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Hitachi Global

コネクティブインダストリーズ

産業・流通ソリューション/ロボティクスSI

2026年2月24日

製造, ロボティクス


1. 直感的操作を実現する無線操作端末の開発

近年、製造業において設備の操作性や視認性、安全性向上のために、操作性と信頼性の高い無線操作端末が求められている。従来の設備の操作盤は、ボタンやレバーなどの物理的なスイッチにより直感的な操作が可能である一方、設置工事に伴う多大なコストと操作盤が固定されていることによる視認性の低下が課題であった。

この課題を解決するため、ゲームコントローラを搭載したタブレットPCにHMI(Human Machine Interface)機能を統合し、作業者が現場の状況を直接確認しながら、直感的で微細な操作を安全かつ確実に実現する無線操作端末を開発した。主な特長は以下のとおりである。 

(1)ゲームコントローラとタッチ操作を組み合わせた直感的な操作性
(2)Local 5G(Fifth Generation)とWi-Fiを併用した高信頼な通信の実現
(3)誤操作防止機能および通信障害時の警告表示による安全性の確保

本端末は、製造現場の効率化と安全性向上に寄与し、今後さらなる普及を通じて製造業の発展に貢献していく。

(初号機稼働時期:2025年8月)

[図1]無線操作端末のシステム構成 [1]無線操作端末のシステム構成

注:略語説明 LAN(Local Area Network)、PLC(Programmable Logic Controller)


2. カスタマーゼロを通じたIoTセキュリティリスクへの対応力強化

IoT(Internet of Things)需要の成長とともにセキュリティリスクが増大し、供給元製造業でのセキュリティ対策が急務となっている。これに加え、EU(European Union)のCRA(Cyber Resilience Act)※)によりSBOM(Software Bill of Materials)作成、重大セキュリティインシデント発見時の報告などが義務付けられた。一方、開発現場ではセキュリティ知見を持つ人財が不足し、対策工数(予算)が確保できない、セキュアプロセスが人依存でノウハウ蓄積がされない、企業間やグローバルに広がるサプライチェーン全体への適用が困難といった課題が顕在化している。

そこで、日立製作所コネクティブインダストリーズセクターは、日立内外のIT領域で培ってきたドメインナレッジにOT(Operational Technology)の知見を取り込み、進化したAI(Artificial Intelligence)を融合させ、製品ライフサイクル全般でのセキュリティ関連業務の効率化・自動化に向けた強化活動を推進している。その第1ステップとして、2025年9月に脆弱性管理業務にPSIRT(Product Security Incident Response Team)運用プラットフォームの適用を開始した。

今後も製品セキュリティに関わるドメイン知識の蓄積・洗練化とAIデジタルサービスの強化・拡大に取り組み、カスタマーゼロの成果を広く社会に還元していく。

※)2024年12月発効。EU市場で販売されるデジタル製品の製造者に対し、製品のセキュリティ確保を義務づけている。

[図2]カスタマーゼロでめざすデジタルサービス強化・拡大・連携の全体像 [2]カスタマーゼロでめざすデジタルサービス強化・拡大・連携の全体像

注:略語説明 OSS(Open Source Software)、SCA(Software Composition Analysis)


3. 数理最適化を用いた運航ダイヤ修正案自動立案サービス

日立は、全日本空輸株式会社(以下、「ANA」と記す。)と共同で、悪天候や機材メンテナンスなどで乱れた国内線運航ダイヤを高速に再構築する自動立案システムを開発し、2025年7月に稼働を開始した。

本システムは運航計画、整備計画、乗務員配置、空港条件など膨大なデータを統合し、運航ダイヤの修正案を自動で複数立案する。数理最適化アルゴリズムにより運航制約や整備計画を満たしつつも、遅延や欠航の最小化を実現している。特に大きな運航の乱れの場合、従来はANAの10年以上の経験を持つ熟練社員が特別体制で調整を行っていたが、2019年よりANAおよび株式会社日立コンサルティングと共同で実証実験を重ねた結果、熟練者社員と同等の水準の修正案を出力することを可能とし、修正案検討の所要時間を最大70%短縮した。これによりいち早く乗客への情報発信が可能となり、ANAの顧客満足度の向上に貢献する。

