2026年2月24日
産業界の各分野で、自律型AI(Artificial Intelligence)エージェントが関心を集めている。医療技術や重要インフラなどのミッションクリティカルな環境のシステムには、単に自律的に動作するだけでなく、人間の監督の下、透明性と信頼性を備えた説明可能なAIを通じて信頼を獲得することが求められる。GlobalLogicでは、状況を踏まえた動作と意思決定を行い、デジタルとフィジカルの両環境をまたいで活動するように設計されたエージェント型システムを構築している。このシステムは統治型アーキテクチャ内で動作し、ワークフロー間でのエージェント調整、コンプライアンスプロトコルの適用、自社の共有ナレッジファブリックへの接続を実現する。これにより、エージェントは推測ではなく検証済みのナレッジに基づいて動作し、不確実な状況が発生した場合には監督者(人間)に問題をエスカレーションすることができる。
このアプローチは、企業における安全なAI導入を促進するためのフレームワークであるGlobalLogicのVelocityAIに組み込まれている。フィジカルな世界がより複雑化し、機械がより知的になるにつれ、人間がすべてのシステムを細かく管理することはできなくなる。VelocityAIは、エージェント型アーキテクチャ、人間に寄り添ったデザイン、そして企業ガバナンスを組み合わせることで、人間の役割を「手動による制御」から「戦略的な監視」へとシフトさせる。エージェントが量と速度を担い、人間が目的と変革の指針を決める。AIは人間に取って代わるのではなく、人間の能力を高め、人間による自然な思考、意思決定、創造の営みをサポートできるようになる。
産業インテリジェンスを実現するこの新たなオペレーティングモデルは、説明責任を基盤とし、安全性を確保するべく設計されており、日立のミッションである社会イノベーションの実現に貢献する。
(GlobalLogic)
参考文献:Agentic AI Architecture: How to Engineer Intelligent, Autonomous Enterprise Systems(2025.11)
[1]ミッションクリティカルな産業におけるAgentic AIの活用
AIワークロードによりインフラ要件の刷新が進むにつれ、企業や組織はデータ品質、データ主権、セキュリティ管理の複雑化という課題に直面している。調査によれば今後5年以内に、78%の組織において、運用するDC(Data Center)の数が増加する見込みである。一方で、その完全な可視化を見込んでいる組織はわずか2%にとどまっている※1)、※2)。
日立ヴァンタラは、データ統合プラットフォームを通じてこれらの課題に対処する。VSP One(Virtual Storage Platform One)とVSP 360管理レイヤーは、ハイブリッドクラウド環境におけるデータサイロを排除することで、インフラの複雑性を低減させる。Hitachi iQは、AIワークロードに必要なデータを収集するフェーズから、AIワークロードのためにデータを活用できるフェーズへの移行を加速させる。これらのソリューションは、コンピューティング密度、データスループット、熱管理に対応するAI向けインフラと、予知保全やエネルギー最適化を実現するインフラ向けAIの双方を支援するものである。
日立ヴァンタラのアプローチは、シンプルさ、セキュリティ、自己修復機能、そして持続可能性において、目に見える成果をもたらす。また持続可能性については、EcoVadis社のサステナビリティ評価において、継続的にゴールド認証を取得している。これらの特長により、日立ヴァンタラのプラットフォームは、定期的なオーバーホールではなく継続的な進化が求められるDCの基盤として位置付けられる。
(日立ヴァンタラ)
※1)Enterprise Strategy Group (part of Omdia), Complete Survey Results: Private AI, Virtualization, and Cloud: Transforming the Future of Infrastructure Modernization(2025.7)
※2)Enterprise Strategy Group (part of Omdia), Complete Survey Results: Reinventing Data Loss Prevention: Adapting Data Security to the Generative AI Era(2025.5)
