研究開発
2026年2月24日
列車位置認識技術においては、列車同士の衝突を防止するため、高い安全性[SIL(Safety Integrity Level)4:認識位置が許容誤差を超える可能性が10万年に1回)]が求められる。列車位置認識では主として車両速度の積分と地上設備による位置補正が用いられるが、運用コスト削減の観点から専用装置や地上設備を不要とする技術が必要とされている。しかし、従来の汎用の車載センサーのみで高い安全性を確保することは困難であった。そこで、各センサーの誤差分散を正規分布に補正する多重外れ値除去フィルタリング技術と、誤差分散度合いから各センサーの位置情報を列車位置認識に反映する、重み係数を最適化するセンサーフュージョン技術を開発した。本技術は、汎用車載センサー[GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)、LiDAR(Light Detection and Ranging)、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)]を使用した列車位置認識技術として、第三者認証機関から世界で初めて※)となるSIL4認証の取得に至った。
今後は本技術を活用してオペレーションコストの削減を図るとともに、高度な列車制御技術による高安全かつ便利な鉄道システムを提供していく。
※)GNSS、LIDAR、IMUを使用した列車位置認識技術において(日立製作所調べ)。
[1]計算装置の外観
高齢化により人口動態が変化し、労働力の減少が課題となる中、生活者のQoL(Quality of Life)向上と地域の経済活動の活性化に向けては、地域内の移動や物流を支える持続可能な都市内移動/輸送システムが求められる。これに対し、日立は自律モビリティ管制システムを開発している。
本システムは走行・環境・認識データを統合し、AI(Artificial Intelligence)で最適な運行計画を自動生成して車両へ指令を送ることで、自動運転車両の効率的かつ安全な運行を可能とする。これにより少人数のオペレータでも複数車両を管理でき、人口減少下でも移動/輸送の需要に応えることができる。また、デジタルツインと遠隔監視により車両や走行路の状態を把握し、異常検知や保守最適化を実現する。さらにAIによる支援優先度付けと対応策自動生成を通じて、運用負荷も軽減する。
今後デジタルツインと現場ナレッジを融合した都市インフラ版IWIM(Integrated World Infrastructure Model)へと進化させ、次世代モビリティの基盤として社会課題の解決に貢献する。
[2]検討中のシステムアーキテクチャの概要
鉄道指令員は、安全で正確な列車運行を支える司令塔であり、運行に乱れが発生すると、時々刻々と変化する状況を迅速・正確に把握し、復旧に向けた対処・指示を行う。近年、自動運転や相互直通運転の拡大に伴い、指令員に集まる情報は増加の一途をたどっており、列車運行品質の維持・向上には指令員の負担軽減が重要となっている。
こうした中、日立はAIの活用により指令員の状況把握を支援するROA(Rail Operation Assistant)を開発している。ROAは指令員・現場作業員の会話情報やカメラの映像情報といった多様な情報を、鉄道業務にひも付ける形でナレッジグラフとして統合し、運行管理システムの高信頼なログ情報を用いて補正することで、指令業務に求められる正確な情報提供を実現する。またAIチャットボットによる情報提供に加え、運行状況の認識に基づき必要な情報を先回りして提供する機能も備える。
今後は技術開発を進めるとともに、運行乱れ対応以外の指令業務や、現場作業員や旅客などの支援にも適用範囲を拡大し、列車運行の総合的な支援をめざす。
[3]Rail Operation Assistant の概要
労働人口減少を背景にエアモビリティによる点検や物流サービスが導入されつつある。しかし、運行に人的リソースや時間を要することが、利用拡大に向けた課題となっている。
日立は、デジタル技術によりエアモビリティの仮想の道を構築することで安全で効率的な運用を実現する「Digital Road」を開発した。Digital Roadは時空間情報を管理し、運行リスクを推定する四次元情報基盤と、環境・リスクに基づき生成する運行プロファイルで運行プロセスを自動化するデジタルガイダンスで構成される。前者は気象、電波、飛行体などの刻々と変化する環境情報を統合し、環境変化の影響分析から運行リスクを推定する。後者は運行前にリスクを考慮した計画と運行中の監視・調整を運行プロファイルとして生成し、モビリティの仮想の道として提供する。本技術をエアモビリティなどの次世代モビリティに適用し、空間をシームレスに使う新サービスの社会実装を通じて、豊かな未来社会の実現に貢献する。
[4]Digital Roadの構成概略図
日立は、鉄道車両のメンテナンス基地入口付近に設置された固定カメラの映像を分析して車両外観上の欠陥を検知する、AIを利用したコンピュータビジョン検査システムを開発した。本システムの特長は、検査回数を増やして欠陥を早期に発見し、データ収集を改善することで、車両の稼働状態の改善とメンテナンスの効率化を実現する点にある。
本システムは、複雑な調整を行うことなく複数のカメラ位置に柔軟に対応可能なため、標準的な監視カメラの使用によって設備投資を最小限に抑えることができる。また、既知の特定の欠陥を検知するDL(Deep Learning)を用いた従来のアプローチを生成AIによって強化し、正常時の画像との比較に基づき、より一般的な異常を検知できる。また、潜在的な問題を検出し、保守担当者と対話することで、根本原因の特定や修理計画の策定をサポートする。
[5]コンピュータビジョン検査システムの概要
注:本図は説明用の概念図であり、生成AIを用いて作成した。