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Hitachi Global

研究開発

One Hitachiでの取り組み

2026年2月24日

研究開発


1. DCの企画・設計を効率化するエンジニアリング技術

近年、生成AI(Artificial Intelligence)などの需要が急速に拡大しており、安定した環境で膨大な計算リソースとストレージを利用するための設備として、DC(Data Center)の重要性が高まっている。日立はDC事業を注力領域と捉え、特に短期導入と省スペース設置を特長とするコンテナ型DCによって、顧客の希望するDCの企画、ファシリティ設計、施工、運用、保守までのワンストップサービスを提供している。また、コンテナ型DCへの多様な要件に迅速に対応しつつ、企画段階における顧客との認識合わせ、見積、設計工程を効率化するため、(1)IT機器の消費電力規模や設備冗長性などの基本要件からコンテナ型DC構成パターンごとの空調・熱源・UPS(Uninterruptible Power Supply)などの必要機器数を導出する技術、(2)生成AIとメタバースの活用によりコンテナ型DCの構成要素を3D(Three Dimensions)化して容易に確認可能な技術の開発を進めている。

今後、さまざまな観点の技術開発を通じて、顧客のDC早期導入に貢献する。

[図1]DCの企画・設計を効率化するエンジニアリング技術の概要 [1]DCの企画・設計を効率化するエンジニアリング技術の概要

2. IT/DC統合運用ソリューション

近年、生成AIをはじめとするAI技術の進歩や普及に伴い、DCの需要が増加している。AIの計算処理に用いられるGPU(Graphics Processing Unit)サーバなどのIT機器は、高性能化に伴い電力密度や発熱量の増加が著しい。一方で、世界的に環境規制の強化が進められており、DCの省エネルギー化が課題である。

日立は、DCで実行されるAI処理からIT機器、冷却設備までを統合運用することにより、AI処理性能と冷却エネルギー消費を最適化することをめざして研究開発を進めている。自社DCの稼働データから得たGPUや冷却設備の効率特性に基づき、(1)発熱を平準化するAI処理分散と(2)AI処理負荷に応じた冷却稼働制御を連携する技術を開発している。要素試作評価を通じ、発熱平準化によるAI処理性能の向上と、AI処理低負荷時の冷却稼働低減によるエネルギー削減の見通しを得た。

今後は実用化に向けて、次世代GPUや異種冷却装置が混在した環境での連携システム実装と実証を進める。

[図2]IT/DC統合運用ソリューションの概要 [2]IT/DC統合運用ソリューションの概要

注:略語説明 CDU(Coolant Distribution Unit)、AHU(Air Handling Unit)


3. 多拠点DCを活用した系統連携型エネルギーマネジメント技術

カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」と記す。)の導入が加速する一方で、電力系統の余力不足による発電抑制や、再エネ発電量の変動に対応するための調整力の確保が課題となっている。また、生成AIの急速な普及に伴うDCの電力需要増加により、電力系統へ接続するまでの期間の長期化や、電力設備増強に伴う社会コストの増加も課題となっている。これらの課題に対する解決策として、再エネが潤沢な地方エリアにDCを設置し、ワークロードを処理することで、再エネの地産地消を実現する。

日立は、東京電力パワーグリッド株式会社との協創を通じて、電力需給状況、DCのロケーション、DC間のネットワーク速度・サーバ負荷状況・ワークロード特性に応じて適切なシフト先とシフト方式を選択し、高速なワークロードシフトを実現する系統連携型ワークロードシフト技術を開発した。三つのエリアのDCを用いた実証実験の結果、膨大な電力を消費する生成AIアプリケーションにおいても、ほぼダウンタイムなしでDCをまたがるワークロードの移動を実現でき、電力調整力市場における周波数調整に活用できる可能性を確認した。今後、分散配置されたDCとエネルギーのエコシステム構築と社会実装をめざしていく。

[図3]系統連携型ワークロードシフト技術を用いた多拠点DCにおける需給調整 [3]系統連携型ワークロードシフト技術を用いた多拠点DCにおける需給調整

注:略語説明 DR(Demand Response)、DER(Distributed Energy Resources)


4. 広域分散DCの実現に向けたAIエージェントによるネットワーク制御

生成AIの普及が加速する現代において、爆発的に増大するデータ流通を支えるには、大容量・低遅延かつ低消費電力な次世代APN(All Photonics Network:光ネットワーク)の構築が不可欠である。APNは、電気処理を介さず光信号のまま長距離伝送を行うことで、限界に達しつつある通信インフラ性能を飛躍させる技術である。APNを実社会に適用するうえでの大きな課題が、光信号特有のアナログ的な挙動を制御するために高度な専門知識を要すること、および、インフラ制御におけるセキュリティの確保である。

この課題を解決するため、日立は、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)によって物理層モニタリングデータと自然言語指示を統合して処理するAIエージェントを、外部クラウドの必要がないオンプレミス環境で実行する技術を開発した。

これにより、大容量DC間ネットワークを含むAPNにおいて、自然言語による指示だけで光デバイスの設定を最適化し、専門家でなくとも柔軟なネットワーク制御を可能にする。

[図4]生成AIエージェントによる光ネットワーク制御の概要 [4]生成AIエージェントによる光ネットワーク制御の概要

5. 生成AIの熱課題を解決する日立の液冷技術

生成AI開発に欠かせないGPUの発熱量は、近い将来2,000 W近くに達すると予測されている。これに伴い、GPU冷却方式も従来の空冷方式から、より効率の高い液冷方式への転換が進んでいる。

この液冷方式技術について、日立製作所研究開発グループは長年の歴史と豊富な実績を有している。1991年発売の大型コンピュータ「M880」にて液冷方式技術を適用し、1995年発売の大型コンピュータ「MP5800」では、当時最先端のチップ当たり140 Wの高性能液冷技術を確立した。また2007年には、HEV(Hybrid Electric Vehicle)など電動化製品の開発にて世界初※1)となる直接冷却型パワーモジュールを製品化し、2013年には世界に先駆けて※2)直接水冷型両面冷却パワーモジュールを開発し、従来比35%の冷却性能向上を達成した。さらに、次世代のGPU冷却方式として期待される、蒸発潜熱を利用した二相液冷方式についてもサーバ向けループ式サーモサイフォンを2010年に製品適用している。ここでは、高性能沸騰面を活用することで低熱抵抗化を実現し、ファン動力を70%削減した。

長年にわたり培ったこれらの液冷方式、二相液冷方式の技術を、激化するGPUの発熱課題へのソリューションに展開していきたいと考えている。

※1)車載インバータ用パワーモジュールにおいて、日立調べ。
※2)2013年当時、車載インバータ用パワーモジュールにおいて、日立調べ。

[図5]日立の冷却技術を支えるMP5800LSI冷却モジュール(左)、世界初の直接水冷型両面冷却パワーモジュール(中央)、サーバ冷却用サーモサイフォン(右)の外観 [5]日立の冷却技術を支えるMP5800LSI冷却モジュール(左)、世界初の直接水冷型両面冷却パワーモジュール(中央)、サーバ冷却用サーモサイフォン(右)の外観

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