我妻:
先ほど、鉄道に関して、営業車に状態監視のためのセンサーを組み込む「インサービスモニタリング」の話をしましたが、これは自動車交通にも有効です。例えば、ロンドンではポットホールという道路の劣化でできる穴が問題となっていて、穴に落ちてホイールが破損したりタイヤがパンクしたりした際に、それを自治体が補償するため、財政を圧迫するまでになっているのです。自動車でインフラの状態監視ができれば、事前に兆候を検知して対応できるようになります。
古見:
先日、あるタイヤメーカーのレポートを読んでいたら、今やタイヤにも多数のセンサーが積まれていて、単にパンクを検知するだけでなく、気候状況をセンシングし「道を読む」ことで安全走行するそうです。また、車メーカーもボンネット下の路面状況や起伏を読んで、多少の段差であれば衝撃を吸収できるという。それがさらに車同士でつながれば、前を走る車の履歴を基に道の状態が予測でき、より安全に走行できるようになりますね。
我妻:
シート(座席)センサーも進化していて、あと数年もすればシートの生地に量子センサーが埋め込まれるかもしれません。ドライバーの生体情報やブレーキをかけやすい場所がより高い精度で分かるようになって、渋滞や事故を未然に防いだり、インフラをより長持ちさせたりするために生かせるだろうと期待しています。
髙橋:
ただそのためには、それぞれの自動運転車を全体として管理するプレイヤーが必要であろうと思います。バラバラに自動運転をするだけだと、かえって渋滞やトラブルを引き起こしかねませんし、自動運転になって皆が道路の同じ所を走るようになると轍ができやすくなって道路の劣化が早まると考えられています。この車は少し右に寄せる、次は左に寄せるといったように、インフラ全体を包括的に制御するプレイヤーが必要なのです。
また、センサーやカメラの精度向上の一方で、標準化も求められるでしょう。道路に穴が空いていることが分かっても、カメラから得られた情報にメーカーごとにばらつきが大きいと解析には使用できません。さらに、自動運転車のデータの所有権が誰に帰属するのかなど、法的な整備も必要になります。
古見:
なるほど、自動運転用の共通基盤なり、より上位レイヤーでの管理なりが必要になるわけですね。
我妻:
まさにAIを活用して社会インフラの課題を解決するというのは、日立のHMAXTM※2)by Hitachiの大きなテーマでもあります。そもそも道路が穴だらけだったら、自動運転どころではないですからね。鉄道も同様で、信頼できるインフラがないと自動運転は成立しません。広域な都市交通の膨大なデータを集めて、意味のある情報に変え、最終的に保守・メンテナンスに資するようなさまざまな予測に使っていく。そのための基盤整備をいかに進めていくか、というのが最大の課題になります。
髙橋:
その一つの先進的な取り組みとして、現在、日立市と日立グループによる次世代未来都市共創プロジェクトにおいて、「公共交通のスマート化」を進めています。これは、デジタル技術を活用して交通流や人流を見える化し、施策に反映して、それによって街がどう変わったかを検証するサイクルを回す試みです。こうした個別の成果を、いかにスケールさせていくかということも考えておかなければなりません。
古見:
都市ごとに色が違いますからね。その中でどう共通項を見出して、その都市なりの魅力を引き出しながらスマート化につなげていけるかがポイントになると思います。
※2)
AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群のこと。フィジカル・デジタル両方のアセットから得られる膨大なデータと、日立が長年培ってきたドメインナレッジ、先進的なAI技術を組み合わせて、世界中に新たな価値をもたらすソリューションを提供。HMAX Mobilityでは、よりスマートで最適化された交通システム、自動運転、IoT(Internet of Things)対応型のモビリティの実現をめざしている。