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モビリティ

鉄道システム

2026年2月24日

モビリティ


1. ベトナム ホーチミン地下鉄1号線建設プロジェクト

日立は、ホーチミン都市鉄道1号線のEPC(Engineering, Procurement and Construction)契約者として、全11のサブシステムを納入した。本路線は南部ベトナム初の電化鉄道であり、地下区間を有する鉄道としてもベトナム初となる。市中心部ベンタインと北東部スオイティエンを結ぶ総延長19.7 kmのプロジェクトで建設し、2024年12月22日に開業した。

本プロジェクトは、鉄道車両・信号・通信・変電設備に加え、新たな鉄道関連システムを海外で導入した案件である。国内では鉄道事業者が担う土木分野・電力会社との調整、耐荷重検討、保護協調設計、走行・電力シミュレーション、路線データ作成など広範囲な技術に対応し、現地試験や運転オペレーションも実施したほか、設備納入以外の業務も担った。プロジェクト履行段階では2015年に日立が買収したAnsaldo STS S.p.A社との協業で指令所設計を行い、技術融合も推進した。

さらに、日本の都市鉄道標準STRASYA(STandard urban RAilway SYstem for Asia)に準拠しており、交通渋滞と大気汚染が課題のアジア諸国における日本の鉄道インフラ構築と鉄道技術の輸出にも貢献した。

[図1]ホーチミン1号線電車の外観と納入システム一覧  [1]ホーチミン1号線電車の外観と納入システム一覧 

注:
※)本プロジェクトで納入した新たな鉄道関連システム。


2. 東京メトロ丸ノ内線 CBTCシステムの導入

東京地下鉄株式会社(以下、「東京メトロ」と記す。)は、丸ノ内線の信号保安設備更新のためCBTC(Communications-based Train Control:無線式列車制御)システムを導入し、2024年12月に使用を開始した。日立はATP(Automatic Train Protection)地上装置の新規導入、および運行管理装置の装置更新を担当し、プロジェクトに貢献した。

CBTCシステムは、地上装置と車上装置の間で無線の双方向通信を用いて、各列車が検知した列車位置情報を地上装置に送信する。地上装置は路線内の全列車位置を把握することにより各列車が走行可能な位置を演算し、各列車の車上装置に送信する。列車位置の認識精度は従来の軌道回路単位(最短50 m程度)から0.1 m単位に向上し、運行管理システムの進路制御機能の向上を図ったことで、先行列車の進行に応じて後続列車が逐次追従運転する移動閉塞に対応した。また、保安を確保した逆方向運転を可能とし、列車運行の自由度を向上した信号システムを実現した。

丸ノ内線ではCBTCシステム導入効果として遅延回復力の向上を確認している。今後、東京メトロの他線区にも同様のCBTCシステムを展開していき、鉄道のさらなる安全・安定輸送に貢献していく。

[図2]丸ノ内線ATP地上装置の外観 [2]丸ノ内線ATP地上装置の外観

3. 鉄道運行管理システムにAIエージェントを活用する共同検証を開始

首都圏の在来線の運行を管理するATOS(Autonomous Decentralized Transport Operation Control System:東京圏輸送管理システム)は、多くの機器が複雑に組み合わさった大規模なシステムで構築されている。システムトラブル発生時に解析によって原因を特定し、迅速な復旧作業を行う指令員には非常に高度な専門知識やノウハウが求められる。今後ますます深刻化する働き手不足やスキル継承に関する課題に対応するために、東日本旅客鉄道株式会社(以下、「JR東日本」と記す。)と日立はAI(Artificial Intelligence)エージェントを活用した指令員の判断支援に関する共同検証を開始した。両社の知識資産を基に構築した鉄道運行管理に特化した大規模言語モデルと、熟練者の思考プロセスを再現した故障対応シナリオに基づくAIエージェントを組み合わせ、指令員に対して故障個所の特定や対応方針を提案する。

今後は検証によって得られた結果を基にAIエージェントの精度向上をはかり、設備故障対応に要する時間の短縮や工数削減につなげることにより、運行停止リスクの少ない持続可能な鉄道運行の実現をめざす。

[図3]共同検証の概要図 [3]共同検証の概要図

4. 東日本旅客鉄道 E8系新幹線電車

JR東日本では、輸送品質の向上を目的として、最高速度300 km/hで新幹線区間を走行し、山形新幹線への直通運転が可能なE8系新幹線電車を開発した。

E8系は、安定した品質確保とメンテナンスコスト低減を図るため、E6系新幹線電車の構成を基本とし、部品共通化を推進している。日立は車体をはじめ、各種電気品の設計・製作を担当した。

