2026年2月24日
1. フィジカルAIで切り拓く日立の戦略 Lumada 3.0とHMAXによる社会インフラ革新
7. 顧客経営課題解決に向けたOne Hitachi事業推進
10. AIネイティブな基幹システムへ刷新するモダナイゼーション powered by Lumada
11. 基幹システムのモダナイゼーションを通じた顧客のDXとAI活用推進
12. 手ぶら社会を実現する生体認証サービスSAKULaLa
13. カーボンニュートラル実現に向けた複雑化するエネルギー需給への対応
14. 拠点単位で最適なエネルギーマネジメントを提供するLocal EMS標準基盤
15. 品質と早期ビジネス立ち上げの両立をめざすGlobalLogicとの連携
16. データレイクハウスの実現に向けたHitachi Advanced Database
17. Oracle Database@Azureの実証検証と顧客適用
日立は長年にわたりITとOT(Operational Technology)の両面で培った経験と深いドメインナレッジを強みに、社会インフラの革新を推進している。生成AI(Artificial Intelligence)やAgentic AIの進化により、AIは業務の自律化や現場の最適化を加速している。こうした中、日立の「Lumada 3.0」では、特に「フィジカルAI」に注力し、膨大な現場データとAIを組み合わせ、ミッションクリティカルな分野で高い信頼性と可用性を実現している。HMAX by Hitachiでは、モビリティやエナジー分野を中心に、センサーやAIエージェントを活用した業務効率化・コスト削減・働き方改革を実現し、他分野への展開も進行中である。プラットフォームにおいてもAIネイティブな基幹系システムへ刷新する「モダナイゼーション powered by Lumada」を軸に、アセスメントからデータ管理、戦略的な運用・保守に至るまで、先進技術と基幹系ナレッジを融合し、基盤構築を支える。さらにGoogle Cloud*やNVIDIA*、OpenAI*などのグローバルパートナーとの連携を強化し、技術力を備えた人財の育成も継続的に推進するとともに、AIエコシステムの拡大と社会課題の解決に貢献する。
「世界トップのフィジカルAIの使い手」をめざし、日立はデジタルセントリック企業への変革を加速していく。
[1]日立のAI戦略の概要
注:略語説明 SaaS(Software as a Service)、DC(Data Center)
日立は「カスタマーゼロ」の考え方を軸に、まず自社業務をAIエージェントで改革し、その成果を顧客にも展開している。
AIエージェントによる業務改革は「戦略的適用」と「開発・運用環境整備」の二本柱で推進されている。AIエージェントの適用領域は、事業ライン業務・間接部門業務・個人業務の3レイヤーに分けられ、業務効率効果の高い間接部門業務から活用を開始した。
全社AIエージェント統括部門が各部門の要件を集約し、GlobalLogicの開発リソースを活用した開発サービス(AI Agent Factory)により、リスクマネジメント・品質レビュー・取引先調査などを自動化するエージェントを迅速に開発し、運用サービス(AI Agent Platform)を通じて社内に提供している。また、AIリスクの管理体制や関連するガイドラインも整備し、AIエージェントの安全な業務適用を推進している。
[2]AIエージェントによる業務改革
注:略語説明 QA(Quality Assurance)、HARC(Hitachi Application Reliability Centers)、E2E(End-to-end)
AIエージェントは生成AIと異なり、自律的に作業を行うものであり、人の代替として組織全体の生産性向上の起爆剤となる可能性を秘めている。AIエージェントの活用には大きな効果が期待できる反面、その特長からリスクも存在する。すなわち、自律性とそれに伴う自動化に起因して誤判断や倫理的問題、データ漏洩を発生させる可能性などである。エージェント同士が互いにコミュニケーションし、業務を行うマルチエージェントになると、さらにリスクが複雑化する。
したがって、AIエージェントの活用を加速するためにはガバナンスの整備が不可欠である。生成AIはユーザーがインプット/アウトプットをコントロールしているが、プロセスを自動化するAIエージェントでは、プロセス自体をコントロールすることが重要となる。AIエージェントの利用ルールや開発要件だけでなく、マルチエージェントになると、エージェント間のやり取りに対してもルール設定が必要である。株式会社日立コンサルティングでは、このようなマルチエージェント時代を見据えたAIエージェントのガバナンス整備を支援している。
(株式会社日立コンサルティング)
[3]AIエージェントのリスクを踏まえたガバナンス