[2]日立ヴァンタラが提供するDC向けインフラのイメージ
企業システムの分散化と自律化が進む中、エージェント型AIが中核的なエンジニアリングパターンとして台頭しつつある。エージェント型AIシステムは、状況を認識し、目的に基づいて推論するとともに、他のエージェントと協調して実環境で継続的に動作することに特化したエージェントで構成される。これらのエージェントは、従来のタスクベースの自動化とは異なり、アプリケーション、プラットフォーム、インフラ全体で永続的な意思決定レイヤーとして機能する。
エージェント型AIの次のフェーズは、複数エージェント間のより緊密な協調、永続的な状態管理とメモリ、そして目標に基づく振る舞いによって特徴づけられる。エージェントは、問題の検知、介入の判断、変更の実行といった運用ワークフローを、人間の関与を最小限に抑えつつE2E(End-to-end)で管理するようになっていく。これにより、ITオペレーション、サプライチェーン、セキュリティ、サービス管理のあり方が刷新される。自律性が高まるにつれ、予測可能性、ガバナンス、運用制御は厳格なエンジニアリング要件になる。
Hitachi Digital Services では、この課題に対し、Hitachi Application Reliability Center(HARC)が提供するHARCエージェントで対応している。HARCエージェントは、自律性を実験的な成果ではなく運用上の課題として捉え、確立されたリライアビリティエンジニアリングの手法をエージェント型システムに利用する。
このプラットフォームでは、ガバナンスを備えたHARCエージェントライブラリ、ID・ポリシー・ライフサイクル管理を行うHARCエージェント管理システム、そして本番環境で継続的な可観測性と最適化を提供する運用AIレイヤーが統合されている。
エージェント型AIが企業のオペレーティングモデルに組み込まれていく中、HARCエージェントは、予測どおりに動作し、監査可能な状態を維持し、ビジネス価値を大規模かつ持続的に提供できるシステムを実現する。
(Hitachi Digital Services)
[3]エージェント型AIの未来とHARCエージェントの役割
インテリジェント企業の設計を構造から変革するIndustry 5.0を牽引するのは、企業IT、OT(Operational Technology)、およびドメインに特化したAIの融合である。
これらの技術の融合により、フィジカルAIが生まれつつある。フィジカルAIとは、エネルギーグリッド、工場、輸送ネットワーク、重要インフラといった物理環境において直接センシング、推論、行動を行うシステムであり、ミッションクリティカルな運用を大規模かつ持続可能な方法で実現する。
従来の自動化と異なり、フィジカルAIは産業におけるリアルタイムの意思決定レイヤーとして機能する。また、予知保全、自律的な最適化、自己修復型の運用を実現しながら、エンジニアリングと実行の間のギャップを解消する。
企業は、タスク駆動型のサービス提供から、信頼性、安全性、スループット、エネルギー効率、レジリエンスによって定義される継続的なシステム性能の提供へと移行し、レイテンシ、リスク、人間によるボトルネックを規則に従って低減する。
ここでは、以下に示す四つの基盤が必要となる。
(1)信頼性の高い、統合された産業データ
(2)深層から統合されたIT–OTアーキテクチャ
(3)エンタープライズグレードのガバナンスと可観測性
(4)測定可能な成果をめざして設計されたドメイン特化型AI
Hitachi Digital Servicesは、ITとOTを大規模に統合し、信頼性の高い産業データプラットフォームを構築してドメイン別の専門知識をAIシステムに直接組み込むことで、これらの基盤を運用化している。
また、デジタルツイン、AI対応の資産管理、自律的な運用フレームワークを通じてフィジカルAIを各産業における実環境に展開し、ミッションクリティカルなシステム全体にわたるリアルタイムの洞察、意思決定、オーケストレーションを可能にしている。
フィジカルAIは、Industry 5.0の中核的な柱として、2030年までにエネルギー、モビリティ、製造、インフラにおける競争力を決定づけるものと見込まれている。
(Hitachi Digital Services)
[4]フィジカルAIを用いた産業オペレーティングモデル