2026.03.17
根岸 獎太
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品質保証統括本部で、通信やエネルギー分野のプロジェクトのQAリーダーとして品質保証業務を担当する根岸 將太。当初志望していたSEから、なぜ品質保証の道を選んだのか。社会インフラを支える株式会社日立製作所(以下、日立)の巨大プロジェクトの最後の砦として見出した仕事の醍醐味と、挑戦の日々に迫ります。
学生時代、情報工学を専攻していた根岸は、自身の「好き」を突き詰める研究に没頭していたと振り返ります。
「大学院では、AIを使って人の骨格情報を検出し、サッカー選手のキック動作の傾向を分析する研究をしていました。もともとサッカーが好きだったので、興味とITの知識を掛け合わせた研究は楽しかったですね」
就職活動でも、学んだ知識やスキル、好きなものへの愛着が進路に影響を及ぼしました。
「ITの知識を生かしたいという軸に加え、スマートフォンやパソコン販売のアルバイトをしていた経験から、家電製品や通信分野にも関心を持って企業を見ていました。最終的に日立に入社を決めたのは、歴史ある企業ならではの安定性に加え、サッカー観戦が好きなので柏レイソルを通じて親近感を抱いていたことも大きかったです」
入社前の配属先紹介の場で、ある職種との運命的な出会いを果たします。それが、現在担当する「品質保証(QA:Quality Assurance)」でした。
「QAは、第三者機関として『お客さま目線に立って品質を評価する存在』だと聞き、私に合っていると直感しました。大学院時代、後輩の研究内容に対して『もっとこうしたら良いんじゃない?』とアドバイスを積極的に行っていたんです。まさにこの性格が生かせる場所だと、志望職種を変更しました」
こうして2022年に新卒入社後、半年間の集合研修に参加した根岸。ECサイトを構築する実務を通してIT知識を一から習得できるプログラムで、経験者としてPLのような立場でグループをリードしました。
その後、品質保証統括本部に配属された根岸を待っていたのは、SEとしてモノづくりを体験する実習でした。
「すぐにQA業務を始めるのではなく、まずはSEが行うソースのコーディングや設計、テストといった一連の工程を経験しました。この期間に、自分自身でバグを生む経験ができたことは非常に大きな学びになりました。
作り手がどんな場面でミスをしやすいのか、知識不足や業務体制といった背景や苦労を肌で感じたからこそ、現在の品質を評価する立場でも『ここは大丈夫かな』と作り手の視点を持って指摘できています」
モノづくり実習を終え、いよいよQAとしてのキャリアをスタートさせた根岸。実習でも対応していた固定電話の申込更改プロジェクトを、引き続き担当することになりました。
「システム同士をつなぎ合わせる結合試験のフェーズで、バグが出そうな弱点機能を洗い出して重点的に検査を行ったり、テスト結果のエビデンスを精査したりといった業務から取り組みました。
しかし、実習を通してSEの皆さんの優秀さを目の当たりにしていただけに、当初は彼らを相手に品質を指摘することに躊躇がありました。実習中の個人的な感情とは切り離して、あくまで客観的に判断する『QAとしての視点』に切り替えられるようになるまで少し時間がかかったことを覚えています」
QAとしての大きな経験となったのが、次に担当した通信サービスに関するシステムの更改プロジェクトでした。根岸はここで、要件定義からリリースまで、すべての工程に伴走することになります。
「システムのリニューアルや、新たに開始された双方向番号ポータビリティ制度への対応などに関わりました。要件定義のドキュメントのチェックに始まり、設計通りにコーディングされているかどうかの精査、テスト工程では海外の協力会社とも連携しながら、単体テスト、結合テスト、総合テストと何度も段階を重ね、品質を確認していきました。
一般的に、プロジェクトは関わる人が多ければ多いほどバグが発生しやすくなります。だからこそ、最後の砦として全工程を見守る重要性を痛感しました」
そして根岸は、自身の仕事の成果が形となって自分のもとに届くという、忘れられない体験をします。
「最近、入籍したのですが、職場の同僚が、自分が担当したシステムを使って祝ってくれたんです。まさに私が担当し、品質を確認してきたシステムを通じて、手元にしっかりと届けられました。あらためて、プロジェクトは成功したんだなとやりがいを実感した瞬間でしたね」