システム開発に生成AIを適用する場合、その生成AIには高い回答精度が求められる。日立では、システム開発の全工程における作業プロセスを細分化し、それぞれのプロセスで生成AIの効果を最大限発揮するプロンプトを設計している。さらに、これらのプロンプトを自動的に生成するツールを用意し、必要最低限の情報を入力するだけで高度な回答を得られる仕組みを構築した。これを社会インフラシステムなどミッションクリティカルシステムにも適用可能な「生成AI活用開発フレームワーク」として整備し、展開している。本フレームワークは大規模システム向けに一括生成処理機能を備えており、大量のソースコード生成を夜間に実施するなど、開発プロセスの変革を実現した。
また、レガシーマイグレーションにおいては、COBOL(Common Business Oriented Language)ソースからCOBOL設計書を再生し、COBOL設計書からJava*設計書に変換後、Javaソースコードを生成するアプローチにより、従来課題となっていた保守性が高いJavaソースコードの生成を可能としている。そのほか、プロジェクトマネジメントや品質マネジメントなど、プロジェクト全体に生成AIを適用して生産性向上を実現する。
今後もシステム開発専用AIエージェントを取り込み、新しい技術に追随して、さらなる効率化を実現していく。
[4]マイグレーションへの適用例
日立は、現場の知見とAI技術の融合によるAIアセット活用が、Lumada 3.0とHMAXビジネスの成長に不可欠であると位置付けている。AIアセットとは、AIやデジタル技術を活用した業務に関する知見や仕組みを、他の場面でも再利用可能な形にまとめたものであり、これを全社的に活用することで、社内に存在するさまざまなナレッジをスケーラブルに展開できるようになる。
しかし、一般的に全社で一つのAIアセットを共有することは容易ではない。日立は、良質なAIアセットを可視化・共有し、つなげて使える仕組みとプロセスを構築している。この仕組みにより、各部門や顧客向けプロジェクトの導入コストが低減し、品質の安定化とスピード向上が実現されている。さらに、この仕組みに対して生成AIの活用による検索・要約機能の導入や、社内外の知見集約を進めることで、持続的なイノベーションと競争力強化をめざす未来志向のAIファースト時代に則したエコシステムが構築されつつあり、今後の発展が期待される。
[5]HMAX事業におけるアセット活用とスケーリング戦略
日立は先進的なAI技術を核に、現場の知見とデジタルを融合し、社会インフラの革新を推進している。モビリティ、エナジー、コネクティブインダストリーズの各分野で、AI活用による業務効率化や品質向上、働き方改革を実現し、デジタルセントリック企業への変革を進めており、自社で実践した成果を「カスタマーゼロ」として、顧客やパートナーへも展開している。
この戦略を支えるのが、世界トップクラスの技術を有する顧客・パートナーとのAIエコシステムである。ここでは、Google Cloud*とNVIDIA*との協業について紹介する。Google Cloudとは、社会インフラ分野におけるフロントラインワーカーの業務変革を加速するべく、OT領域へと協業を拡大し、AIエージェントの開発・活用を進める。NVIDIAとは、同社のリファレンスアーキテクチャに基づくAI Factoryをグローバルに構築し、AIソリューション群の開発・導入を加速する。
日立は「世界トップのフィジカルAIの使い手」をめざして、パートナーとともに、社会課題の解決と新たな価値創出を推進していく。
[6]AIエコシステムによる「世界トップのフィジカルAIの使い手へ」
注:略語説明 IGX(Industrial-grade Edge AI Platform)、VSS(Video Search and Summarization Agent)、EMEA(Europe, the Middle East and Africa)
日立製作所デジタル事業開発統括本部は、顧客の経営課題に相対し、デジタルサービスとデジタライズドアセットの組み合わせを通じて、課題解決や顧客事業の価値向上をめざす組織である。
データサイエンティスト、デザイナー、ビジネスアーキテクトというケイパビリティが三位一体となった組織は、価値創出を構想段階で終わらせず、事業成果へと確実につなげられる点で大きなメリットを有している。デザイナーが顧客や社会の本質的な価値を描き、データサイエンティストがその仮説をデータによって検証・具体化する。さらにビジネスアーキテクトが検証された価値を業務プロセス、組織、KPI(Key Performance Indicator)、投資対効果といった事業構造に落とし込み、実際に回り続ける仕組みとして設計・調整する。この三者が共同して動くことで、価値の発想、裏付け、事業化が分断されず、スピードを以て価値創出を推進できる。この仕組みが価値創出全体に一貫してひも付くため、実験止まりや形骸化を防ぎ、One Hitachiを実現する多くの事業機会の形成を目的として、活動を推進している。
[7]顧客の経営課題を解決する三つのケイパビリティ
HMAXは、日立が長年培ったOTとIT、AI技術の融合により、深刻化する人手不足やインフラ老朽化などの社会課題に挑む戦略的ソリューションであり、ミッションクリティカルな現場における業務の効率化と自律化を強力に推進するキードライバーとなるものである。
