ページの本文へ

Hitachi Global

エナジー

原子力

2026年2月24日

エネルギー


1. 小型革新軽水炉BWRX-300初号機建設および日立GEベルノバからの機器供給

カーボンニュートラル社会の実現に向け、重要なクリーンエネルギーとして原子力発電が再評価されつつある。一方、自由化された電力市場では発電コストとともに、建設費の抑制による投資リスクの低減も求められており、小型炉が世界的に注目されている。日立GEベルノバニュークリアエナジー株式会社は、米国のGE Vernova Hitachi Nuclear Energy(GVH)社と共同で、電気出力300 MWの小型革新軽水炉BWRX-300の実用化を進めてきた。

BWRX-300の高い安全性・経済性と実現性が評価され、2025年4月、カナダ原子力安全委員会(規制当局)からBWRX-300の建設が認可された。その後5月には、カナダ・オンタリオ州のOntario Power Generation社が、2030年の運転開始をめざしてBWRX-300の建設を決定した。これは、主要7か国で初のSMR(Small Modular Reactor)の実炉建設決定となる。

BWRX-300の建設を進めるうえで、プラントの性能や安全性に直結する機器は、高い製作精度が求められる。高い技術力とこれまでの実績の評価に基づき、主要機器である炉内構造物、改良型制御棒駆動機構、制御棒駆動水圧ユニットは日立GEベルノバニュークリアエナジーが日本で製作し、カナダに納入することが決定した。日立GEベルノバニュークリアエナジーは、今後もGVH社のパートナーとして、BWRX-300初号機の成功と、さらなる市場開拓に協力していく。

(日立GEベルノバニュークリアエナジー株式会社)

[図1]小型革新軽水炉 BWRX-300 の概要 [1]小型革新軽水炉 BWRX-300 の概要

2. 中国電力島根原子力発電所2号機再稼働の達成

中国地方の原子力発電所である中国電力株式会社の島根原子力発電所2号機(沸騰水型原子力発電所)において、約13年ぶりとなる営業運転が2025年1月に再開された。

再稼働にあたっては、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、環境への放射性物質の放出量低減を目的とした世界初の別置型ヨウ素フィルタ容器を有するフィルタ付きベント設備、耐熱・耐放射線性に優れた改良エチレンプロピレンゴムを使用した原子炉格納容器改良シール材、および、溶融デブリによる浸食抑制を図った原子炉格納容器下部耐火材など、新規制基準を満足する高度な安全対策設備の設計、製作および工事を日立GEベルノバニュークリアエナジーの主導により完遂した。

また不測の事態に備え、プラント起動時の挙動把握シミュレータや技術支援体制を整えてプラント起動に臨んだが、大きなトラブルもなく、予定どおりの再稼働を達成した。

今後、沸騰水型原子力発電所の再稼働が続く予定であり、日立GEベルノバニュークリアエナジーは高度な安全対策設備の設計、製作および工事を主導し、電力の安定供給やCO2削減に貢献していく。

[図2]島根原子力発電所2号機におけるフィルタ付きベント設備ほか安全対策設備の概要図 [2]島根原子力発電所2号機におけるフィルタ付きベント設備ほか安全対策設備の概要図

3. 建設・保全の作業効率化を実現する原子力メタバースプラットフォーム

原子力発電所の建設・保全における作業効率化を目的に、「原子力メタバースプラットフォーム」を開発した。高精度点群データと、機器の属性情報付き3D-CAD(Three-dimensional Computer Aided Design)を重畳したデジタルツインにより、仮想空間上で発電所を再現し、設計から施工、資産管理まで一貫して支援する。これにより、現場立ち入り制約下でも干渉物や搬入経路の確認が可能となり、電力事業者をはじめとしたステークホルダー間の情報共有の円滑化を図ることができる。さらに、全文AI(Artificial Intelligence)検索による膨大な設計文書の高速抽出や複数ユーザー同時アクセス機能により、意思決定の迅速化を実現した。

現在、社内実証を通じて安全対策工事や保全業務への適用性を確認中である。今後は、発電所の多様なデータを統合し、投資計画や保全を最適化する「データドリブン発電所」の構築をめざす。これにより、ライフサイクル全体でコスト低減と信頼性向上を両立できる。メタバースとAIの融合は、原子力産業のデジタル変革を加速し、発電所の安全で効率的な運営に貢献するものである。

[図3]原子力メタバースプラットフォームの使用イメージ [3]原子力メタバースプラットフォームの使用イメージ

4. 安全性・効率性に着目した現場施工フロントラインワーカー支援技術

建設業界においては、熟練者が長年培った経験や技量に依存する特殊作業が多く存在している。こうした中、熟練者の減少に伴って、現場作業における各種改善の必要性が一層高まっている。これに対し、安全性と効率性の改善を目的として、発電プラント設備の定期検査における大型弁(質量280 t)点検作業を対象とした新工法を導入した。

これまで大型弁の点検は弁体の姿勢変更を熟練作業者のクレーン操作による高難度な吊搬作業で対応してきた(従来工法)。対して新工法では、あらかじめ回転軸を取り付けた弁体を専用の回転架台に上架後、クレーンの巻き上げ操作のみで、弁体の姿勢を安全にかつ短時間で変更できる。スライド式ステージは吊具の着脱や弁体の点検などの高所作業用足場として機能し、作業状況に応じてステージの設置・収納ができる。これにより、現場に従事するフロントラインワーカーの作業時間短縮や安全性向上、スキルレス、足場レス、吊具や道工具の軽量化などに大きく貢献した。

[図4]大型弁点検工法の概要 [4]大型弁点検工法の概要

5. 過酷環境下での遠隔解体・施工支援技術

福島第一原子力発電所の廃炉作業など、高線量領域の過酷環境下では、被ばく線量低減のために重機やロボットを用いた遠隔操作が必須となる。株式会社日立プラントコンストラクションでは、危険エリアでの解体作業などを安全かつ効率的に進めるための遠隔解体・施工支援技術を開発している。

現場で使用する重機の遠隔操作を支援するため、重機挙動を仮想空間でリアルタイムに再現し、さまざまな視点で重機状態を見ながら機体の位置やブームの角度を遠隔制御する。遠隔操縦可能に改造した重機(日立建機株式会社製、ZX225)の先端に取り付けたカッター(オカダアイヨン株式会社製、カットクン)で解体対象物を切断する場合、重機アームおよびブーム挙動は傾斜センサー、重機上部旋回体の旋回角度はロータリエンコーダで計測し、さらに現場空間における遠隔重機の自己位置は3D LiDAR(Light Detection and Ranging:レーザー光による距離計測センサー)にて検出して、ローカルネットワークを介して3Dビューワ上にその挙動をリアルタイムに再現する。本技術によりカメラ映像のみでは確認できない空間的な遠隔重機の挙動や、解体対象物とカッターとの距離を任意の視点方向から多角的に把握でき、より安全かつ効率的に遠隔重機を操作できることが確認できた。

今後予定されている瓦礫撤去工事や廃止措置プラントにおいても本技術の適用展開を図り、社会課題解決に寄与していく。

[図5]遠隔解体技術モックアップ検証状況 [5]遠隔解体技術モックアップ検証状況

シェアする: