2026年10月15日
車両データを活用し、保守から輸送計画の策定、運転改善まで、鉄道運営の高度化に貢献
株式会社日立製作所(以下、日立)は、鉄道車両向けオンラインモニタリングシステム(以下、本サービス)が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2026年度グッドデザイン賞」を受賞したことをお知らせします。
本サービスは、走行中の車両データをリアルタイムに取得・可視化することで、異常への迅速な対応や安全性の向上を支援するものです。蓄積したデータを保守だけでなく、輸送計画の策定や省エネ運転、乗り心地の改善に向けた運転支援にも活用することで、鉄道運営全体の高度化に貢献します。日立は本サービスを2026年4月1日からWebアプリケーションサービスとして提供しており、すでに東武鉄道株式会社と相模鉄道株式会社で導入が進んでいます。
鉄道業界では、将来の生産年齢人口の減少や熟練者の退職にともない、安全・安定輸送を支える技能やノウハウの継承が課題となっています。加えて、猛暑・酷暑日の増加により、現場の作業環境が厳しさを増し、作業時間や人員の確保が難しくなっています。また、鉄道事業者では、車両、運行、保守に関する情報が部門ごとに分散し、各部門で情報を確認し、判断する必要があります。さらに、車両データの活用は保守用途が中心で、輸送計画や運転教育などへの活用は限定的でした。
本サービスは、限られた人員や作業時間でも安全かつ安定した鉄道運営を継続できるよう、走行中の車両データをリアルタイムに取得・蓄積し、場所を問わず必要な情報を確認できる仕組みとして開発されました。乗車率や走行速度、消費電力などの情報を活用して、輸送計画の改善や省エネ運転を支援できるほか、車両の状態をデータに基づいて分析し整備する状態基準保全(Condition Based Maintenance)への活用が可能です。
日立は、鉄道事業者との対話を通じて業務の実態や課題を把握し、現場に必要な情報や運用上の要件を確認しながら、事業者とともにシステムを改良してきました。鉄道の保守だけでなく、輸送計画や運転支援など幅広い業務で車両データを活用できる環境を整えることで、業務負担の軽減と業務の効率化を支援しています。
今後も、鉄道事業者が抱える課題に対応しながら、安全かつ安定したサービスを維持できるよう、持続可能な鉄道運営に貢献していきます。
1. 運転時の情報
運転席で確認できるドアの開閉状態や、客室内にある非常通報装置が作動した際の情報を、地上のシステムで確認できます。また、過去のデータを時系列でさかのぼり、モーターの電流やブレーキの動作状況などを確認できます。
画面上部の車両図で、緑色はドアが閉じていることを示す
2. 走行パターン・消費電力
列車の速度の変化と消費電力量をグラフで確認でき、消費電力の削減に向けた運転方法の検討に活用できます。
上段のグラフは速度、下段のグラフは消費電力量を示す
3. 乗車率
車両の荷重から乗車率を把握でき、混雑時間帯に列車の本数を増やすなど、輸送計画の策定に活用できます。
黄色で表示された区間はやや混雑していることを示す
4. 空調
車内温度と外気温度を計測し、空調の動作状況を確認できます。得られたデータは、車内の快適性向上に向けた検討に活用できます。
黄色は快適な状態で、オレンジ色から赤色に近づくほど快適性が低下していることを示す
鉄道車両向けオンラインモニタリングシステム
2026年度グッドデザイン賞
カテゴリー11-05:鉄道・船舶・航空機、システムおよびサービス
熟練者の退職により技能の継承が難しくなっている鉄道業界の課題に対し、車両データをリアルタイムに可視化し、関係者間で共有する仕組みによって解決した点を高く評価した。従来は保守用途に限られがちだった車両データを、故障・異常、乗車率、走行情報まで含め、輸送計画の策定や運転技術の向上支援へと活用範囲を広げた点が、ユニークな価値を創出している。熟練した運転士の運転は、計算で最適化された運転よりも、乗り心地の評価において優れるという結果も興味深い。
グッドデザイン賞は、1957年に創設された、日本を代表する総合的なデザイン評価・推奨制度です。製品やサービスの外観だけでなく、人々の暮らしや社会、未来をより豊かにする優れたデザインを顕彰しています。応募対象は、製品、サービス、建築、システム、取り組みなど、有形・無形を問わず多岐にわたり、毎年約5,000件の応募が寄せられています。審査では、人間的視点、産業的視点、社会的視点、時間的な視点から総合的に評価されます。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、社会インフラをデジタルで革新し続けるグローバルリーダーをめざし、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2025年度(2026年3月期)売上収益は10兆5,867億円、2026年3月末時点で連結子会社は606社、全世界で約29万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.com/ja-jp/をご覧ください。