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デジタルシステム&サービス

金融

2026年2月24日

金融


1. 銀行コールセンター業務のサービス強化に向けた生成AI活用

銀行のコールセンターでは、業務の属人化により、オペレータのスキルや経験の差によって問い合わせ対応の品質にばらつきが生じている。近年、RAG(Retrieval-augmented Generation)※1)を用いた生成AI(Artificial Intelligence)による自動応答の取り組みが進んでいるが、質問者から入力される情報が不十分な場合、ハルシネーションが発生するという課題がある。

日立の「ユーザー確認技術」は、質問に関する情報が不足している場合に、足りない情報についてユーザーに聞き返すことで、生成AIが質問の意図をより的確に把握し、不足情報を補完できる。この仕組みにより、回答精度の向上が可能となる。銀行との検証※2)では、この技術を用いることで回答正答率が58%から86%へと改善し、28%の精度向上を確認した。これにより、オペレータの負荷軽減や業務効率化が期待でき、利用者にとっても待ち時間の短縮による満足度向上が見込まれる。

今後は、コールセンター業務にとどまらず、営業や審査業務の支援、システム開発の効率化など、さまざまな領域への適用を進め、新たな価値創造をめざしていく。

※1)大規模言語モデルに外部知識を検索して補強し、より正確な応答を生成する技術。
※2)2025年5月から9月にかけて株式会社京葉銀行と技術検証を実施。

[図1]ユーザー確認技術の概要 [1]ユーザー確認技術の概要

2. PBIを用いた生体認証統合基盤サービスの社会実装と応用拡大

デジタル社会の発展に伴い、確実な本人確認が可能で利便性の高い生体認証は、安心・安全・便利な社会インフラとして着実に普及している。一方で、年々高度化する脅威に対応するため、厳格な個人情報管理が求められている。

日立の特許技術であるPBI(Public Biometric Infrastructure)技術をコアとした生体認証統合基盤サービスは、生体情報そのものを保持しない強固なセキュリティと多様な認証手段の提供により、幅広い分野で生体認証の適用を可能にしている。

これまで導入してきた本人確認による決済連携やログイン連携に加え、2025年度は新たに以下の業種や新しい経済圏への応用拡大の取り組みを実施した。

(1)鉄道改札機やホテルチェックインへの対応:生体認証システムを活用した日立と東武鉄道株式会社の共同プラットフォーム「SAKULaLa」における利用開始
(2)高齢者移動助成券のデジタル化:徳島県石井町での実証実験
(3)ビーコン技術と組み合わせた観光デジタルチケット発行:株式会社JTBのデジタルチケットシステム「Tebu-Ride PASS」と連携した香川県小豆島での実証実験
(4)Web 3.0技術と連携したイベント入場管理:ぷらっとホーム株式会社のNFT(Non-fungivle Token:代替不可能なトークン※))技術を連携した花火大会入場チケットの入場権利確認

今後も、生体認証統合基盤サービスによってリアルとデジタルをつなぎ、人々の豊かな社会の創造に貢献していく所存である。

※)ブロックチェーンから発行される電子的な証明書のこと。

[図2]多様化するニーズに対応可能な生体認証統合基盤サービス [2]多様化するニーズに対応可能な生体認証統合基盤サービス

3. 金融機関の非対面・非来店取引を内製化する「Branch in Mobile」サービス

金融機関の窓口業務DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する「Branch in Mobile」をクラウドサービス化し、2025年4月より提供を開始した。本サービスは、Amazon Web Services上に構築したセキュアなFINEMAX※1)基盤を活用し、SaaS(Software as a Service)型で提供することで、金融機関における環境構築の負担を大幅に軽減するものである。

本サービスは、対面・非対面取引をワンプラットフォームで提供し、複数システムの構築を不要とするとともに、利用者は場所を問わず手続きを行うことが可能である。さらに、日立独自のローコード開発機能やCI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)※2)機能を提供し、導入企業自身によるシステム追加・変更を実現する。これにより、業務改革への迅速な対応が可能となる。