HMAXの最大の特長は、社会インフラを支え続けてきた「広範なインストールベース」のアセットと、現場への深い理解に基づく「ドメインナレッジ」にある。これらを先端デジタル技術と組み合わせることで競合優位性を確立し、モビリティ、エネルギー、インダストリー、金融、社会といった多様な事業領域へ広げることが可能となる。
展開においては、顧客の成熟度に応じた「三つの型」のアプローチが鍵を握る。特定業務の「個別最適」から始めて、システム全体の「全体最適」を経て、最終的には「業界最適」へと段階的に提案を進化させる。これらを支えるのが、NVIDIA*やGoogle Cloud*などとのエコシステムによる強固なAI基盤である。「世界トップのフィジカルAIの使い手」として技術と知見を結集し、社会実装をスピーディに進めることで、従来の製品販売から新たな価値創出モデルへとビジネスの変革を成し遂げることが重要である。
[8]One Hitachiで推進するHMAX展開戦略
注:略語説明 OEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)
生成AIの急激な普及、進化に伴い、AI処理に特化した「AIデータセンター」に対する需要が拡大している。日立は、エネルギー、冷却、ITなどDC向け機器・設備製品を多数有しており、これらの製品から収集するデータ、ドメインナレッジ、AI技術を統合することにより、DCの安定稼働、省人化、OPEX(Operating Expenditure:運用コスト)低減、CAPEX(Capital Expenditure:設備投資)低減などの価値を提供する次世代DC高度運用ソリューションの検討を開始した。本ソリューションは、価値最大化をめざすHMAXのコンセプトを具現化することにより、部分最適から全体最適へ進化する統合的な運用管理の実現に取り組むものである。
具体的には、IT/OTにまたがるリアルタイムデータ収集、分析、制御により、故障予兆検知、問題原因分析/対処実行自動化、設備保守計画最適化、冷却効率最大化、AI処理電力効率最大化などの実現をめざす。現在、顧客ヒアリングやPoC(Proof of Concept)による顧客課題/ユースケース仮説検証、技術検証を推進中で、2026年度に日立グループ内適用を開始し、段階的にソリューションを拡大して、顧客提供を進める予定である。
[9]DC高度運用ソリューションコンセプト
注:略語説明 BMS(Building Management System)、DER(Distributed Energy Resources)、UPS(Uninterruptible Power Supply)、NW(Network)、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)、CDU(Coolant Distribution Unit)
日立は、業務・組織の変革に向けてAIをフル活用できるAIネイティブな基幹システムへの刷新を推進する新サービス「モダナイゼーション powered by Lumada」※)の提供を開始した。
近年のAI進化による劇的なパラダイムシフトへの対応は、業種を問わず喫緊の課題であり、日立グループもデジタルセントリックな企業へのモダナイゼーションに取り組んでいる。
本サービスは、日立が実践を通じて蓄積したAI適用や組織変革のノウハウを体系化して提供するものである。計画フェーズ「グランドデザイン策定サービス」にて、業務・データ・IT・組織が調和したAIネイティブな事業基盤の実現方法やロードマップを策定し、実行フェーズ「業務・ITモダナイゼーションサービス」にて、AIエージェントによる業務自動化や、AIが活用しやすいデータ品質の維持、最新アーキテクチャへの刷新を実現する。
AI活用を前提とした業務変革とIT刷新を並行して進めるモダナイゼーションを通じ、顧客の持続的な事業成長に貢献していく。
(提供開始時期:2025年10月)
[10]業務・IT・組織の変革によるデジタルセントリック企業への転換
多くの国内企業において、既存メインフレーム上のプログラムの肥大化やブラックボックス化によるシステム開発の高コスト化・長期化、および技術者不足が課題となっている。さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や外部サービスとの柔軟な連携が必要であり、基幹システムのモダナイゼーションが急務となっている。
そこで、基幹システムの変革を可能とするプラットフォームをめざし、まずDX化に向けて移行性が高いオープンミドルウェアを導入してデータ移行支援ツールなどのアセットを活用し、短期間でのシステム移行を実現する。システム開発においては、生成AIを活用したコード生成や作業軽減などを行い、効率を向上する。
