2026年2月24日
株式会社みずむすびマネジメントみやぎは、日立製作所を含む10社の出資により設立された企業であり、宮城県の「みやぎ型管理運営方式」の運営権者として、2022年4月より20年間にわたり上水・工業用水・下水の3事業(9個別事業)を運営する。
日立製作所は、各機場の既設他社製を含む監視制御システムの更新を担当する。また、統一した設計思想の下、みずむすびマネジメントみやぎ本社で9個別事業に属する全機場を一括で監視操作できる統合監視制御システムを構築中である。今般、南部山浄水場、麓山浄水場、中峰浄水場で監視制御システムの更新を完遂し、統合監視制御システムの運用を開始した。
2025年4月より、宮城県の27市町村に3浄水場で合計38万立方メートル/日の水道用水、複数の事業所に合計2万立方メートル/日の工業用水を供給している。
新システムの特長は以下のとおりである。
(1)災害時の迅速な情報収集と早期復旧、運転維持管理の安全性向上と人員配置の最適化
(2)OPC(Open Platform Communications)連携によるクラウド活用と経営・保全へのデータ展開
(3)タブレットによる監視室外での遠隔監視操作
(4)ファイアウォール、ホワイトリスト、RADIUS(Remote Authentication Dial-in User Service)認証などのセキュリティ対策導入
[1]みずむすびマネジメントみやぎ本社内の統合監視制御システム
横浜市水道局は、浄水場3か所、配水池22か所を有し、人口約377万人※)に一日平均110.3万立方メートル※)の水道水を供給している。
横浜市水道局浄水課では、浄水場や配水池、水道計測設備など多数の水道施設や設備を一元的に運転監視するため、水運用計算機設備を導入している。本設備は、各施設の運転データや水質データを監視・収集するとともに、収集したデータを浄水場や水道事務所などの21拠点へ配信している。また、日々の水需要を予測し、管路流量や配水池水位の計画値を各浄水場へ送信しており、効率的な水運用を支える重要な役割を担っている。
日立は、浄水課水運用計算機設備改良工事を2021年度に受注し、約3年をかけて全面更新を行い、ハードウェア・ソフトウェアともに信頼性の高いシステムを構築した。
今後も安定稼働のための保守作業や機能改良を進め、横浜水道長期ビジョンに掲げられている「暮らしとまちの未来を支える横浜の水」の実現を支えていく。
※)2024年度時点。
[2]浄水課水運用計算機設備の概略図
千苅浄水場は、神戸市北区の主要水源である千苅貯水池の水を浄水処理し、北神地域へ供給する重要な施設である。浄水能力は一日約10.8万立方メートルであり、急速ろ過方式や活性炭処理など高度な浄水技術を導入して、安全・安心な水を供給している。
従来は複数の監視システムを個別に運用していたが、今回、中央監視システムの導入により施設の一元管理を実現した。大型ディスプレイによる全体監視や複数施設の同時監視が可能となり、運用効率と安全性が大きく向上した。また、主要機器の二重化やセキュリティ対策を施し、システムの信頼性・安定性を高めた。
さらに、遠隔監視端末の活用により現場作業の省力化や点検・故障情報の一元管理を可能とし、維持管理業務の効率化に寄与している。加えて、気象情報監視機能や場内外監視カメラの設置により、災害時の柔軟な対応や防犯性の向上も図ることができた。
こうした設備や体制の強化を通じて、千苅浄水場は、地域の安定した水供給を支える先進的な運用体制を構築している。
[3]大型ディスプレイによる全体監視の様子
日立は、これまで培った下水処理制御を活用した下水道や工場排水からの適切な栄養塩供給により、藻場を維持・拡大して豊かな海と脱炭素を両立させるブルーカーボンソリューション事業の創生に取り組んでいる。事業創生に向けて立ち上げた産官学による「ブルーカーボン促進のための栄養塩供給管理プロジェクト」の中で、さまざまな専門性を持つ組織や課題を抱えるステークホルダーとの議論を進め、多様な要求水質に柔軟に対応する下水処理制御、栄養塩の供給計画の策定から実際の運転の評価を支援するブルーカーボンCPS(Cyber Physical System)の開発を推進中である。下水処理制御は、栄養塩供給効果の検証のため大型水槽を用いた放流水添加試験を行い、栄養塩濃度が高いほど大型褐藻が生育することを確認した。
