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Hitachi Global

研究開発

コネクティブインダストリーズ

2026年2月24日

研究開発, 製造


1. エレベーター乗りかご内自動点検ロボットシステムの開発

中国における高層ビルの増加に伴い、エレベーター保全作業の労力やコストの増大が深刻な課題となっている。特にハイエンドビル市場では、エレベーターの乗り心地や不具合を気に掛ける顧客が増えており、法定点検の周期を上回る高頻度の点検ニーズが顕在化しつつある。これに対し、日立はエレベーター自動施工ロボットの開発で蓄積した技術を基盤として、乗りかご内の点検作業を自動化するロボットシステムを開発した。

本システムは、狭隘なかご内環境においても自由に移動できるよう、全方向移動機構とLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いた自己位置推定機能を備える。6自由度のロボットアームには、微細な異常を検出可能な産業用高精度カメラ、深度情報を取得できるRGBD(Red, Green, Blue and Depth)カメラ、そして操作ボタンを押下するためのエンドエフェクタが搭載されており、1 mm以下の計測精度が要求される点検項目にも対応する。特筆するべき点は、RGBDカメラで取得した対象物の相対距離と姿勢情報を基に、アームの位置を自律的に補正する点である。これにより、カメラの正対性と撮影距離を安定して確保し、高精度な画像認識を実現している。

ハードウェア構成においては、中国のロボット・サプライチェーンに流通する汎用性の高いコンポーネントを積極的に採用し、開発リソースを認識・制御ソフトウェアの高度化に集中させた。これにより、開発期間の短縮と、将来的なメンテナビリティの向上を実現した。

本ロボットは、多様な設置環境への適応性を高めるために並行して開発した4脚式点検ロボットとともに、中国国内の展示会にて「自動点検ソリューション」として展示し、高い関心を集めた。今後は、実際の顧客ビルにおける実証試験を通じて運用実績を積み重ね、社会実装を加速していく予定である。

[図1]エレベーター乗りかご内自動点検ロボットシステム [1]エレベーター乗りかご内自動点検ロボットシステム

2. 半導体デバイスの生産効率改善に寄与する高感度欠陥検査技術

AI(Artificial Intelligence)の急速な発展と実用化を支えるため、半導体デバイスのさらなる高集積化が進み、その製造プロセスは複雑・高精度化している。性能不良に直結する加工不良を検出するための高感度検査のニーズが高まっており、検出対象の欠陥サイズは数ナノメートルオーダーとなっている。

こうしたニーズに応えるため、走査型電子顕微鏡画像を用いた、微小欠陥の検出技術を開発した。具体的には、検査対象画像を良品画像に再構成し、再構成前後の画像を比較することで数画素サイズの欠陥を高精度に検出する。欠陥ではない対象形状の製造ゆらぎの誤検出を低減するため、デバイス回路のレイアウトを自動的に認識して欠陥検出感度を調整する技術や、誤検出を弁別する技術を開発した。先端デバイスを用いた評価において、誤検出を90%以上抑制し、10 nm以下の微小欠陥検出における実用性を確保した。開発技術をマルチビーム式の走査型電子顕微鏡に搭載し、高速・高感度検査を実現する。

また、従来の半導体デバイス製造向けの寸法計測に加え、本技術や電気・材料特性計測技術によりセンシング情報を拡大することで製造プロセスのデジタルツインを確立し、生産効率改善により深く寄与することをめざす。

[図2]再構成良品画像との比較検査による欠陥検出 [2]再構成良品画像との比較検査による欠陥検出

3. 現場のデータ処理を加速するエッジ向けAI半導体

Lumada 3.0の現場適用を強化するエッジAI技術として、低電力かつ高性能のAI半導体を先端CMOS(Complementary Metal-oxide-semiconductor)プロセスにより開発した。

本AI半導体は、従来の同程度の処理速度のAI半導体と比較して約1/10の電力で動作し、またAIエンジンとともに16個の高性能A/D(Analog-to-digital)変換器を搭載することで、画像だけでなく、多数のセンサー信号もAIにより識別できる。

このようなエッジ向けAI半導体を幅広く展開して、産業の現場などでのデータ処理を加速し、デジタライズドアセットの価値向上を図る。

参考文献:T. Oshima et al., “A 7 nm CMOS Anomaly-Detection Deep-Learning Processor with Embedded A/D Converters and Pseudo-Image Generation for Sensor Fusion,” IECON 2025(2025.10) 