併せて、柔軟で効率的なシステム環境を整備して商品開発やサービス提供におけるシステム開発の効率化をめざし、新たなビジネス創出を支援するとともに、今後はAIをシステムに組み込むことで顧客のDXを支援していく。
日立は基幹システムのモダナイゼーションを支え、顧客の事業成長に貢献していく。
[11]AI、データ活用に向けたITモダナイゼーションにおけるステップ
少子高齢化に伴う労働力不足やデジタル格差の発生、なりすましの増加などの社会課題を背景に、誰もが安全かつ簡便に利用できる認証手段の必要性が高まっている。
これに対応するため、2024年4月にスタートした東武鉄道株式会社と共同で事業を推進する生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」を鉄道改札、店舗決済、入退管理など多様なシーンに拡大する。従来の指静脈認証に加えて顔認証を導入し、国内初の複数認証プラットフォームとして、日常生活のさまざまな場面で安心・快適な「手ぶら社会」の実現をめざす。
2025年11月からは東武宇都宮線での利用を開始し、定期券保持者は顔認証でスムーズに改札を通過できるようになった。店舗では決済端末に対応し、株式会社ジェーシービーとも協力して2026年度より顔認証決済の加盟店拡大とキャッシュレス推進を図る。
さらに、オフィスやスポーツクラブなどの入退管理にも顔認証を活用し、2026年度から東武鉄道のオフィスに導入する。今後も、リアルな生活とデジタル空間をつなぎ、安心・安全な社会を実現するサービスとして、社会課題の解決と新たな価値創出に取り組む。
[12]「SAKULaLa」が促進する業界を越えた事業者間のサービス連携イメージ
産業界においては、事業環境の変化や脱炭素社会移行への対応が急務となり、コストと環境負荷を抑えた改革が重要課題である。
これに対し、日立はクラウド型「ユーティリティ設備の稼働最適化サービス」の提供を開始した。本サービスは、サイバー空間でエネルギー需要と設備運用を再現し、数理最適化技術で最適解を導出するものである。これにより、エネルギーコストやCO₂排出量を削減し、事業計画や環境目標に沿った投資判断を行うことができる。また、運用段階では最適な運転計画を提示し、複合設備への統合的な制御指示により、最適な自動運転をサポートする。
本サービスは、企業のフレキシブル生産への対応、設備の老朽化対策、再生可能エネルギーや燃料転換によりエネルギー需給が多様化・複雑化する中で、刻々と変化する事業環境や制約に対し、投資判断時と同一の最適化エンジンを動的に活用することで、設備運用における最適解を継続的に提供する。
今後、本サービスをコアとしてIT×OT×プロダクトを組み合わせたトータルサポートを展開し、幅広い業種を対象にカーボンニュートラル実現に貢献する。
[13]クラウド型ユーティリティ設備の稼働最適化サービス
カーボンニュートラル実現に向け、企業や自治体ではEV(Electric Vehicle)や再生可能エネルギーの導入が加速している。これらを効率的に運用し、電力コスト削減とCO₂排出量低減を両立させるには、統合的なEMS(Energy Management System)だけでなく、拠点ごとのきめ細かな管理・制御が不可欠である。
これに対し、株式会社日立情報通信エンジニアリングは、長年にわたる電源システム開発で培ったエネルギーマネジメント技術と、日立グループのGX(グリーントランスフォーメーション)への参画経験を生かし、Local EMS標準基盤を開発した。本基盤は、アダプタを介して外部システムや機器と連携することで、拠点単位で最適なエネルギーマネジメントを実現する。
今後は、カスタマイズの容易性という特長を生かし、再生可能エネルギー最適化やV2X(Vehicle to X)※1)連携などの多様なユースケースに展開するとともに、「CNナビゲーター※2)」との連携も強化し、One Hitachiで社会・環境課題の解決に貢献していく。
(株式会社日立情報通信エンジニアリング)
※1)Vehicle to Xの略で、自動車とさまざまなモノとが相互通信・連携を行う技術の総称。
※2)日立が提供する、カーボンニュートラル実現に向けた最適計画を行うシミュレータと制御デプロイヤ。
[14]Local EMSと外部システム・機器との連携
市場の変化が加速する中、製品・サービス開発には「高品質」と「迅速な提供」の両立が求められている。従来のウォーターフォール型開発では、リリースまでに時間を要するため、顧客ニーズへの即応性が課題であった。
日立情報通信エンジニアリングは、通信基盤向けの統合運用管理プラットフォーム開発において、GlobalLogicと連携し、開発スタイルの変革に取り組んだ。本開発では、GlobalLogicがUI(User Interface)およびUX(User Experience)のデザインとSaaS基盤開発を担当し、日立情報通信エンジニアリングの開発領域とはAPI(Application Programming Interface)で通信するアーキテクチャとすることで、互いの強みを生かしながら開発の最適化を図った。また、柔軟なフィードバックが必要な領域ではアジャイル型、高品質が求められる領域ではウォーターフォール型を採用するハイブリッドなプロセスで開発を進めた。これにより、社外PoCでは87%のポジティブな評価を獲得し、予定より6か月早いリリースを実現した。