今後はLumadaソリューションとして、ANAの国際線オペレーションや世界の航空会社に展開していく方針である。

[図3]運航ダイヤ修正案自動立案サービスのイメージ [3]運航ダイヤ修正案自動立案サービスのイメージ

4. SC情報連携基盤と入荷自動化設備によるトラックバースの長時間滞留削減

トラックバースで入荷時の長時間滞留が発生する主な原因としては、発荷主からの確定入荷数や荷姿、車両などの情報が着荷主と連携されていないことから、入荷検品作業において、欠品や分納により入荷予定が直前まで確定せず効率が低下していること、荷降ろし後のパレットの積み替え作業がドライバーによる手作業で担われているケースが多いことなどが挙げられる。

日立は、「配送情報シェアリングプラットフォーム(SISP:Shipping Information Sharing-Platform)」を通じて、企業間の情報をリアルタイムでつなぎ、長時間滞留の削減に取り組んでいる。具体的には、入荷車両と納品データがひも付いた発荷主からの事前納品通知情報を、SISPを介して着荷主へつなぎ、よりリアルタイムな情報で検品作業を実現し、単載パレットで17%、混載パレットで31%の作業時間の削減効果が確認できた。また、株式会社日立オートメーションの移動式協働ロボットを活用してパレット積み替え作業の自動化に取り組み、飲料などのケース品を中心に約9割のアイテムに対して適用可能であることを確認した。

[図4]データをシームレスにつなぐ配送情報シェアリングプラットフォームの概要 [4]データをシームレスにつなぐ配送情報シェアリングプラットフォームの概要

注:略語説明 VAN(Value-added Network)


5. AI活用を通じたサプライチェーン計画業務最適化

近年、サプライチェーンは需要変動の激化、人手不足、物流コストの上昇、法制度の変化などにより、従来の経験や勘に頼った計画では全体最適の実現が難しくなりつつある。こうした中、製氷事業を展開する株式会社ニチレイ・アイスは、気候変動の影響を受ける需要の大きな振れ幅に対応しつつ、物流費を低減できる高精度な計画を実現するため、日立の計画系業務最適化サービスを導入した。

本サービスは、人手では考慮しきれない複雑な制約条件を数理最適化技術で処理し、生産・輸送・在庫を一体で計画するものである。現場に即した細やかな物流制約を加味した輸送量やタイミングを生産制約と連動させることで、トラック積載率を最大化し、輸送台数やコストを削減する。加えて、在庫基準違反や欠品リスクを最小化し、需給変動に即応する柔軟な計画立案を可能にした。こうした取り組みにより、人手では困難な全体最適の効果に加え、属人性の排除や計画立案時間の約70%削減など、多面的な改善を実現した。

この仕組みは、計画立案のみならず戦略シミュレーションにも活用可能である。2026年施行の改正物流効率化法(物流改正法)で求められる全社的な計画・KPI(Key Performance Indicator)管理に対応し、CLO(Chief Logistics Officer)が担う経営視点での物流戦略強化や、変化に強いサプライチェーンの構築に直結する有力な手段として、企業競争力の強化と社会課題の解決に貢献する。

[図5]需要を起点に生産・輸送・在庫計画を一体で立案するサプライチェーン計画業務最適化の概要 [5]需要を起点に生産・輸送・在庫計画を一体で立案するサプライチェーン計画業務最適化の概要

6. 設備故障診断AI Agentサービス

現在、製造現場ではグローバル展開や少子高齢化に伴い、熟練保全員の不足が課題となっている。これに対し、センサーや作業記録などのOTデータを活用した、迅速かつ高精度な保全支援が求められる。