また、導入企業に対しては、業務の内製開発を支援する体制も整えている。今後もサービス提供範囲を拡大し、金融機関のDX推進を強力に後押ししていく所存である。

※1)日立が提供する、金融機関向けのインターネットバンキング共同センターサービス。

※2)ソフトウェア開発における自動化手法で、コードの統合(CI)とテスト・デプロイ(CD)を継続的に行う仕組み。

 

[図3]Branch in Mobileサービスの強み [3]Branch in Mobileサービスの強み

4. デジタルアセット時代のAML高度化に向けた業界横断型共同センター構想

ブロックチェーン技術の普及と、暗号資産やステーブルコインなどのデジタルアセット市場の拡大により、金融取引はグローバル化し、即時性が飛躍的に向上している。一方で、不正送金や詐欺手口の巧妙化に伴い、デジタルアセットにおけるAML(Anti Money Laundering)対応は、従来の事業者単独ではコストや人財不足の面で限界がある。特に、オンチェーン情報と顧客属性情報(オフチェーン)が複雑に結びつく領域では、個社ごとに重複した精査業務が発生し、対応の遅れが被害拡大を招く可能性がある。

こうした課題に対し、日立は暗号資産交換業者やステーブルコインの発行・取扱を行う金融機関などが共通で利用できる「AML共同センター」を構想している。本センターは、業界横断で共有可能な「疑わしいアドレス」情報やリスク判定ロジックを集約し、各社の保有情報と連携することで、高度なモニタリングと効率的な調査プロセスを実現する。日立は、賛同企業と共に実証実験を進め、その効果や実現性を検証しており、今後、デジタルアセット取引が社会インフラ化する時代に備えて、AMLの効率化と実効性向上に寄与する業界共同基盤の実現をめざす。

[図4]金融・暗号資産の規制対応を支えるAML共同化・監視プラットフォーム [4]金融・暗号資産の規制対応を支えるAML共同化・監視プラットフォーム

注:略語説明 CFT(Countering the Financing of Terrorism)、KYC(Know Your Customer)


5. 実務ノウハウの構造化と継承を支援する「ノウハウ視える化・継承ソリューション」

日立の「ノウハウ視える化・継承ソリューション」は、熟練者の退職や人財流動化により深刻化する「実務ノウハウの消失」という課題に対し、暗黙知の管理と形式知化の理論であるSECIモデル※1)を基盤として、日常業務へ継承プロセスを組み込む仕組みである。

まず、既存ドキュメントや業務ログを基に暗黙知を抽出し、人間の脳の働きをモデル化した理論であるハーマンモデル※2)に基づき、技術・業務・プロセス・人的コネクションの4分類に整理することで、個人依存の知識を構造化する。次に、継承対象のノウハウと担当者を結びつけ、学習・更新をワークフロー化する。さらに、生成AIによる対話型サポートや自動生成される習熟度テストを活用し、実務への定着を促進する。加えて、ノウハウの保有状況や更新状況を可視化し、組織として計画的に継承を進められる環境を提供する。

本ソリューションは、SharePoint環境上でドキュメント整理から継承・定着までを一気通貫で支援し、知識資産の維持と業務継続性の向上に貢献するものである。

※1)野中郁次郎と竹内弘高によって提唱された知識創造理論。暗黙知と形式知の相互変換を「Socialization(共同化)」、「Externalization(表出化)」、「Combination(連結化)」、「Internalization(内面化)」の4プロセスで説明するモデル。

※2)ネッド・ハーマンによって提唱されたHerrmann Whole Brain Model理論。人の思考特性を4象限(論理・計画・感情・創造)に分類し、認知スタイルを可視化する理論モデル。

[図5]実務ノウハウの可視化・継承・定着までを包含したアプローチ [5]実務ノウハウの可視化・継承・定着までを包含したアプローチ

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