今後、この成果を生かし、GlobalLogicと開発技法・ビジネスモデルの融和を進め、エンジニアリングでLumadaの顧客提供価値向上に貢献していく。
(株式会社日立情報通信エンジニアリング)
[15]統合運用管理プラットフォームにおける開発スキーム
注:略語説明 DB(Database)
データ活用の先進企業では、AWS(Amazon Web Services)*が提供するAmazon S3※1)など、データレイクとして一般的に利用されるオブジェクトストレージ上に、各種データ分析や生成AIに用いられるオープンテーブルフォーマット※2)で大量のデータを蓄積し、データ活用の容易なデータレイクハウスの実現をめざしている。
日立は、超高速データベースエンジンHADB(Hitachi Advanced Database)で、それらのデータに対するSQL(Structured Query Language)での直接検索を実現した。HADBが備える非順序型実行原理※3)による並列処理で、データ保管コストの低いオブジェクトストレージを利用しながらも、高速なデータ検索を可能にする。さらにHADB内のデータと合わせた横断的な検索・分析によって、データ分析業務の多角化・効率化や、生成AIからのデータ活用効率の向上につなげていく。
今後、オンプレミス向けデータレイクハウスの実現についても日立ヴァンタラと推進するとともに、検索のさらなる高度化や今後のAI技術の進化を見据えた研究開発を図り、企業のDXの加速を支援していく。
※1)クラウドストレージサービス。安価で耐久性が高く、大量のデータ保存に適する。
※2)Apache Parquet*、Apache Iceberg*などの各種のデータ形式および、それらを対象に、SQLなどで直接検索・更新・分析を可能とするためのメタデータ管理とトランザクション制御の仕組み。
※3)喜連川 情報・システム研究機構 機構長/東大特別教授、合田 東大教授が考案した原理。
[16]多様なデータ活用を容易にするHADBの利用イメージ
注:略語説明 CSV(Comma-separated Values)
日立は、日本オラクル株式会社および日本マイクロソフト株式会社と共同で、基幹業務を対象としたマルチクラウド環境の検証を実施した。本検証では、Microsoft Azure*上で提供されるOracle Database@Azure*を活用し、基幹システムのデータプラットフォームに求められる高い処理性能と可用性の両立を目的としたシステム構成について評価した※1)。
日立は、2024年よりマルチクラウド環境への移行支援サービスを提供しており、本検証で得られた知見を、基幹システムを含むデータプラットフォームの構築やモダナイゼーション支援に活用している。これまでに複数の顧客に対する移行支援の実績がある。
近年、クラウド移行を検討・決定する顧客の間では、生成AIを活用したデータ利活用への期待が高まっている。こうしたニーズを背景に、日立は日本オラクルと連携し、基幹データをリアルタイムに検索・活用するユースケースとして、生成AIを活用したAIエージェントおよびデータプラットフォームの構築・検証に取り組んでいる。
これらの取り組みが評価され、日立はデータプラットフォーム、生成AI活用のそれぞれの領域において、日本オラクルより表彰された※2、3)。日立は今後も、生成AI活用を見据えたデータプラットフォームの検証を継続し、基幹システムのモダナイゼーションを支援するソリューションを提供していく。
[17]クラウド移行支援サービス for Oracle Database の特長
日立は、AWS*、Google Cloud*、Microsoft*、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)*を提供するOracle、NVIDIA*をはじめ、グローバル有数のテクノロジーパートナーとの戦略的アライアンスなどにより、エコシステムの構築を強力に推進してきた。こうしたパートナリングを通じて、ソリューションの共同開発や、クラウド・AIによるイノベーションを加速している。
このようなイノベーション加速においては、人財育成が重要なカギの一つになる。日立のクラウド事業やAI事業を牽引し、業界トップクラスの人財を育成するため、社内外研修による認定資格取得に加え、自らが課題解決の手順を導き出す実践力強化トレーニングを推進している。2025年には、事業拡大につながる技術力を発揮した重要な成果があるとして、AWS、Google Cloud、Microsoft、Oracleの各社からトップエンジニアが選出された。
今後もさらなるイノベーション加速に向けて、時代の転換点を生む先端技術を見極め、社内外で活躍できる人財を継続的に育成していく。
[18]業界トップクラスの人財育成のイメージ