Physical AI Day 【General Session 02】
Physical AI Day 【General Session 02】
2026年8月26日
日立製作所は2026年5月20日に「Hitachi Physical AI Day」を開催し、フィジカルAIがもたらす変革を考えるとともに最新の活用事例を紹介した。フィジカルAI活用の全体像を展望する三つのGeneral Sessionのうち、General Session 02では、日立のAIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」がビジネスの最前線においてどのように展開されているのか、実践事例を紹介した。その模様をお届けする採録記事の第2回は、日立ビルシステムの山本武志取締役社長が生産・メンテナンス現場でのAI活用について、日立レールのジャンフランコ・メッシーナ デジタルトランスフォーメーション バイスプレジデントが鉄道の製造現場での活用について、ユースケースを交えながら語る。
山本
日立ビルシステムでは、生産現場やメンテナンス現場でデジタル化を進めており、予兆診断、作業・修理計画、予定管理などにおいて大幅な作業の効率化を実現してきました。現在は個々の現場にとどまらず作業空間全体をデジタルで捉え、個別最適から空間全体の最適化を図る段階へと進化しています。その中核を担うのがフィジカルAIです。
ビルシステム事業では、製品を工場で生産し、現地に据え付け、その後、長期にわたって保全・メンテナンスを行います。その各工程をデジタル化するとともに、データを介してつなぐことで全体としての価値向上に取り組んでいます。
ものづくりの現場では、ライン単位の自動化やロボット活用を進めてきました。ただし、多品種少量生産や非定型作業など、ロボットが苦手とする領域では、今も人の手が頼りです。
そこで、熟練作業者の動きや判断をロボットに学習させ、再現する取り組みを進めています。人に依存していた作業をロボットが担える可能性が見え始めており、ものづくりの現場は人とロボットが協働する新たな段階に入りつつあります。
メンテナンスの現場では、昇降機の稼働データをリアルタイムでセンターに送信し、遠隔診断やリモートメンテナンスを行うことが可能になっています。一方で、現場対応の多くは今もフィールドエンジニアが担っているため、人手不足、早期の即戦力化、品質・安全の確保が大きな課題です。
そこで、ウェアラブルカメラや作業支援デバイスを導入し、データの活用により現場の作業者の能力を拡張しています。メンテナンスの現場は、人とAIとデータが融合し、新たな価値を生み出す段階へと入っています。
例えば、AIがデータから危険な状態を検知して安全アラートを発します。また、音声チャットボットが現場の疑問に即座に答え、作業ガイダンスで必要な手順をリアルタイムに示します。点検結果をもとに報告書を自動生成することもできます。
安全アラートの例としては、高所作業でハーネスフックが正しく取り付けられていない場合、AIがリアルタイムに映像を解析し、フックの取り付けを確認するよう作業者に警告します。また、点検作業の一環でエスカレーターの踏み段を外した場合、作業員がその個所に近づくと、転落や転倒の危険をAIが検知し、注意喚起や電源遮断の指示を行います。
人が常に見守ることが理想ですが、それが難しい現場もあります。そこで私たちは、AIがバディとなり、危険箇所の事前検知や不安全な行動の予測と警告を行い、作業者の安全を守る仕組みを実装し始めています。
さらに、こうした取り組みを通じて得られるデータを活用し、稼働品質の向上や早期復旧といった顧客価値の最大化につなげていきます。また、お客さまの現場でも活用いただけるソリューションとして展開していきます。
メッシーナ
この40年間、私たち日立レールは工場の自動化に取り組んできました。プロセスをデジタル化し、無駄を排除し、ロボットをより効率的に活用してきました。しかし今、それだけでは十分ではありません。地政学的な変化、気候変動、サイバーリスク、人財不足、サプライチェーンの不安定化など、世界は急速に変化しています。単なる自動化ではなく工場の知能化、つまりAIが必要です。
日立レールでは、昨年、米国に最新のデジタル工場を開設しました。そこでは、工場のあらゆるエリア、バリューチェーン全体にAIを適用しています。従来の工場は、予測可能なプロセスで動いていましたが、これからは予測不可能な変化に対応できるプロセスに移行しなければなりません。そのために、フィジカルAIとそのオーケストレーションが必要です。
例えば、ロボットにセンシング機能を持たせ、鉄道車両の欠陥を検出します。巨大な車両やパネルの中にあるマイクロメートル単位の欠陥を検出し、デジタルツインを自動で作成します。そして元の設計データと比較し、差分を計算し、必要な加工や修正をロボットに指示します。こうしたことを可能にしているのがフィジカルAIです。
私たちのアセットや工場がある物理世界と、設計データやデジタルツインがあるデジタル世界を、中心にあるAIがつないでいます。そのAIが、スマートファクトリーとHMAXを組み合わせる場となっています。工場からアセットへ、アセットからメンテナンスへ、そしてメンテナンスから設計へとデータが循環し、顧客価値の創造へとつながる仕組みをAIが担っています。
フィジカルAIの真の価値は、1台のロボットに搭載することよりも、複数の機械やロボット、デバイスを統合したときに発揮されます。近い将来、工場そのものがフィジカルAIを持つようになるでしょう。
ただし、大切なのは人間の関与です。AIがすべてを置き換えるわけではありません。日立には、モビリティ、エネルギー、コネクティブインダストリーズなど、さまざまな領域で培ってきた100年以上のドメインナレッジがあります。AIを活用するには、その知識と経験が不可欠です。テクノロジーが可能性を開き、人間のリーダーシップがそれを現実にするのです。
谷口
皆さんありがとうございました。AIは、人の意思決定を支援するツールから、共に動き、共に判断するパートナーへと進化しています。さらに重要なのは、個々のインフラがAIで賢くなるだけではないということです。モビリティ、エナジー、インダストリーがつながり、互いに協調する「ハーモナイズドソサエティ」を実現することが、これからますます重要になります。
その実現は、日立だけではできません。パートナーの皆さんとともに、よりよい社会をつくっていくことが必要です。本日の議論が、その新たな一歩のきっかけになれば幸いです。
日立は、9月3日(木)と4日(金)の2日間、日立グループ最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」を東京国際フォーラムで開催します。詳細・お申し込みは下記バナーから公式サイトをご参照ください。