[図3]Lumada 3.0の現場適用を強化するエッジ向けAI半導体 [3]Lumada 3.0の現場適用を強化するエッジ向けAI半導体

4. 先端半導体の定量評価を実現する新規電子顕微鏡法

半導体はさらなる高性能化・省電力化に向けて構造の複雑化が進み、製造難度が一層高まっている。こうした先端半導体の製造においては電子顕微鏡を用いた微細構造の精密評価が重要となる一方、電子との作用が小さい軽元素材料の観察や、デバイス内部の電位・ドーパント分布といった電気的特性の定量評価が新たな課題となっている。

これに対し、名古屋大学との共同研究により、電子波の位相情報を基に物質の電気・磁気構造を高感度に評価する新規手法を開発した。従来の電子顕微鏡では均一な電子ビームを照射するのに対し、本手法では不均一な構造を付与した電子ビームを試料上で走査し、試料を透過した電子が形成する干渉パターン(ホログラム)から試料の電気・磁気構造を評価する。本手法により半導体内の電位やドーパント分布の評価に加え、各種材料の性能向上・機能解明など幅広い領域への貢献が期待される。

[図4]開発した新規電子顕微鏡法の概要と観察例 [4]開発した新規電子顕微鏡法の概要と観察例

5. 半導体製造GXに貢献する革新的冷却技術

半導体製造分野における環境負荷の低減に向け、製造プロセスに欠かせない冷却に要する電力削減は重要な課題の一つである。また、地球温暖化係数の高い冷媒ガスに対する使用規制も強化されている。これらの社会課題を解決するためには、電力効率が高く、かつフロンフリーな冷却技術の開発が求められる。

日立は、従来のコンプレッサ方式とは異なる冷却技術として、磁気エントロピーを活用した室温磁気冷却技術の開発に取り組んでいる。磁気冷却では、磁気熱量効果を有する磁性体に磁場を印加/除去することで生じる発熱/吸熱の性質を利用する。これにより冷媒ガスを用いることなく高効率な冷却システムを実現できる。本技術の開発により、半導体製造装置などの冷却機構を省エネルギー化・フロンフリー化し、半導体製造GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献をめざす。

[図5]磁気エントロピーを活用した磁気冷却技術 [5]磁気エントロピーを活用した磁気冷却技術

6. 臨床用質量分析装置を支えるイオン光学技術

質量分析は、測定対象成分をイオン化し、イオンの質量ごとに分離して計測する手法であり、他の手法では正確な定量が難しい低分子のホルモンや薬剤を高い選択性で検出可能である。しかし、従来のイオン光学系では気流に含まれる中性分子が高真空へと導入されて汚染を引き起こし、低血中濃度の成分の測定に支障をきたすという問題があった。

この課題を解決するため、「軸ずらしイオンガイド」を開発した。「軸ずらしイオンガイド」は八重極領域、接続領域および四重極領域からなる。八重極領域では静電界によりイオンを気流から分離し接続領域に導入する。接続領域では八重極の一部が四重極に連続的に変化することで、四重極領域にイオンを導入する。四重極領域は気流から離れた位置に配置されているため、気流の影響を避けてイオンを効率よく収束させ、高真空に導入することができる。この「軸ずらしイオンガイド」により、高真空の汚染を低減し、従来比で約4倍の高感度化に成功した。

[図6]臨床用質量分析装置を支えるイオン光学技術の概要 [6]臨床用質量分析装置を支えるイオン光学技術の概要

7. 幅広い検体条件に対応可能な遺伝子検査システム

数百種類の遺伝子を次世代シーケンサーにより解析し、遺伝子変異情報に基づいて治療方針の検討を行うがんパネル検査が普及している。解析に用いられるがん組織は大きさ、品質にばらつきがあるため、一定の割合で遺伝子の読み取り量が不足し、検査が成立しない場合がある。これに対し、日立は幅広い検体条件に対応可能な検査の確立をめざし、検査の失敗要因となる不純物を正確に除去可能な精製技術の開発に取り組んでいる。

がんパネルシーケンスにおけるDNA(Deoxyribonucleic Acid)精製工程にゲル精製法を適用した結果、従来の精製法(ビーズ精製)と比較して不純物の除去性能が向上することを確認した。さらに不要な配列読み取りの抑制により対象遺伝子が必要読み取り量を満たすことが明らかになった。現在は検査数の増加に伴う検査自動化の需要に対応して、ゲル精製の自動化に取り組んでいる。将来的には、既存技術では検査困難な検体にも対応することで、がんパネル検査の適用拡大に貢献する。