車体先頭形状はロングノーズ形状を踏襲し、最高速度300 km/hと定員確保を両立するため、ノーズ長を9 mとした。客室には大型荷物置場や全席コンセントを備え、グリーン車・普通車ともに車いすスペースを拡充するなど、多様な利用者に配慮した設計である。台車はボルスタレス方式を採用し、E6系同様に動揺防止制御装置を全車両に搭載して、乗り心地向上を図っている。主変換装置は、E5系~E7系で採用された主回路方式を踏襲し、高効率な電力変換を実現している。

2024年3月から営業運転を開始し、現在、全15編成が山形新幹線「つばさ」として運用されている。

[図4]E8系新幹線電車の外観 [4]E8系新幹線電車の外観

5. 東武鉄道80000系 車両情報システムSynaptra

鉄道スマート化をけん引する次世代車両として、東武鉄道株式会社はアーバンパークライン向け80000系を開発し、2025年3月より営業運転を開始した。本車両は「安全・快適・環境調和」をコンセプトに、都市間輸送の質の向上をめざしている。

この車両には、日立製の車両情報制御システム「Synaptra」を搭載しており、リアルタイム監視と保守効率化を実現した。さらに、日立のオンラインモニタリング機能と東武鉄道の遠隔監視システム「Remote」をクラウド経由で連携し、走行中のデータ共有を可能にしている。これにより、故障予兆検知や運用計画への迅速な反映が可能となり、安全性・信頼性が飛躍的に向上した。

加えて、蓄積したデータに基づく分析により、将来的にはAIによる予測保守やサービス改善にも対応可能である。これらの取り組みは、鉄道スマート化を加速するモデルケースとして、鉄道業界に新たな価値を提供している。

[図5]80000系の外観(上)と全編成の車両状態の一覧を示すリアルタイムモニタ画面の例(下) [5]80000系の外観(上)と全編成の車両状態の一覧を示すリアルタイムモニタ画面の例(下)

写真提供:東武鉄道株式会社


6. HMAXを活用した車両メンテナンス高度化における東武鉄道との協業

東武鉄道と日立製作所は、鉄道事業の持続性確保に向け、車両メンテナンスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、HMAX by Hitachiにおけるデジタルアセットマネジメントプラットフォームを活用した協創を開始した。日本の鉄道事業者によるHMAXの本格活用は初めての取り組みである。

本プロジェクトでは、車両検査の自動化、人の作業の最適化、現場力の向上を軸に、AIやデータ分析を活用し業務効率化と現場改革を進める。これにより、東武鉄道従業員のスキル向上とエンゲージメント強化を図り、魅力的な職場環境を創出することをめざす。さらに、日立はこの協創を契機として、日本の鉄道業界が直面する労働人口の減少、利用者ニーズの多様化、インフラ老朽化といった社会課題の解決に取り組む。

具体的な取り組みの一例として、鉄道車両の台車および軌道(線路)の異常を検知する台車振動センサーを用いた設備の監視、鉄道オペレーション・メンテナンス情報を一元表示し業務効率化に寄与する統合ダッシュボードの開発を進め、持続可能な鉄道運行に向けた取り組みを加速する。

[図6]東武鉄道と日立がめざす未来の姿 [6]東武鉄道と日立がめざす未来の姿

7. 安全・円滑な移動を実現する万博交通情報システム

日立は公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と共同で、万博交通情報システム・交通インフォメーション(WEB)を開発し、EXPO 2025大阪・関西万博の開催に併せて運用を行った。

夢洲の万博会場へは鉄道やバスなどの複数の移動手段が提供されており、また会場内の人流も、天候やイベントなどさまざまな要因で時々刻々と変化する。こうした状況下で安全な輸送を実現するためには、交通情報の正確な把握と輸送需要の予測が不可欠であった。

そこで本システムは、利用者に対して万博会場への来場や退場に関する交通手段・運行状況などを一元的に提供し、来場から帰宅までの快適な移動の支援を行った。

また、万博会場周辺の鉄道・バスの運行情報や、渋滞状況、会場内の人流を集約・分析し、近い将来の輸送需要をモニタリングすることで、万博協会・交通事業者は、混雑予測の事前周知や代替交通手段の案内、誘導員の増員などの施策をタイムリーに実施することができた。

[図7]万博交通情報システム・交通インフォメーション(WEB)の概要 [7]万博交通情報システム・交通インフォメーション(WEB)の概要

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