エナジー
2026年2月24日
1. 高信頼性グリッドインタータイによる電力系統の持続可能性と相互接続性の強化
2. 脆弱なグリッドの安定性向上における同期コンデンサ技術と変換器技術
4. アラーム管理に向けた機械学習・メトリクス・ユーザーインタフェース設計の統合
5. HVDCステーションにおける無線センサー網によるコンディション監視
6. SF6フリー金属閉鎖型550 kV/63 kA HVCB
8. 資産管理のデジタル化によるスマートで効率的なHVCB運用の実現
9. 電力用変圧器デジタルツインのデータ駆動型モデルにおける進歩
10. HVDCエンジニアリング向けデジタルプラットフォームHVDC GridStar
11. マルチベンダーHVDCグリッドを実現するInterOPERA
13. 800 MW浮体式洋上サブステーション用電力用変圧器
14. 次世代のサステナビリティを実現する世界最大級765 kVエステル系変圧器
17. 東日本旅客鉄道 給電用変電所向けフルデジタル変電所システム
柔軟性が高く、高度に相互接続された日立エナジーのSFC(Static Frequency Converter:静止型周波数変換器)グリッドインタータイソリューションは、現在の電力系統の課題に対処するとともに、汎用的な電力インフラの実現を促進する。これらのソリューションは、さまざまな周波数と電圧レベルで動作する電源と負荷のシームレスな接続を可能にするものである。このSFCトポロジーは、制御能力とアンシラリーサービスによって分散型機器を統合し、大規模インフラ内のインターオペラビリティを最大化して、損失最適化されたエネルギーリンクを実現する。本ソリューションを通じて、より費用対効果が高く環境に配慮した電力系統の実現に貢献する。
(日立エナジー)
[1]インダイレクトコンバータとダイレクトコンバータを用いた異なるグリッド間におけるSFCグリッドインタータイの簡略ブロック図
注:略語説明 PCC(Point of Common Coupling)
脆弱なグリッドに再生エネルギー源を連系するうえでは、グリッド安定性の維持の面で大きな課題がある。安定的でセキュアなグリッドを確立するには、電圧サポートや故障電流注入、系統強度サポート、周波数制御、慣性サポートなどのサービスが不可欠である。従来、グリッド安定性の確保に際しては、固有の慣性と故障電流能力を有する同期コンデンサが用いられてきた。近年では、パワーエレクトロニクスと制御構造の進歩がパワーグリッドの安定性を向上するさまざまな技術の開発につながっている。
STATCOM(Static Synchronous Compensator:自励式無効電力補償装置)とE-STATCOM(Enhanced STATCOM)は、有効電力と無効電力のサポートの観点から活用が期待されている。これらの技術は、大量の再生エネルギーが導入される脆弱なグリッドの安定性を大幅に向上させるGFM(Grid-forming)能力を提供する。STATCOMとE-STATCOMの進歩によって、制御の調整可能性、制御可能なダンピング、グリッド擾乱への即時応答の強化といったメリットが得られる。
(日立エナジー)
[2]GFM E-STATCOM技術と同期コンデンサ技術の能力
サージアレスタは、GIS(Gas-insulated Switchgear:ガス絶縁スイッチギア)やケーブル、接続されたデバイスを過渡過電圧から守る機器である。日立エナジーのサージアレスタの能動素子である直列接続された金属酸化物バリスタブロックは、ガラス繊維強化樹脂複合材でできた絶縁素子(ループ)を利用して製造プロセス中に圧縮される。「耐用期間にわたって部分放電が発生しない」という顧客のニーズに応えるため、使用される絶縁材料、特に複合材ループについて、空隙、亀裂、層間剥離といった構造的欠陥がないかを評価する必要がある。
研究の結果、現在、複合材ループの検査に使用されている高価なCT(Computed Tomography)技術を、遥かに安価で高速な超音波試験に置き換え可能であることが判明し、複合材製品の自動超音波走査と評価のためのプロトタイプソリューションが開発された。これは水浸法トータルフォーカシングメソッドのためのハードウェアプラットフォームと、走査データを処理して構成要素を分類し、良質部分と欠陥部分を識別するソフトウェアパッケージを統合したものである。
(日立エナジー)
参考文献:Ziaja-Sujdak et al. "Ultrasonic Testing of Glass Fiber-Reinforced Polymer Composites Used in High-Voltage Insulating Components," in IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation, vol. 32, no. 1, pp. 83-91(2025.2)
