2026.04.17
キーワード:
2026年2月、株式会社日立製作所(以下、日立)はリンクアンドモチベーションとともに大学1〜2年生を対象としたキャリアを考えるイベント「Visit」を開催しました。日立が初の試みに込めた願いと、熱気あふれる当日の模様をレポートします。
学生がキャリアを考える場を提供したいという思いで開催された今回のイベント。「Visit」という言葉には、「Visionary Innovators Touchpoint(イノベーションを起こす人財との接点)」という意味合いが込められています。午前・午後の2回実施され、総勢180人の学生が日本各地から参加しました。
<当日のプログラム>
・リンクアンドモチベーション(※)による講演
・ワークショップ
・日立社員による会社紹介・イベントにかける思い
・若手社員によるパネルディスカッション
はじめに、今回第一回目の取り組みとなるこのイベントにかける思いについて、人財統括本部人事勤労本部タレントアクイジション部の部長、大河原 久治に話を聞きました。
──今回のイベントの参加者は大学1〜2年生なんですね。
大河原:はい。大学3〜4年生になると、このようなイベントに参加するのはどうしても就職活動の文脈になってしまいます。しかし私たちが提供したいのは、就職活動とはまた別に学生たちがキャリアを考える機会なんです。
昨今は「大学での学び」と「キャリアを考えること」が分断されてしまっていて、就職活動が学業を阻害するものと捉えられがちです。しかし本来その2つはもっと一体であるべきで、キャリアを考えることで大学での学びが深まり、大学での学びがキャリアに生かされるはず。その相乗効果を大学1〜2年生の早い段階から感じていただきたいと思っています。
就職活動が本格化する前のこの時期に、今回のようなイベントに足を運んでくれる学生が数多くいることに感激しました。自分のキャリアや人生をどうしていくかを真剣に考えている証だと思うので、このイベントから少しでもよいものを吸収していただけたらうれしいです。
──そもそも日立が、学生がキャリアを考えるための取り組みをすることになったきっかけはなんですか?
大河原:少子高齢化によって日本の労働力人口が減少していく中、社会全体の生産性を高めるためには一人ひとりがいきいきと活躍できる社会を作ることが大切です。日立は「社会貢献」という言葉が企業理念にもなっているので、人事の立場からもこのような課題に貢献できないか考えてきました。
そんな中でリンクアンドモチベーションとの対話から、日本で働きがいを感じている方の割合が非常に低いという課題に一緒に取り組もうということになったんです。それをきっかけに「就職活動が本格化する前の早い段階から、働きがいを考えてもらう機会を作ろう」と考え、日立を題材とした今回のイベントのイベント開催に至りました。
参加いただく学生さんが最終的にどんな道を選ぶかは分かりませんが、どんな道を選んでも今回のイベントを機にキャリアを自律的に考えてくれるようになること、その結果自分らしく社会に貢献できる人財が日本中で育っていくことが私たちの願いです。
※ 「モチベーション」にフォーカスした経営コンサルティングファーム。経営学・社会システム論・行動経済学・心理学などの学術的成果を取り入れた、基幹技術「モチベーションエンジニアリング」によって、組織課題の解決、各個人の成長支援を行っている
「日本は世界の働きがいランキング146位中最下位」──そんな講演から始まった今回のイベント。学生からは驚きの声が上がりました。これから社会に出る参加者が働きがいを持っていきいきと活躍するためにも、自分が働く企業の持つ価値観などの「哲学」と企業が誰に何をどのように提供しているかという「提供価値」をしっかり理解して、自身にとっての働きがいを判断する「ものさし」を持つことが大切だという言葉に学生たちも頷きます。
続くワークショップでは、その例として日立の哲学や提供価値を知るためのケースワークを実施。実際に日立の経営メンバーになったつもりで、「未来都市」のまちづくりプロジェクトの責任者として伸ばすべき事業を判断し、強化していきます。
一方、必要に応じて技術を売却することも検討。最終的に問題を解決することで得られる「社会貢献ポイント」の高さをチームごとに競います。