[図7]遺伝子検査システムの概要 [7]遺伝子検査システムの概要

8. 線形加速器システムOXRAYを支えるデジタル技術

がん治療の低侵襲・高精度化に向け、CBCT(Cone Beam Computed Tomography:コーンビームコンピュータ断層像)の画質向上技術を開発している。株式会社日立ハイテクの線形加速器システムOXRAYは、照射ガントリと照射リングを連続的に動かす二軸照射と、2対の撮像用イメージャおよび照射ヘッドのジンバル機構を用いて腫瘍の動きに追従する動体追尾照射により、高い線量集中性を実現する。

これらの機能を最大限生かすためには、治療直前の患者体位や腫瘍位置、周辺組織の変化の正確な把握が不可欠である。本システムは、その手段としてCBCT撮影機能を備えている。一般的にCBCTでは、体内の金属インプラントが引き起こす画像の歪みや、体内での放射線散乱による体幹部中心付近のコントラスト低下が課題となる。本課題を解決するため、画像処理を用いた体内金属による虚像の除去技術や、X線透過シミュレーションを用いた画像補正技術を開発した。今後は、ハードウェアの開発も進め、ソフトウェア・ハードウェアの両面から画質向上に貢献する。 

[図8]線形加速器システムOXRAYの概要 [8]線形加速器システムOXRAYの概要

9. 細胞治療の普及に向けた自動培養技術

先進的な医療技術として、細胞治療が注目されている。中でも、がん患者の血液から免疫細胞を分離し、がんを認識するCAR( Chimeric antigen receptor:キメラ抗原受容体)遺伝子を導入して患者に戻すCAR-T療法は、化学療法に抵抗性を持つがんに対して高い有効性が期待される。

CAR-T療法向け免疫細胞は主に熟練者によって手作業で製造されており、製造コストとコンタミネーションリスクの低減が課題である。これに対し、製造プロセスを完全閉鎖系で自動化することにより、製造コストを削減し、安全な細胞製造を実現できる。

日立は、iPS細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)の培養自動化で培ってきた完全閉鎖系の自動培養技術を基に、免疫細胞の培養に適したガス透過性膜を備える培養容器を自動培養装置に実装する技術(ガス供給チャンバー機構)を開発した。本技術により手作業と同等の品質による免疫細胞の培養自動化が可能となり、2025年10月に株式会社日立ハイテクより発売された自動培養装置iACE miniに採用された。

[図9]ガス供給チャンバー機構 [9]ガス供給チャンバー機構

10. EVチャージャの高効率化を実現する電力変換技術

EV(Electric Vehicle)の航続距離拡大に伴い、容量が増加傾向にあるバッテリーの充電時間を短縮するため、EVチャージャには150 V~900 Vの広範囲な出力電圧への対応が求められている。さらに、EVに蓄えられた電力を活用するニーズが高まっており、充電のみならず放電も可能な双方向の電力変換機能が必要とされている。

本開発では、双方向の電力変換によりEVバッテリーの充放電を容易にするDAB(Dual Active Bridge)方式のDC(Direct Current)/DCコンバータをEVチャージャに採用した。DAB方式は広い電圧範囲に対応できる一方、低電圧および高電圧領域で効率が低下するという課題があった。そこで、電力変換のスイッチングのタイミングをより細かく制御し、出力電圧領域に応じてスイッチングデバイスや高周波トランスで発生する損失を最小化する制御手法を開発した。これにより、出力電圧300~800 V・電流30~60 Aで98%以上、ピーク効率98.8%を達成した。本技術は、株式会社日立インダストリアルプロダクツのマルチポートEVチャージャに適用されている。

[図10]EVチャージャ向け高効率DC/DCコンバータ [10]EVチャージャ向け高効率DC/DCコンバータ

11. 電動航空機パワートレインの高出力密度を推進するモータ技術

次世代航空機の電動化に伴い、高出力密度と信頼性を備えたモータが求められている。日立はこれまで自動車分野で培った超多極モータ技術を応用し、電動航空機向けに高速化した高出力密度モータを開発した。このモータは、磁石をハルバッハ配列※)にする超多極設計により、有効磁束を増加させてトルクを高めつつ、磁石とロータコアを固定するための耐遠心力構造のロータハウジングで軽量化と高強度を両立する。さらに、遠心油冷による高効率冷却で、連続高出力運転時の性能の安定化を実現した。これらの技術により、本開発のモータは、次世代航空機に求められる高出力密度と高信頼性を実現し、既存エンジンや機体構造を大きく変更することなく搭載可能となる。