[3]複合材を用いた絶縁構成要素の自動超音波走査ソリューション
電力網などの大規模なSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)系統において、アラームは不可欠である一方、リスクと作業の発生源でもある。グリッド運用者であるオペレータが処理するべきアラームの量と時間当たりの処理数は、電力網の拡大、送電と配電の連携、冗長性の高い機器の採用が進むに連れて増大している。
アラームシステムの性能を定量化し、ML(Machine Learning:機械学習)を使用してアラームの量と品質を管理する方法が、近年、CIGRE(Conseil International des Grands Réseaux Électriques)カンファレンスで提示された。さらに2025年の国際シンポジウムでは、リアルタイム運用をサポートして組織的アラーム管理プロセスを通知するための適用例が示された。二つの概念的ユーザーインタフェース、すなわち(1)拡張可能なアラームリストと(2)記号によるアラート供給によって、オペレータに有用なアラーム分析法を与え、アラームの報告方法を改善するためのユーザフィードバック機構を提供し、アラーム発報変更管理プロセスの効率を高める方法が具体化される。
データ駆動型MLは、特にオペレータとバックオフィスエンジニアの双方が恩恵を受けられるように実装することで、アラームを管理するための有望なアプローチとなる。知識の共有とアラーム品質改善の好循環によって、根本的な変革を促進することができる。
(日立エナジー)
[4]エンジニアリングとアラーム管理のインタラクションを可能にするユーザーインタフェースの概念
HVDC(High-voltage Direct Current:高圧直流送電)ステーションをはじめとした現代の重要インフラには、信頼性のある運用的アップタイムを維持するために、高度なデジタルコンディション監視、高信頼な運用、迅速なトラブルシューティング能力が必要である。HVDCステーションは通常無人で、保守作業員のアクセスは制限されており、各種コンポーネントは高電磁場などの過酷な環境に置かれている。一方、一時的な測定のために追加の有線センサーを配備するのは、煩雑で費用も発生する。
そこで、複数のエリアにおける一時的なセンサー機能を代替する有力な手段となるのが、過去数十年にわたる無線技術の進歩により実現したWSN(Wireless Sensor Network:無線センサー網)である。日立エナジーの研究開発部門は、ドイツのあるHVDCステーション向けの無線センサーPoC(Proof of Concept)を設計した。このパイロットプロジェクトは、屋内外のHVDCステーションのさまざまな環境における無線センサー監視の実現性を実証することを目的としている。PoCの結果、HVDCステーションにおけるWSNが屋内外において期待された性能を発揮することが示され、技術的実現性が証明された。この成果は、ETG(Energietechnische Gesellschaft)Kongressで発表されたほか、今後、パリで開催されるCIGRE 2026でも公開される予定である。
(日立エナジー)
[5]HVDC WSNの屋外セットアップのイメージ
気候変動に対応するべく、電力業界におけるスイッチギアは、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)約23,400にも上る強力な温室効果ガス、SF6(六フッ化硫黄)を使用しないものに移行しつつある。こうした中、CIGRE 2024で550 kV、63 kAのSF6フリーHVCB(High-voltage Circuit Breaker:超高圧遮断器)が発表され、DTB(Dead-tank Breaker)およびGISでの活用に向けた試験が行われた。SF6フリーHVCBは、電気特性がSF6と類似するCO2/O2/C4-FN混合ガスを使用しながら、同等の寸法を実現し、オプションでPIR(Pre-insertion Resistor:プレ挿入抵抗器)を備えている。各極には、直列に接続された二つのアークチャンバと、実績のある油圧スプリング機構が具備されている。DTBとGISの部品を最大限共通化するプラットフォーム設計により、効率と信頼性が向上した。本HVCBは、IEEE標準に準拠する裁断波インパルス試験を含めた厳格な試験に合格し、厳しい過渡現象に対する強い絶縁マージンを確認できた。