各チーム、議論は白熱しました。未来都市が抱えるさまざまな問題を分析し、どの技術を伸ばして行くか熱心に議論。「課題解決に関係ない技術は思い切って売却しよう」「売却で得たポイントをインフラ基盤に全額投資したらどうなる?」など、初対面のメンバーながら協力してワークを進めていきます。学生たちはこのワークショップから自社の利益だけでなく、社会貢献を第一にしている日立の哲学を身をもって学びました。
ワークショップの熱が冷めやらぬ中、前章でこのイベントにかける思いを語った大河原が日立のこれまでについて学生に語りかけます。
大河原:日立は「社会イノベーション」を通じて世界を本気で変えようとしている会社です。実は2008年頃、日本の製造業としては史上最大級の赤字を計上し 、私たちはかつてない経営危機に直面しました。
そこから這い上がれたのは創業期からある「技術で社会に貢献する」という哲学に立ち返り、日立独自の道を歩んできたからです。これからも日立としてさまざまな社会課題に取り組んでいきます。
イベント後半では、日立の若手社員4人によるパネルディスカッションを実施。人事、SE、営業、研究開発など異なるフィールドで活躍する各登壇者の個性的な回答に会場が沸きました。
4人が日立を志望した理由はそれぞれでした。
竹森 達也(人事): 大学院で人と組織について研究を重ねたり、バスケットのコーチを務めたりしていたので、「人事という職に就きたい」という思いで就職活動をしていました。
日立を選んだ理由は企業規模が大きく、影響力があるため、ここで新しい取り組みをすれば他の企業にも波及できると思ったからです。
池田 光里(SE):高校の文化祭で実行委員をやった時、自分が裏方業務をこなすことでみんなが楽しんでくれたことに強いやりがいを感じたんです。
日立の社会インフラ事業は鉄道・エネルギー・通信など、普段何気なく使っているものばかり。「陰ながら社会を支える」立ち位置が自分のやりたいことに合致していると思い、SEとして入社を決めました。
足立 百音(営業): 大学で地方創生をテーマに研究する中で医療・人口・雇用など、地方の課題の深刻さを実感しました。日本全国にそのような課題があることを知り、「目の前の1地方だけでなく、幅広い地域を支えたい」と思った時、ITからインフラまで幅広い事業を持つ日立への入社を決めました。
高田 裕亮(研究開発): 正直に言うと「鉄道オタクだから」です(笑)。好きなものを仕事にして、多くの人に使ってもらいたかった。研究開発を選んだのは、設計する人たちに知識を授ける縁の下の力持ちでありながら、論文や学会発表で「日立の人」として名前が世界に出るのがかっこいいと思ったからです。
仕事の中で印象に残っているエピソードについてもこんな話がありました。
高田 裕亮:私は多くの人が日常的に利用する鉄道に関する技術を、裏側から支えることにやりがいを感じています。インフラである鉄道は毎日安全に運行されることが当たり前であり、その当たり前を実現するためには技術開発の際に妥協することは許されません。単に「動けばいい」という考えではなく、物理の原理原則に立ち返って本質的な課題を見出し、理論的な裏付けを持って信頼性を築き上げていきます。
もちろん開発の中ではAIも活用しますが、現場の声を聞き、それを落とし込みながら開発することは我々人間にしかできないことだと自負しています。
足立 百音: 昨年、私は社内のグループ公募制度を活用し、金融営業からGX営業へ異動しました。この制度は、自身の関心や志向に基づいて新たな分野にチャレンジできる仕組みで、結果が決まった後に上司と相談する流れになっています。そのため、新しいキャリアに向けて一歩踏み出しやすい点が特徴です。
異動後は、日立グループ各社に点在していたGX関連の情報を整理・集約し、GXの提案力強化に向けた取り組みに携わっています。これまで培ってきた金融営業での視点や経験も活かしながら、自分自身のキャリアの幅を広げられる環境があることは、この会社の大きな魅力だと感じています。
パネルディスカッション終了後は登壇者との座談会も実施。各登壇者の周辺に学生が集まり、皆思い思いの質問をしていました。
イベント参加者のアンケートでは「参加してよかった」「キャリアを考えるきっかけになった」という声が多く寄せられました。その中から一部抜粋してご紹介します。
