフィジカルAIの活用が社会インフラにもたらす未来について語り合ったGeneral Session 01。後半では、現実世界にAIを適用する上でのポイントと、セキュリティの重要性が語られた。


マイクロソフトとの協創による、信頼を土台としたAI活用

細矢

ここからは、日立の長年のパートナーである日本マイクロソフト株式会社の代表取締役社長、津坂美樹さんと議論していきます。マイクロソフトと日立は2024年に戦略的提携を結び、連携を強化しました。現在、マイクロソフトと日立は、マイクロソフトの最新クラウド基盤やAI技術、日立エナジーがもつ設備保守の現場データとドメインナレッジを組み合わせ、故障が発生する前のプロアクティブな保守を実現するなど、現場のあり方を根本から変革する取り組みを共同で進めています。

 

生成AIの波が画面を飛び越えて、工場、鉄道、エネルギー網といったフィジカルな世界に急速に浸透しており、フィジカルAIのモメンタムは、インフラの歴史を変える大きな転換点であると感じています。

 

津坂

少子高齢化が進み、社会インフラの現場で熟練した知見を持つ方々が不足していくという課題は、日本だけでなく多くの国々が抱えています。AIはオフィスワーカーだけのものではありません。日本の労働者の半数は現場で働くフロントラインワーカーと言われており、その方々を支える鍵としてフィジカルAIへの期待が高まっています。生成AIにフィジカルAIが加わることで、自然言語でロボットを動かしたり、ロボットがエージェント化して人を助けたりする未来が現実味を帯びてきました。

社会インフラ×AIの難しさ

細矢

一方で、社会インフラにAIを適用することは簡単ではありません。フィジカルな現場には、摩擦、劣化、天候、予期せぬ物理的なトラブルなど、不確実性が常につきまといます。デジタル上のAIなら単なる間違いで済む場面もあるかもしれませんが、社会インフラでは失敗や遅れが許されない難しさがありますね。

津坂

予測不能な世界でAIを使ってどこまで現実に近づけられるか。そのポイントとなるのはデータの収集、学習、適応のサイクルを回し続けることです。フィジカルな世界にはデータ化されていない現象も多くありますが、生成AIの力を借りてデータ化と学習・適応のサイクルを加速することで、現実世界の動きをより精度高く予測できるようになるでしょう。

 

ただし、私たちのCopilotというプロダクトの名前にも表れているように、最終的にはHuman-in-the-Loop、あくまでもAIは人間を支援する存在です。フィジカルAIの世界でも、人が最終判断をし、指示を出す構造は引き続き重要です。

社会インフラを支える信頼性

細矢

フィジカルAIでは信頼性が非常に重要ですが、御社ではどのような設計思想で信頼性を確保しているのでしょうか。

 

津坂

私は常々、「セキュリティがあってはじめてAIを使える資格を得る」と言い続けています。マイクロソフトは世界でもトップクラスにサイバー攻撃の対象にされている組織の一つです。私たちは世界中のお客さまのIT環境を支える立場として、セキュリティには非常に大きな投資をしています。1日100兆件以上のシグナルを分析し、全社員22万人のうち3万5,000人はセキュリティ専門人財であり、全社員へのセキュリティ教育も徹底しています。また、Secure by Design、Secure by Default、Secure by Operations、何をもってもセキュリティを前提として製品をつくり、運用上も何かあればすぐに対応できるようにするということを原則としています。

 

細矢

日立が御社をパートナーとして信頼する理由の一つが、まさしくそうした点です。LumadaをAzure上で展開する際にも、私たちが重視するセキュリティとガバナンスが、後付けのオプションではなく基盤そのものに内包されている点に安心感を抱いています。

 

津坂

AI時代には、ゼロトラストの考え方がますます重要になります。誰も無条件には信頼しないという前提で、システムを設計する必要があります。さらに、AIエージェントが増えて、2028年までに世界で13億エージェントが生まれるともいう時代、人間だけでなく、ロボットやエージェントも守る必要があります。全方位的なセキュリティを考えなければなりません。

フィジカルAIを社会実装へ、広がるAIエコシステム

細矢

フィジカルAIの社会インフラへの実装により、どのような可能性が広がると見ていますか。

 

津坂

日立が深くかかわってきたエネルギー、交通、製造といった重要な社会インフラの領域では、設備データ、運用データ、さらに財務データも組み合わせることで、次に何が起こり得るのか、何を防ぐべきなのかをAIで予測できるようになるでしょう。AIやAIエージェントがデータを分析し、予測型の経営で意思決定のスピードと透明性を高めることも可能になると見ています。

 

細矢

社会インフラを支えるには、新しい機能を取り込むスピード感と、何十年も安定して動かし続ける信頼性の両立が必要です。御社とともに、この相反する要素を高い次元で両立していきたいと思います。

 

津坂

ありがとうございます。フィジカルAIも他のAIと同様に、クラウドからエッジまで、セキュリティとガバナンスを土台にしながら、さまざまなパートナーとエコシステムをつくっていくことが、これからの鍵になるでしょう。

 

細矢

まさに、信頼を土台にしたイノベーションですね。日立のAIエコシステムは、時代とともに拡大をしており、マイクロソフトをはじめとするさまざまなパートナーの皆さまと互いの強みを補完し合い、お客さまに最適なソリューションを提供しながら拡大しています。

さらなるAIエコシステムの拡大

細矢

直近の今年5月にはAnthropicと戦略的パートナーシップを締結。110年以上にわたって蓄積してきた日立のドメインナレッジと先進的なAI技術を融合させ、Lumada 3.0を強化していく方針です。

 

今回の提携の柱は、お客さまのAIトランスフォーメーションの加速、日立グループ社員約29万人によるAI活用の自社実践、HMAXの高度化、そして「Frontier AI Deployment Center」です。このセンターでは、世界190か国に広がるお客さまへの価値提供とともに、29万人の日立グループ社員による最新AI技術の活用を促進します。AnthropicのApplied AI担当者と、日立のIT、OT、プロダクト、セキュリティの専門家が共同チームを組み、ユースケース創出やソリューション開発を支援していきます。

 

日立は「世界一のフィジカルAIの使い手になる」と宣言しています。優れた自社技術、ビッグデータ、生成AI、AIエージェント、フィジカルAI、そして世界最高峰のパートナーとの連携により、社会インフラを圧倒的に進化させます。フィジカルAIがもたらす新たな未来に向けて、日立はこれからも挑戦を続けていきます。


関連リンク

日立は、9月3日(木)と4日(金)の2日間、日立グループ最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」を東京国際フォーラムで開催します。詳細・お申し込みは下記バナーから公式サイトをご参照ください。

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