複数の研究機関が、本HVCBの性能と業界標準への準拠を検証した結果、145~420 kVでの早期の適用例に続き、CO2/O2/C4-FN混合ガス技術の550 kVまでの拡張性が実証された。これにより、電力会社は既存のSF6機器とも互換性のあるソリューションが利用できるようになり、持続可能な高電圧スイッチギアへの移行が加速すると見込まれている。
(日立エナジー)
[6]550 kV/63 kA SF₆フリーDTBの3D(Three Dimensions)レンダリング
GISのPD(Partial Discharge:部分放電)診断には、一般的にUHF(Ultra-high Frequency:超高周波)法が適用される。CO2排出量の低減に向けたユーザーとメーカーの目標を念頭に、SF6の代替ガスが開発され、導入された。それに伴い、SF6代替ガスGISに適用可能なPDセンサーの配置規則や適格性評価手順を確立する必要が生じた。これはSF6を使用するGISと比較して、SF6フリーGISのガス圧力はやや高く、CO2/O2/C4-FN混合ガスの物理的特性も若干異なるためである。
これを受けて詳細な測定と比較調査を行った結果、長年のUHF診断の経験から得られた結果を代替ガスに転用することが原理的に可能であると証明された。したがって、SF6系統における研究所試験の結果もまた、代替ガスを使用する類似ジオメトリの機器に転用することが可能となる。SF6機器で確立されたPDセンサーの配置規則もまた、環境効率の高いCO2/O2/C4-FNとN2/O2/C4-FN混合ガスに基づくSF6フリー機器に転用することができる。
(日立エナジー)
[7]内部UHFセンサーと感度測定のためのコンパクトな試験セットアップ
HVCBは、電力供給の安定性と継続性を維持するために必要不可欠な機器である。従来、遮断器の状態を診断するにあたっては、コイル電流・接点抵抗値などの電気的数値、振動・運動などの機械的数値、ガス分析(ガス式遮断器の場合)といった主要なシグナルをカバーできる、HVCBの診断・監視が用いられてきた。近年では、これらのシグナルを解釈して故障を予測するため、AI(Artificial Intelligence)やMLなどの高度なモデリング技術が研究されている。そのねらいは、監視データを資産管理戦略と運用に利用することで、保守計画の最適化、機器の長寿命化、そしてグリッドの信頼性とレジリエンスの向上を図ることにある。また、HVCBのPHM(Prognostics and Health Management)におけるデジタルツインの役割など、新たなトレンドを認識することがますます重要になりつつある。機器の故障や停止に起因する損害の発生を防ぐためには、継続的な監視とタイムリーな診断に基づく予防的保守が不可欠である。
(日立エナジー)
引用元:Ali Razi-Kazemi, “Diagnosis and monitoring of high voltage circuit breakers”, Webinar for IEEE Trans. Dielectric and Insulation (IEEE-DEIS)-Young Professionals(2025.10)
[8]従来のHVCBの資産性能管理と今後の展望
注:略語説明 DT(Double Throw)、5D(Five Dimensions)XAI(Explainable AI)、GAI(Generative AI)、IoT(Internet of Things)
電力用変圧器のデジタルツインは、センサーデータと設計パラメータ、保守記録、オンライン監視を仮想空間上でリアルタイムに統合するものである。種類の異なるこれらのデータを活用するためには、物理ベースのモデル (熱方程式、経年劣化評価)やデータ駆動型アプローチ[統計的手法、ML、DL(Deep Learning) ]、ナレッジベースのシステム (ファジィ論理、エキスパートルール)を用い、あるいは組み合わせて変換する必要がある。
組み合わせモデルは特に有望である。例えば、PINN(Physics-informed Neural Networks)は、PDE(Partial Differential Equations)およびODE(Ordinary Differential Equations) を損失関数に直接埋め込むことにより、動的熱挙動やセルロース分解などの用途において、少ない学習データでより高い精度を実現できる。
変圧器デジタルツインの主な適用分野は以下のとおりである。
(1)MLの活用を通じて従来の比率法の限界を克服する、DGA(Dissolved Gas Analysis)ベース故障診断
(2)複数の診断パラメータを組み合わせた機器の健康指標に基づく状態評価
(3)IECおよびIEEEに定められた負荷と継続的なパラメータ適応を組み合わせ、工場試験時より優れた性能を実現する熱負荷管理
