2025年7月23日
日立とQSTの技術と知見で、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決すると期待されるフュージョンエネルギーの実現に貢献
株式会社日立製作所
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
株式会社日立製作所(以下、日立)と国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、QST)は、南フランスで建設中の核融合*1実験炉ITER(イーター)に使用される最重要機器の一つ、「ダイバータ」の主要部品である「外側垂直ターゲット*2」について、2022年1月から実機大モックアップとなる「プロトタイプ2号機」の開発に取り組み、後述する自動溶接システムの導入などにより製作方法の合理化を実現の上、2025年3月にプロトタイプ2号機を完成させました。さらに、このたび、外側垂直ターゲットの「高熱負荷試験体」が、ITERを建設・運転する国際機関であるITER機構による厳しい認証試験に合格し、2024年7月にQSTとプロトタイプ1号機を完成させた先行企業に続き、日立の製作技術が認められました。
日立とQSTは、プロトタイプ製作で得た技術や知見を活かして、今後もITER計画の推進に貢献するとともに、将来のフュージョンエネルギー実現に向けた技術開発にも協力していく方針です。加えて、日立は、QSTが設計検討を進めているフュージョンエネルギーの原型炉や、フュージョンエネルギー関連のスタートアップ企業に対しても、ダイバータや類似の炉内機器の提供をめざします。
外側垂直ターゲットプロトタイプ2号機の外観
外側垂直ターゲットの高熱負荷試験体
日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極は、フュージョンエネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクト「ITER計画」を推進しており、核融合燃焼による本格運転を目標に、実験炉であるITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はダイバータやトロイダル磁場コイル(TFコイル)をはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTがITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進しています。
このうち、ダイバータは、トカマク型*3をはじめとする磁場閉じ込め方式*4の核融合炉における最重要機器の一つで、核融合反応を安定的に持続させるために、炉心のプラズマ*5中に燃え残った燃料や核融合反応で生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担います。トカマク型装置の中で唯一プラズマを直接受け止めるための機器であり、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などにさらされる厳しい環境下で使用されるため、高融点であるものの難削材であるタングステン等の特殊な材料が用いられます。加えて、プラズマ対向面には緻密な形状加工が施されており、全体形状と共に、個々のプラズマ対向材の傾斜、段差、隙間には0.5ミリ以下の精度が必要となる等、高精度の加工・組み立て技術が求められ、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされています。
ダイバータの熱負荷は、最大で1平方メートルあたり20メガワットに達します。これは、小惑星探査機が大気圏突入の際に受ける表面熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受ける表面熱負荷よりはるかに大きな値です。また、外側垂直ターゲットには、最大約16.5トンの強大な電磁力が働くため、強固な機械構造が必要となります。将来に向けた核融合炉の高出力化や小型化あるいは強磁場化のためには、さらなる高熱負荷や巨大電磁力に耐えるための、ダイバータの製作技術の確立が極めて重要です。
QSTは、ダイバータが1平方メートルあたり20メガワット もの高い熱負荷に耐えるための鍵となる技術として材料メーカーの材料開発を主導し、熱負荷により割れることのないタングステンモノブロック*6や、高い熱伝導率を維持しつつ結晶粒の粗大化を抑えることで強度を確保した銅合金冷却管の製造方法を確立しました。加えて、これらの材料を接合するために高い熱負荷に耐えるろう付け*7技術を開発しました。
日立は、長年にわたる原子力事業で培った技術と経験を結集し、欠陥のない高品質な特殊材料の溶接技術と狭隘で複雑な形状への非破壊検査技術を開発するとともに、繰り返し実証を重ねることで、ITER機構から要求される0.5ミリ以下の高精度な機械加工と組み立てを実現しました。また、製作工程や費用の合理化を図るため、厚肉の高強度ステンレス鋼の溶接において、ダイバータ専用に最適化した自動溶接システムを開発しました。手作業に代わり溶接トーチを取り付けたロボットアームと、溶接する対象物の位置をロボットアームの動きと同期させて制御する装置を組み合わせることで、より高品質かつ低コストでの溶接を実現しました。
なお、外側垂直ターゲットに必要な特殊材料はQSTが材料メーカーから調達して日立に支給し、日立はQSTから支給された特殊材料を用いて、徹底した品質管理の下で外側垂直ターゲットの加工と組み立てを実施しています。また、QSTは日本で唯一となる核融合炉内機器用の高温ヘリウムリーク試験装置*8を整備・運用し、自らが最終試験を実施することで、品質の確保に努めています。
日立とQSTはこれまでに、ITER向け中性粒子ビーム入射装置*9用100万ボルト超高電圧電源設備*10の開発と製作を進めており、現在、設備の試験をイタリアで実施中です。また、フランスに納入することとなる同装置の実機についても日立の工場で製作を開始しています。さらに、日本国内では、フュージョンエネルギーの早期実現のために、ITER計画と並行して日本と欧州が共同で建設した世界最大の超伝導トカマク装置「JT-60SA*11」において、中性粒子ビーム入射装置の増強にも取り組んでいます。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)について
QSTは平成28年4月1日に発足した国立研究開発法人です。QSTではフュージョンエネルギーの研究のほか、高機能材料・デバイスの創製や最先端レーザー技術とその応用によりSociety5.0や持続可能な社会の実現を目指す「量子技術基盤に関する研究開発」、量子論や量子技術に基づく生命現象の解明と医学への展開に取り組む「量子生命科学研究」、重粒子線治療、PET等による高精度診断、及び標的アイソトープ治療等を通じて健康長寿社会の実現を目指す「がん、認知症等の革新的な診断・治療技術に関する研究開発」などを推進しています。
さらに、今後は国から指定された基幹高度被ばく医療支援センターとして、被ばく医療に関する技術開発や人材育成等に加え、官民地域パートナーシップによる3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」の整備・運用も着実に実施していきます。
詳細はこちらをご覧ください。
日立製作所のお問い合わせ先
お問い合わせ先
小山 拓
株式会社日立製作所
原子力ビジネスユニット 原子力事業統括本部 次世代炉推進本部 核融合・加速器推進センタ
+81-294-55-3420
QSTのお問い合わせ先
QST国際・広報部 国際・広報課
TEL : 043-206-3026 FAX : 043-206-4062