ブルーカーボンCPSは、公開データを活用して生態系シミュレータを用いた栄養塩供給の環境への影響評価を開始するとともに、公益社団法人日本下水道協会主催の下水道展’25大阪にて開発中の機能イメージを公開した。さらに、2025年5月および9月にEXPO2025 大阪・関西万博*内で行われたイベントにおいて、ブルーカーボンに関する日立の取り組みを広く紹介した。
今後も、下水処理制御を基盤として生物多様性の回復を図るとともに、持続可能な海洋環境の実現に貢献していく。
[4]ブルーカーボンソリューションの概要
産業施設の排水は製造品目の変更などにより性状が大きく変動し、それに伴い排水処理設備の性能も大きく変化する。多くの施設で使われる凝集沈殿設備においては、排水性状の変動により凝集フロックの微細化が生じ、沈殿処理水にSS(Suspended Solid:浮遊固形物)成分がリークするという課題がある。
そこで、従来の凝集沈殿にろ過機能を併せ持つ、凝集沈殿・ろ過ユニットを開発している。本ユニットは沈殿部の上部に、沈殿しない凝集フロックを捕捉するろ過部を備える。これにより、凝集フロックの微細化が生じた場合でも、沈殿処理水にリークすることはなく、処理水質を維持することが可能である。本ユニットの処理水のSS濃度は、ろ過機能により従来の凝集沈殿技術(20 mg/L未満程度)よりも低く、5 mg/L未満まで除去でき、凝集沈殿後段に砂ろ過機を設けることなく高度処理化を図ることで、排水処理設備全体をコンパクト化できる。ユニット構造のため、設置工事が容易で工期の短縮も可能である。
[5]凝集沈殿・ろ過ユニットの模式図
近年バイオ医薬品やバイオものづくりへの期待はより高まっている。しかし、社会実装に向けた技術的な課題は未だ多く、特に商用生産規模に適した培養条件の決定やスケールアップを行うプロセス開発工程の効率化のニーズは大きい。
株式会社日立プラントサービスは、2025年4月、東京都板橋区に位置する開発拠点である環境イノベーションセンタ内に培養実験施設「バイオラボ(Bラボ)」を開設した。Bラボは、微生物や動物細胞培養に適した培養槽や分析装置を複数台備えており、培養槽シミュレーション技術や最新AI(Artificial Intelligence)技術との組み合わせにより、プロセス開発工程の効率化や成功確率を高め、社会実装までの期間を大幅に短縮することをめざす。
今後は、ミッションクリティカルプロダクトである培養槽の設計や制御の高度化を継続して進めるとともに、水・環境事業統括本部をはじめとする日立製作所の各事業部門ならびにグループ会社と連携し、AIを活用したバイオの産業分野向け HMAX の具現化を進めることで、バイオものづくりの生産性向上とサステナブルな社会の実現に貢献していく※)。
※)エピストラと日立、AIを活用しファーメランタの医薬原料中間体「(S)-レチクリン」の生産において、世界最大級の収量とラボ実験回数の最大73%減を達成(2025.11)
[6]次世代培養技術の創出に向けた培養実験施設 Bラボの概要
近年、電気自動車など多様な分野で電池が使用されており、それを製造するドライ環境構築の需要増が見込まれている。現状の液体リチウム電池より高性能な全固体電池の開発も進み、より低露点な環境が望まれており、また自動車メーカなど各社が競争下にある中で、電池製造コストの低減が必須となっている。
そこで、日立プラントサービスは、さらなる低露点化を図り、省エネルギー性を付加した電池製造向けドライ環境を、環境イノベーションセンタに構築した。
試験室は、35 m2×3 mHの大きさで、室内露点を-50~-80℃に調整することができ、協創の場としても活用していく。なお、環境構築に欠かせない除湿機について、ロータの吸着湿分再生には高温(150℃)の空気が必要であるが、この温度を80℃程度まで低減しても、給気露点-80℃以下で提供できることを実証した。加熱動力を減らすことで、再生に必要なエネルギーを約50%(全体で約27%)低減できる見通しを得た。併せて、異なる環境構築に関する開発も進めており、実案件への適用に向けて活動中である。
[7]露点温度可変試験室の内観