一方で、サイバーセキュリティの脆弱性、学習のための障害データの不足、クラウド/エッジ間のトレードオフなどが今後の課題である。
(日立エナジー)
引用元:Sruti Chakraborty, Patrick Picher, Alexander Alber, Mauricio Soto, Frederica Bragone, Brian Sparling, “Advances in Data-Driven Models for Digital Twins of Power Transformers”, CIGRE Canada(2025.10)
[9]デジタルツインの概念
HVDC GridStarは、系統解析計算を合理化し、スケーラビリティ、反復作業の高速化、一貫したデータ品質の提供を可能にするクラウドベースのデジタルエンジニアリングプラットフォームである。従来のアプローチはローカルのマシンでの計算実行に依存していたため、レビューと承認に手間が掛かり、プロセスは不明瞭でバージョン管理が困難、かつ再利用性は低く、オンボーディングが難しいものであった。エンジニアリング全体においてはエンジニアの手作業によるやり取りを同期する必要があり、熟練の専門家が注意深く結果を分析する必要があった。
GridStarはユーザーがデータを束ね、ワークフローをテンプレートとして再利用できるバージョン管理が組み込まれたクラウド環境上で、プロジェクト、システム解析、計算を統合することでこれらの制限に対応する。開発の規模を拡大するために、専門のエンジニアが独自のツールをアップロードして管理し、プロセスを微調整できるスタディ・マネジメントが導入された。GridStarは既に7件の実行中プロジェクトで活用されており、さらに追加のプロジェクトが6件以上計画されている。
今後の機能強化には、以下のPoCイニシアチブが含まれる。
(1)電気シミュレーションツールPSCAD(Power Systems Computer Aided Design:電力系統コンピュータ支援設計)の実行
(2)機能検証、構成の改善のためのPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)の統合サポート
(3)迅速な入札対応や先を見据えたマーケティングのような、増加する要求への最適化機能
将来的にはGridStarプラットフォームに機械学習ツールやAIエージェントを搭載し、不具合の調査や反復作業の自動化、早期の顧客フィードバックを通じてエンジニアリングサイクルを短縮することも期待できる。
(日立エナジー)
[10]GridStar画面スクリーンショット
EU(European Union)が資金提供するInterOPERAコンソーシアムは、将来的に多端子・マルチベンダーによるHVDCグリッドを実現するための標準の確立をめざしており、技術仕様と検証だけでなく、商務、法的、規制上の枠組みを構築することにある。日立エナジーは、TSO(Transmission System Operator:送電系統運用者)、他のHVDCベンダー、風力タービンメーカー、プロジェクト開発者、および学術機関との協力を通じて、インターオペラビリティ標準の策定に貢献する。
プロジェクトは2段階で構成される。第1段階は協力の枠組みと機能仕様に焦点を当てて2025年に完了しており、第2段階ではソフトウェアシミュレーションと物理的ハードウェアデモンストレータを通じてインターオペラビリティを検証する。
この取り組みの一環として、日立エナジーは多端子・マルチベンダーシミュレーションのため、SIL(Software in the Loop)とHIL[Hardware in the Loop(デモンストレータ)]の両方の制御および保護システムを RTE(Réseau de Transport d'Électricité)社およびデルフト工科大学(Delft University of Technology)の研究所に提供した。InterOPERAプロジェクトは2027年の完了を予定しており、HVDC市場を拡大する持続可能なパワーグリッドの礎として、マルチターミナルHVDCへの道を拓くと期待されている。
(日立エナジー)
[11]リヨンのRTE研究所のリアルタイムシミュレータにおけるHVDC変換所のスクリーンショット(デブロック状態=変換器運転中)