こうした中、生成AIを活用した保全支援として、保全員が障害状況を入力するとAIが過去事例を基に故障原因を推論・回答する、「現場と対話するAI」の実用化が進んでいる。従来の事例検索型AIでは新規・類似故障への対応が困難であったが、STAMP(System-Theoretic Accident Model and Processes)/CAST(Causal Analysis Using System Theory)によるシステム安全分析を組み込むことで、設計情報のAI可読化と熟練者の思考プロセスを再現し、故障原因の特定精度を向上した。ダイキン工業株式会社との実証実験では、事例検索型AI比で正答率が23%向上し、複雑な故障にも高精度で対応できることが確認された。

今後、現場の定石をAIに組み込むことで、保全リードタイム短縮や作業品質の均一化、製造ロスコスト低減などが期待される。

[図6]AIエージェントサービスの特長と価値 [6]AIエージェントサービスの特長と価値

7. 複雑化するオートメーションを整流化するLogiRiSM

EC(Electronic Commerce:電子商取引)は今や生活に欠かせない仕組みとなり、物流センターでは膨大な商品を正確かつ迅速に発送することが求められている。物流センターでは自動化のためのマテハン設備の導入が不可欠であるが、機器を導入するだけでは十分な効果は得られず、機器同士の連携と作業全体の整流化が重要である。

日立は、作業進捗をリアルタイムで把握し、最適な指示を出すソフトウェア「LogiRiSM」を開発した。LogiRiSMは物流現場の頭脳として、株式会社日立インダストリアルプロダクツ製のユニバーサルWCS(Warehouse Control System)と連携し、異なるマテハン機器を統合制御しながら最適な運用を実現する。ピッキング工程では、商品を作業者に届けるGTP(Goos to Person)方式に加え、出荷オーダーを作業者に届けるOTP(Order to Person)方式を組み合わせ、待ち時間をなくし、ロスのない作業を可能にする。本ソフトウェアを通じて、出荷スピードを高め、ECの成長を支える持続可能な物流体制を構築する。

[図7]LogiRiSMを用いた物流センターの運用イメージ [7]LogiRiSMを用いた物流センターの運用イメージ

注:略語説明 AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)


8. LIFT のオーケストレーション機能による構内物流効率化

製造業における構内物流では、人員不足や生産変動への迅速な対応を背景に、AGVやAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)を活用した自動化が急速に進展している。しかし、複数メーカーの機器や既存システムとの連携は高度に複雑化し、導入に要する期間・費用の増大、ならびに運用の複雑性が顕在化している。

この課題に対し、LIFT(Logistics Integration Framework Technology)は、システム非依存型の構内物流プラットフォームとして、工場内の多様なシステムをリアルタイムのマテリアルフロー制御により統合し、「見えない接着剤」としてオーケストレーションを実現する。特筆するべきは、複数のOEM(Original Equipment Manufacturer)のAGV/AMRを同時に制御し、搬送経路の競合やデッドロックを回避する高度な機能により競合製品との差別化を実現した点である。

さらに、標準化されたインタフェースと柔軟なアーキテクチャを採用することで、システム導入期間の大幅な短縮と運用・保守の簡素化を可能とする。これにより、製造現場における複雑性を克服し、効率性と柔軟性を兼ね備えた「次世代ファクトリー」への進化を実現する。

(Flexware Innovation, LLC)

[図8]LIFTによる構内物流オーケストレーション [8]LIFTによる構内物流オーケストレーション

注:略語説明 ERP(Enterprise Resource Planning)、WMS(Warehouse Management System)、MES(Manufacturing Execution System)、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)、API(Application Programming Interface)


9. 革新的屋内型飼料生産システム

畜産業は、飼料生産に膨大な水資源と広大な土地を必要とし、気候変動や環境負荷の増大が深刻な課題となっている。また従来の飼料供給は天候や地域条件に左右されやすく、安定性と持続可能性の確保が困難だった。こうした背景から、効率的かつ環境に優しい飼料生産の仕組みが求められてきた。

この課題を解決するため、JR AutomationはForever Feed Technologies社と共同で、屋内型の革新的飼料生産システムを開発した。この自動化システムは、発芽穀物を最大50 t/日生産し、水使用量を95%削減、約2.8 km2分の飼料畑を代替する。さらに、JR Automationの高度なロボティクスと制御技術により、工程の自動化と最適化を実現し、持続可能性と効率性を両立した。