今後は高磁束密度鋼板の採用による性能向上と、大型商用車など高トルクを必要とする製品への展開を進めていく。なお、本成果は、NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業「次世代蓄電池・次世代モーターの開発(JPNP21026)」の結果得られたものである。

※)磁石のN極の向きを90°ずつ回転させて配置することで、モータの各磁極で高密度の磁束を発生する構造。

[図11]遠心油冷および耐遠心高強度ロータ [11]遠心油冷および耐遠心高強度ロータ

12. 高出力インバータを実現する並列駆動技術の開発

CO2排出量抑制に向けてさまざまな分野における電動化が進められる中、キーコンポーネントであるインバータの高出力化技術の確立が求められている。日立は、ユニット化したインバータを出力に応じて並列接続することで、多様なニーズに対応可能な技術開発を進めている。インバータを並列接続した場合、半導体素子の特性差によりユニット間の電流不均一が課題となる。そこで、ゲートパルス時間調整とトロイダルコアを用いた大容量並列化技術を開発した。測定した出力電圧波形を基にPWM(Pulse Width Modulation)信号を遅延させ時間差を最小化するとともに、従来の大型リアクトルに代えて各出力配線を小型トロイダルコアの内径で対向接続する方式により、出力電流バランス改善の効果を確認した。

今後はEVチャージャ、大型商用車など、高出力を必要とする製品への展開を進めていく。なお、本成果はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代蓄電池・次世代モーターの開発(JPNP21026)」の結果得られたものである。

[図12]高出力並列インバータの試作検証 [12]高出力並列インバータの試作検証

13. エージェント型AIを用いたサプライチェーン自動化

地政学的な不確実性の高まりや資源調達リスクの増大に伴い、多くの企業はサプライヤの混乱による重要部品の不足や、不正確な需要予測によって生じる過剰在庫といった課題に直面している。こうした状況に対応するため、日立はエージェント型AIを活用したサプライチェーン自動化ソリューションの開発を進め、高度で自律的な運用を継続できるよう支援している。

本ソリューションの主な機能は以下のとおりである。

(1)サプライチェーンのリスク検知
船荷証券などのオープンデータやグラフ技術を活用し、取引が直接見えないティア2以下のサプライヤを含むE2E(End-to-end)のサプライチェーンを構築するほか、地理的要因や特定サプライヤの依存に関連するリスクを評価する。
(2)AIによる需要予測
時系列分析や高度なAI技術の活用と、外部・内部データの統合利用により、将来の需要を予測するほか、顧客固有の製品特性を考慮し、最適な予測手法を選択する。
(3)エージェント型AIによるリスク緩和策の最適化
サプライチェーン管理の専門知識を備えたエージェント型AIを活用し、これらのインサイトを基にサプライヤの切り替えや生産・在庫計画の調整といった対策をシミュレーションし、実行する。

これらの機能と日立のフィジカルAIの中核技術であるIWIM(Integrated World Infrastructure Model)の連携により、混乱への迅速な対応が可能になり、需要と供給の不確実性による損失を低減させることができる。

[図13]サプライチェーン自動化の概要 [13]サプライチェーン自動化の概要

14. 物流センターの柔軟性を向上するコンフィギュアラブル自動倉庫

EC(Electronic Commerce)の拡大に伴い、物流センターでは24時間稼働や省人化に向けてAMR (Autonomous Mobile Robot)などのさまざまな自動化設備の導入が加速している。しかし、異なる自動化設備間の連動制御は難しく、現状は設備ごとにタスクや稼働エリアを分割して運用するケースが一般的である。このため、投資効率を高めるには、異種設備群を同一エリアで柔軟に混在運用できる仕組みが求められている。

そこで日立は、物流センターの自動化と柔軟性の両立に向けたソリューション「コンフィギュアラブル自動倉庫」の実現に向けて、以下の技術を開発した。

(1)入荷・出荷など工程ごとの負荷に対し、物量変動の予測に基づいてAMRなどの搬送機器の各工程に対する最適な割当を決定する動的アセット配分制御技術
(2)異なる搬送システムに対して、各搬送機器の経由地点などの上位制御指示により同一稼働エリア内での高効率な混在運用を実現する異種フリート混在制御技術