文系大学1年生:普段なかなか関わることのできない理系学部の学生とも知り合い、友達になることができてうれしかったです。内容としても「来てよかった」と思えるもので、自身のキャリアを考えるよいきっかけになりました。
理系大学1年生:これまでは働くイメージが不明瞭で不安しかありませんでしたが、今回のイベントを通じて「働くって楽しそうだな」と思えるようになりました。
また、これまでは大手企業に就職することこそがすべてだと思っていましたが、それよりも自分がやりたいと思うことをできる企業を見つけることの方が大切なのだと痛感しました。
文系大学1年生:教育を学んでいるので、学校でも教員や院生の話を聞くことはよくありました。しかし企業で働く方のお話を聞く機会はほとんどなかったので、今回のイベントが貴重な経験になりました。
また、今回のイベントを通じて日立に対するイメージが変わったと話す学生もいます。
文系大学2年生:もともと日立には「家電のCMでよく目にする会社」というイメージしかありませんでした。しかし、イベントを通じて社員それぞれが何をしたいのかを考え、目標をもって社会問題の解決をめざしている会社なのだと実感しました。
文系大学1年生:日立が日ごろ目にする家電だけでなく、目に見えないところでもさまざまな事業を行っていることを知り、感動しました。企業というと自社の利益を出すことだけを追求するイメージがありましたが、日立は社会貢献にも力を入れているところが印象的でした。これは大手企業であり、さまざまな事業を行っている日立だからこそできる強みだと思います。
イベントに参加したことで、働くことについて見つめ直す学生もいました。
文系大学1年生:パネルディスカッションなどの話を聞いていると、大学で学んだことや研究したことを仕事に生かしている方が多かったので、私も大学での学びを仕事にどのように生かしていけるか考えたいと思いました。社会人になっても新しいことに挑戦し続けられる環境で、成長し続けたいです。
理系大学1年生:このイベントに参加するまでは、「働きやすさ」と「働きがい」をほとんど同じものだと思っていました。今回、その違いが分かったことで働くイメージがより明確になりました。キャリアを考えていく中で自分にとっての働きがいを見つけ、それを大切にしたいと思います。
日立にとっても初めてとなるキャリアを考えるためのイベント。予想以上の熱気に大河原も手応えを感じています。
──最初は緊張していた学生が、終盤は白熱してワークショップに取り組む姿が印象的でしたね。
大河原:そうですね。イベントが終わる頃には同じグループの学生同士の話が弾んでおり、大学の垣根を超えた交流の場を提供できたことがうれしいです。やはり、企業として就職活動のためではない、キャリアを考える場の提供は重要だとあらためて実感しました。ワークショップに熱心に取り組む姿や登壇者の話を真剣な眼差しで聞く姿を見て、学生にとって少しでもよい機会になったのではないかと感じています。
また社員への質問では、今回のテーマである「働くこと」に関する質問はもちろんのこと、学生自身が日頃悩んでいる集団生活でのマネジメントについての質問も多く寄せられており、学生と社会人が交流することで何らかの気づきにつながればよいなと思います。
──学生の皆さんにはどのようにキャリアに向き合ってほしいですか?
大河原:キャリアとは就職したら終わりではなく、一生考え続けるものだと思います。今回のような機会を通じてすでに社会に出ている社会人や別の大学で学ぶ学生など、さまざまな人と交流して、自分なりの「ものさし」を持ち、常にキャリアを考え続けてほしい。「どんな人生にしていきたいかな?」「そのためにどんな大学生活を送りたいかな?」ということを考え続けていくきっかけに今回のイベントがなっていたら、これほどうれしいことはありません。
「就職」をゴールにするのではなく、いかに自分らしく社会に貢献し、働きがいを持って生きていくか。その問いに早すぎるということはありません。日立はこれからも、迷いながらも自ら歩もうとするすべての学生を応援し、ともに未来を考えるパートナーであり続けます。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです