2025年6月19日
製造業のトレーサビリティや医療・金融分野のデータ利活用を支援し、社会課題解決に貢献
株式会社日立製作所
国立大学法人東京大学
図1 開発技術の適用イメージ(トレーサビリティ問い合わせ例: 徹底的な製造検査)
株式会社日立製作所(以下、日立)と国立大学法人東京大学(以下、東大)は、ビッグデータ分析の高速化に向けて、相互に複雑なつながりを持つデータ(以下、グラフ構造データ*1)の検索速度を大幅に向上する「動的プルーニング*2技術」を開発しました。従来、データベース内でデータ分析を行う際のグラフ構造データを順次たどる処理は、再帰問合せ処理*3と呼ばれる手続きで行われ、不要なデータを繰り返し読み取る必要があり、検索速度が低下するという課題がありました。本技術では、再帰問合せ処理中に得られる情報をもとに、次に読み取るデータの範囲をリアルタイムかつ正確に特定することによって不要なデータ読み取りを削減し、検索速度を大幅に向上させます。今回、製造業の製品出荷判定を対象にした検証では、データ検索速度を従来比で最大135倍*4向上できることを確認しました。これにより、製品の設計から製造、流通、保守までの工程や部品の追跡などのグラフ構造データの分析業務を迅速化し、トレーサビリティ*5の品質向上に貢献します(図1)。
今後、日立と東大は、製造業のほか、社会保障での診療パターンの分析による疾病リスクの予測や金融分野での不正アクセスの検出などへの本技術の適用をめざすとともに、社会課題の解決に向けた技術革新を推進していきます。
なお、本成果の一部は、2025年6月22日から27日にドイツのベルリンで開催されるデータベース分野の国際会議2025 ACM SIGMOD/PODS International Conference on Management of Dataで発表予定です*6。
AIやビッグデータの活用が急速に進む中、データ処理技術の重要性が高まっており、特にAIの性能向上や社会課題解決に直結するデータ検索の効率化が求められています。膨大なデータを格納するデータベースでは、データ同士の複雑なつながりを効率的に表現する必要があり、それを可能とするグラフ構造データは、交通経路検索やeコマースの商品リコメンデーションをはじめ、製品の品質管理、医療データ分析、不正アクセス分析など、さまざまな分析業務で利用されています。しかし、グラフ構造データはデータ量が増加したり、データの階層が深くなると検索速度が遅くなり、迅速なデータ分析や意思決定が難しくなるという課題がありました。日立と東大は、このような産業界の抱える実問題の解決に貢献するべく、新たなデータプラットフォーム技術の確立に向けた研究開発に取り組んできました。
今回、日立と東大の共同研究成果の一つとして、データベース内のグラフ構造データの検索速度を大幅に向上する「動的プルーニング技術」を開発しました。従来、グラフ構造データを順次たどる処理は、再帰問合せ処理と呼ばれる手続きで行われ、不要なデータを繰り返し読み取ることが必要でした。本技術では、再帰問合せ処理の実行中に得られる中間結果*7をもとに、次に読み取るデータの範囲をリアルタイムに見積もることで、各処理に必要なデータをより正確に特定することができます。これにより、データ量が増加した場合や、データの階層が深くなった場合でもデータの読み取り量を抑えることができ、検索速度が大幅に向上します(図2)。
図2 再帰問い合わせ処理におけるデータの読み取り範囲とデータ検索時間の比較
今回、製造業の製品出荷判定において、グラフ構造データの分析業務をモデル化したデータベースを用いて本技術を検証したところ、再帰問合せ処理におけるデータ読み取り量を大幅に削減し、データ検索速度を従来比で最大135倍向上できることを確認しました。
なお、本研究の一部は、日立と東大が2022年に東大生産技術研究所に設置した「ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学」社会連携研究部門*8、および「戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)」「統合型ヘルスケアシステムの構築」の支援を受けて行われました。
日立は既に、本技術を超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder (HADB)」に組み込み、提供を開始しています。また、本技術を適用したHADBは、生産工程における業務とデータ間のつながりをデジタル空間に再現する「IoTコンパス」と共に、IoTやデータの利活用を支援するサービス群「Hitachi Intelligent Platform」*9でもご利用いただけます。
今後、日立と東大は「動的プルーニング技術」のさらなる高度化やAI連携を進めるとともに、製造業のほか、社会保障や金融分野などへの適用をめざし、社会課題の解決に向けた技術革新を推進していきます。
HADBは、大量データの高速かつタイムリーな分析を可能とする標準SQLに対応した国産のリレーショナルデータベースです。本製品は、データ処理可能なところから並列に複数タスクを実行することで、サーバ・ストレージの能力を最大限に使い切る「非順序型実行原理」*10に基づき、超高速検索処理を可能としています。
URL : https://www.hitachi.co.jp/data-binder/
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。
東京大学生産技術研究所について
東京大学生産技術研究所は、1949年に設置された国内最大規模の大学附置研究所です。現在は、およそ120の研究室を擁し、約400名の教職員を含め、総勢1,300名以上が、教育研究活動に従事しています。工学のほぼ全領域を包含する総合工学研究所また世界的中核研究所として、先端的な工学知を創造・発信するとともに、社会における様々な課題の解決や産業の創成に貢献し、数多くの分野融合かつ国際的な活動を組織的に展開しています。
技術に関するお問い合わせ先
株式会社日立製作所
研究開発グループ
国立大学法人東京大学
生産技術研究所
合田 和生
+81-3-5452-6594
製品・サービスに関するお問い合わせ先
株式会社日立製作所
AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
マネージド&プラットフォームサービス事業部