よりスマートで柔軟な配電グリッドの実現に向け、Ente Nazionale per l'Energia Elettrica社と日立エナジーの協力によるHT(Hybrid Transformer:ハイブリッド変圧器)プロジェクトを進めている。このHTは、従来の変圧器技術を高度なパワーエレクトロニクスに統合し、再生可能エネルギーと変動する需要から提示される現代のグリッドの課題に対処するものであり、イタリアのブリンディジ近郊の250 kWパイロットサイトで2025年夏に試運転に成功した。主要機能には動的電圧調整、力率補正、位相負荷分散、高調波フィルタリングが含まれ、安定性、効率、電力品質を向上させる。既存のインフラから追加で10~30%の容量を開放し、高額なアップグレードの必要性を低減できることがフィールドテストで確認された。HTは戦略的資産として位置付けられ、OLTC(On-load Tap Changers:負荷時タップ切換器)やSTATCOMなどの従来のソリューションに代わる多機能で費用効果の高いソリューションを提供する。これにより、回復力が高く柔軟性のあるグリッドの礎として、よりクリーンで効率的な系統の実現に向けたエネルギー転換を促進する。
(日立エナジー)
[12]ハイブリッド変圧器の概念と250 kwパイロット試験の様子および制御・監視データの記録
注:略語説明 MV(Middle Voltage:中圧)、MVAC[MV Alternating Current:中圧(交流)]、LVAC[Low Voltage AC:低圧(交流)]、LAN(Local Area Network)
過酷な洋上条件下での機械的回復性と運用的信頼性に重点をおいて、FOSS(Floating Offshore Substations:浮体式洋上サブステーション)上の電力変圧器の設計と検証を行った。本プロジェクトは、持続可能性を追求するとともに、洋上での連系を可能にする革新的で信頼性の高い変圧器ソリューションを通じ、日立グループのクリーンエネルギー戦略をサポートする。
プロジェクトの一環として、高度なシミュレーションと実験的方法論を組み合わせ、疲労特性、構造的安定性、変圧器とOLTC内の異方性材料の長期的挙動を評価した。さらに、波浪に誘起される加速と高サイクル疲労を再現するため、カスタマイズされたサーボ駆動型施設を建設した。
また、液体が充填された構成要素内のスロッシング現象を含めたソリューションの構造的安定性を確認するため、FEM(Finite Element Method:有限要素法)とCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)分析を適用した。本プロジェクトは、ロバストなFOSS設計と洋上グリッド革新の最前線における日立エナジーのベンチマークを確立するものである。
(日立エナジー)
[13]過酷な環境条件下の浮体式洋上サブステーションのイメージ
世界的な電力需要が増え続ける中、電力グリッドにはより持続可能なソリューションが求められている。こうした中、765 kV系統送電システムのソリューションは、400 kV系統と比較して、3倍以上の電力伝送容量と50%以上の電力損失低減を実現できる、非常に効率的で持続可能性が高いソリューションである。
電力グリッドの中核を担う電力変圧器には、従来、絶縁・冷却の媒体として優れた特性で知られる鉱物油が用いられてきた。しかし近年では変圧器技術の革新によって、防火性を備えたより安全で環境負荷の低い天然エステルなどの代替油の活用が増えつつある。エステル油入変圧器は、最大400 kVクラスまでの送電網で10年以上の運用実績がある。
本プロジェクトを通じて、250 MVA・765/400/33 kV、KNAN/KDAF方式を採用した、世界最大級となる天然エステル油入の単相単巻変圧器が開発された。BIL(Basic Impulse-insulation Level:基準衝撃絶縁強度) 2,100 kVを実現した髙い絶縁性能と熱設計は、先進的な計算・シミュレーションを活用して開発されたものであり、厳格な試験によって検証された日立エナジーのノウハウを適用している。(日立エナジー)
[14]765 kVエステル充填変圧器の外観
電力グリッドがこれまで以上にダイナミックに変化し、発電場所と需要地が分散化するにつれてグリッドがますます動的になる中、OLTCが担う役割も大きく広がっている。予測しにくい電圧変動に対処しつつ、省スペースで高性能なOLTC付きの小型変圧器がこれまで以上に求められている。
日立エナジーのT-Sync OLTCシリーズに登場した「VUBB compact」は、この新たなニーズに応える次世代タップ切換器である。広く採用されてきたVUBBプラットフォームの高信頼で堅牢性はそのままに、より小型かつスマートで限られたスペースに最適化された設計を実現した。スペースや仕様に制限がある中でも、性能はしっかり確保したい変圧器OEM(Original Equipment Manufactures)やユーザーに最適なソリューションとなる。また、少ない材料で効率を向上し、CO2排出量を低減した持続可能な設計により、持続可能性に関する変圧器OEMと電力グリッド運用者の双方の目標達成を支援する。VUBBコンパクトの設計は、ライフサイクル運用の長期化と環境負荷の最小化に向けて最適化されたデザインである。