本技術により、物量増大に対する最小限の設備でのアセットライトな対応と、各設備の高い稼働率を実現することで、顧客の自動化設備導入における投資効率の向上に貢献する。今後は現場検証を加速し、早期の実用化をめざす。さらに、トラックの自動運転と連動した倉庫ヤードと倉庫内作業の動的制御ソリューションの提供に向けた取り組みも加速する。

[図14]コンフィギュアラブル自動倉庫の概要 [14]コンフィギュアラブル自動倉庫の概要

15. EVシフトを促進する協調型CaaSマネジメントソリューション

中長距離輸送のEVシフトの進展に伴い、経路上で高速充電サービスを提供するCaaS(Charging as a Service)事業者の台頭が予想される。しかし、各物流企業がCaaS事業者の充電インフラを場当たり的に利用すると、ピーク時の充電待ち増加や、オフピーク時の充電器稼働率の低下に加え、併設太陽光パネルなどの再生可能エネルギーの活用不足や、系統電力の調達コスト増加といった問題が生じる。

これを解決するため、協調型CaaSマネジメントソリューションを開発している。本ソリューションは、物流企業からの充電リクエストに応じて経路上充電の場所・時間帯・価格を最適化し、充電需要をオフピークや低稼働の場所へ誘導して物流企業間での充電器の協調利用を実現する。さらに、充電需要予測に加え、電力価格変動、再生可能エネルギー発電、売電などを考慮した充電・エネルギー需給の統合最適化により、CaaS事業者の利益・稼働率の向上と物流企業の待ち時間低減を両立する。今後、EVシフトが先行する欧州を主要市場として開発・事業化を進める。

[図15]協調型CaaSマネジメントソリューションの概要 [15]協調型CaaSマネジメントソリューションの概要

16. 自律進化型製造オートメーション

製造業を取り巻く環境は、地政学リスクや経済の不確実性の高まりにより急速に変化している。設備停止など現場レベルの課題に加え、サプライチェーンの断絶といった経営レベルのリスクにも即応できる柔軟な工場運営が求められている。一方で、深刻化する労働力不足により、生産ラインの長期停止や生産切替の遅延が発生し、生産能力の低下も懸念される。

こうした課題を解決するため、物理モデルや数理モデルなどのOT(Operational Technology)ナレッジをAIが扱える形で蓄積し、それを組み込んだフィジカルAIをコアとする「自律進化型製造オートメーションソリューション」を開発している。本ソリューションは、生産変動を自動認識し、最適なアクションを自動生成する。さらに、Trusted Agentic AIによって、状態監視、要因診断、対策立案、制御更新、安全・信頼性の事前検証といった一連の業務手順を自動誘導し、その経験を継続的に学習・進化させる。

今後、製造業の国内回帰が進む日米市場をターゲットに、日立のフィジカルAIの中核技術であるIWIMに基づいて、本ソリューションの開発と事業化を加速していく。

[図16]自律進化型製造オートメーションの概要 [16]自律進化型製造オートメーションの概要

注:略語説明 BOM(BIll of Material)、BOP(Bill of Process)、ERP(Enterprise Resource Planning)、 MES(Manufacturing Execution System)、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)


17. AI運転ガイダンス技術によるプラント運転ノウハウのデジタル化

素材化学産業においては、人口減少やベテランの退職によりプラントオペレータ人財が不足している。特に、高機能化学品を製造するバッチプロセスにおいては、品種の違い、製造・洗浄の履歴、外気温・湿度などに応じて常にプロセスの特性が変動し、オペレータが手動操作でこの変動を吸収していることから、人依存リスクの削減と運転ノウハウの伝承が急務となっている。

日立は、プラント操作のノウハウをモデル化し、誰でも標準的な運転を可能にするAIによる運転ガイダンス技術を開発した。本技術の特徴は、熟練者の判断結果を、(1)プロセスの内部状態を予測するプロセスモデルと、(2)予測結果を解釈して最適な操作方法を導出する制御モデルに構造化して学習する点にある。これにより、熟練者の模倣だけでなく、プラントの更新に合わせた操作方法の継続改良のほか、類似品種や他拠点への横展開が可能となる。また、運転中の安全性を監視し、必要に応じてAIのガイダンスを補正する安全ガードレール機能も備える。

本技術は、複数の顧客プラントへの提案・実証を経て、2026年度中の製品化を予定している。これにより、プラント事業者の持続可能なプラント運営や他拠点への迅速な生産体制構築に貢献していく。

[図17]運転中の人の判断を再利用可能な形でモデル化するアーキテクチャ [17]運転中の人の判断を再利用可能な形でモデル化するアーキテクチャ

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