この取り組みにより、本システムは畜産業の生産性向上と環境負荷低減を同時に達成し、気候変動や土地利用の制約を受けない安定した飼料供給を実現する。

(JR Automation)

[図9]屋内型の革新的飼料生産システムによる発芽穀物の自動生産 [9]屋内型の革新的飼料生産システムによる発芽穀物の自動生産

10. ソフトウェアデファインド製品開発ソリューション

近年の自動車開発では、技術革新に伴うシステムの大規模化・複雑化による開発工数増大の課題に加え、ユーザー価値の変化やユーザーニーズの多様化に対応したタイムリーな製品開発が課題である。

この二つの課題を解決する手法として、ソフトウェアデファインドに注目が高まっている。ソフトウェアデファインドは、ハードウェアとソフトウェアを分離し、ソフトウェア中心に設計することで、ハードウェア依存性を低減し、ソフトウェアの共通化と開発効率の向上を実現するとともに、OTA(Over the Air)※1)による継続的なソフトウェア更新を可能にする手法である。ソフトウェアデファインド化の流れは自動車業界まで広がりを見せており、さらに産業機械や建設機械などの分野への展開が期待されている。しかしながら、効率的で高品質なエッジデバイス開発には、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見が必要となる。

株式会社日立産業制御ソリューションズは、ソフトウェアデファインド製品開発ソリューションとして、企画・構想から運用・ソフトウェア更新に至るまで、開発の各ステップに対応したソリューションを上流から一貫して提供している。豊富なエッジデバイス開発の「実績」、前身組織から50年にわたる組み込み開発で蓄積した「技術」、業界団体・半導体メーカー・OS(Operating System)ベンダーとの「パートナリング」、800人以上※2)の専門家を擁する「人財」の四つの強みを生かし、実際のソフトウェアデファインド製品開発において、高付加価値エンジニアリングを提供する。

(株式会社日立産業制御ソリューションズ)

※1)ソフトウェアの更新を無線で行う仕組み。
※2)2025年10月時点。

[図10]エッジ技術の強みを生かしたソフトウェアデファインド製品開発ソリューションの概要 [10]エッジ技術の強みを生かしたソフトウェアデファインド製品開発ソリューションの概要

注:略語説明 SE/MBSE(Systems Engineering/Model-based Systems Engineering)


11. 医薬品製造DXを支えるGMPデータ統合プラットフォーム

近年、医薬品製造業は品質不正問題や度重なる薬価改定、労働人口の減少など、複雑な課題に直面している。ジェネリック医薬品やバイオ医薬品などの拡大に伴う多様なモダリティへの対応や、医薬品の安定供給が求められ、製造現場ではデータ活用による効率化と品質確保が急務となっている。こうした背景から、GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理の基準)に適合した業務の高度化が重要になっている。

「GMPデータ統合プラットフォーム」は、GMP適用領域で使用するMES、LIMS(Laboratory Information Management System)、QMS(Quality Management System)などのシステムのデータを統合し、品質保証業務の効率化や製造オペレーションの最適化を支援する。AIによる年次照査支援や統合モニタリング、KPI管理、異常検知などの機能を備え、医薬品製造領域のOTナレッジを生かした差別化を実現し、安心・安全な医薬品供給に貢献していく。

将来的には、One Hitachiで創薬・臨床から製造・流通までをサポートする医薬DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームの提供をめざす。

(サービス提供開始時期:2026年4月)
(株式会社日立産業制御ソリューションズ)

[図11]GMPデータ統合プラットフォームの概要 [11]GMPデータ統合プラットフォームの概要

注:略語説明 PLM(Product Lifecycle Management)、SCM(Supply Chain Management)、DCS(Distributed Control System)、GLP(Good Laboratory Practice)、GCP(Good Clinical Practice)、GDP(Good Distribution Practice)、GQP(Good Quality Practice)、GVP(Good Vigilance Practice)、GPSP(Good Post - Marketing Study Practice)


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