(日立エナジー)
[15]タップ切換器タイプVUBBモデルの外観
超高電圧機器の絶縁物として、過去数十年にわたってSF6が広く使用されてきた。こうした中、類似性能を満たす代替ガスでSF6を置き換えるためのイニシアチブが確立されてきた。代替ガスを用いることで、SF6技術と同じ原理、労働安全衛生基準、ガス取り扱い手順に基づいて最新の超高電圧機器を構築できる。超高電圧機器の中で重要な役割を果たすブッシングにもSF6フリー、代替ガス製品が望まれている。最も一般的な変圧器ブッシングはRIP(Resin Impregnated Paper:樹脂含侵紙)であり、頑丈な構造で機械的堅牢性に優れている。一方で、代替ガスの適用には正しい適合性材料を選択することが重要である。
ネットゼロカーボンの要求が増大し、HVDCの需要が拡大する中、代替ガスは最新のHVDCブッシングとGISに使用されるSF6の置き換えに大きく貢献する可能性を秘めている。そのため、SF6フリーのGISガスブッシングGARIP Ecoは、材料の劣化の可能性を考慮した徹底的な品質評価プロセスを経て、最適な適合性を実現している。本ソリューション自体も、ガスの性能や周りの材料に悪影響を与えないとして適格性が認められている。
(日立エナジー)
[16]GISガスブッシングGARIP Ecoの外観
日立製作所は2025年11月、東日本旅客鉄道株式会社の給電用変電所に対し、SV(Sampled Value)を含むプロセスバスを適用したフルデジタル変電所システム(IEC 61850準拠)を納入した。本システムは、監視制御・保護リレー機能を集約可能としたCPC(Centralized Protection and Control)を適用したことで、変電機器近傍に設置したMU(Merging Unit)とともにユニット数を最適化することにより、ユニット2重系を実現した。また、伝送路はPRP(Parallel Redundancy Protocol)を適用した2重系の構成とし、システム全体の信頼度を向上させた。本システムの適用により、屋内制御盤室の省スペース化や、メタルケーブル削減による工期短縮、安全面向上を実現するだけでなく、運用保守の高度化・次期更新時の作業量省力化の面でもメリットが得られるため、変電所設備のサステナビリティに寄与できる。
今後は本実績をベースとし、電力会社・鉄道会社へのデジタル変電所導入を拡大していく。
[17]フルデジタル変電所システムの概要
国内の保護制御システムでは、IEC61850に準拠したデジタル変電所システムのニーズが高まっている。日立でも積極的に開発を行い、2025年には変電所一括でフルデジタル化した保護制御システムを国内で初めて納入するなど、先進機能を搭載したフルデジタル対応のIED(Intelligent Electronic Device)を製品化してきた。
国内保護制御システムでは電気角3.75°サンプリングを採用しており、国際規格(IEC 61869-9)では電気角4.5°サンプリングが推奨されている。今回、この異なるサンプリング周期を解決するリサンプリング技術をIEDに実装し、海外製MUと信頼性のある既存の国内保護リレーアルゴリズムを組み合わせた、新しい保護制御システムを開発した。
日立エナジー製MUと実際に組み合わせ評価を行い、リレー演算誤差および動作時間などの性能を十分に満足することを確認できたため、システムのマルチベンダー化に柔軟に対応可能となる。
今後、日立エナジーとのシナジー効果を発揮させて、実績を生かしたデジタル変電所の受注拡大を図っていく。
[18]日立製IED[WTD-STD-C(左)]と日立エナジー製MU[SAM600 Version3.0(右)]の外観
保護リレーに適用されている通信技術は、保護リレー専用の伝送フォーマットを用い、かつ電力専用の通信網を利用することで、安定した高信頼な保護リレーシステムを構築している。しかしながら、送電線の多端子化が進展する中、従来の保護リレーでは対応が困難になっている。
今回、マイクロ波無線通信適用が前提となる標準通信規格IEEE C37.94を適用した、代表端判定方式による多端子電流差動保護リレー装置を開発製品化した。これにより、送電線の最大端子数を従来の4端子から最大8端子まで拡大し、多端子化した送電線への適用を可能とした。本通信方式を採用することで、システム全体の低コスト化が可能となり、自然災害時の安定性を向上し、電力系統の事故の影響を軽減するなど、信頼性の向上にも寄与している。開発評価としては、電力用規格(B-402)に準拠した試験を実施し、すべての検証項目で良好な結果が得られた。
(初回装置納入:2025年4月)
[19]多端子電流差動保護リレー装置の外観