その後も数々のプロジェクトを経験し、3年目からはリーダー業務も任されるように。
「通信系だけでなく、エネルギー分野のプロジェクトも担当し、協力会社の方への指示出しや管理も行うようになりました。想像以上に早いリーダーへの抜擢でしたが、それだけ期待されていると感じましたし、2年目の時に指導員から『プロジェクト全体のマイルストーンを意識せよ』と叩き込まれていたおかげで自信を持って進めることができました。『困った時はなんでも言って』と周囲のフォローがあったことも心強かったですね」
品質保証の仕事は、表舞台からは見えにくいかもしれません。しかし、根岸は「品質の門番」として譲れない一線を守り続けています。
「SEの皆さんからすれば、一生懸命作ったものを指摘されるわけですから、すべてを受け入れるのが難しいこともあると思います。しかし、私たちはSEの敵ではありません。一緒にプロジェクトを成功させたいという想いは同じです。それをきちんと納得してもらうためには、定量的なデータや蓄積されたナレッジをもとに、論理的に『なぜその対策が必要なのか』を伝えることが重要です。
自分より役職が上の管理職と対等に議論しなければならない場面もあり、知識とコミュニケーションの両面で難しさとともに大きなやりがいを感じます」
あらためて根岸は、品質保証の魅力をこう強調します。
「1つのプロジェクトにとどまらず、さまざまな案件を渡り歩けるところがおもしろいですね。どの現場でも『この社会インフラはこういう仕組みで動いているんだ』などの発見があり、幅広い知識と汎用的なスキルが身につきます。
また、日立が手がける大規模プロジェクトにおいて、最後に重要になるのは品質だと考えています。SEだけではどうしても手が回らない部分をカバーし、不具合を未然に防ぐことで、日立の社会的信頼と価値を守る。派手ではないけれど『縁の下の力持ち』として社会インフラを支えているという自負が、大きなモチベーションになっています」
こうした品質保証の仕事に向いている人財について、根岸はサッカーのポジションになぞらえて語ります。
「学生時代はディフェンダーをやっていて、現在、同僚とやっているフットサルではゴールキーパーを務めています。QAも守備的な役割にやりがいを感じる人が向いているかもしれません。『ここ、まずいな』と思ったら、どんなに些細なことでもすぐに行動を起こせる危機管理能力。そして、物怖じせずに意見できる強さが必要です。
以前、あるプロジェクトで結合テストのエビデンスを確認していた時、電話番号にハイフンがあるものとないものが混在していることに気づいたんです。小さなことでしたがSEに伝えると、念のため修正してくれることになりました。その対応準備中に、お客さまからも同じ指摘が入って。
もしあの時見過ごしていたら、後々大きな手戻りやトラブルになっていたかもしれません。まさに、お客さま目線・第三者目線でわずかな違和感も見逃さない姿勢こそが、品質を救うのだと実感しました。こうした仕事に魅力ややりがいを感じ、社会インフラの『品質の門番』として、ともに挑戦してくれる仲間が増えると嬉しいですね」
入社して約3年半。日立での働き方について、根岸は「包容力」という言葉で表現します。
「歴史ある企業という安心感がある一方で、働き方は柔軟にアップデートされています。プロジェクトの都合にもよりますが、リモートワークやフレックス制度を活用し、プライベートの予定に合わせて業務開始時間を調整できます。先輩たちが育児と仕事を両立する姿も間近で見ているので、ライフステージが変わっても安心できる、包容力のある会社だなと感じます。
また、若手のうちからリーダーとして主体的に挑戦することが求められますが、決して放任されるわけではありません。むしろ、一人ひとりの適性や成長を見極め、考え抜かれた上でプロジェクトに配属されていると感じますし、困った時は相談すれば上司や先輩がアドバイスをくれます。オフィスに出社すれば部長ともフラットに話せるなど、風通しの良さも魅力です」
さまざまなプロジェクトで経験を重ねながら、根岸は分野を超えてさらなる高みをめざしています。
「直近の目標は、できるだけ上司に頼らず、主体的に物事を進められるようになることです。長期的には、通信やエネルギーだけでなく交通など他分野への参画も経験して知見を蓄え、『この分野なら根岸さん』と言われるような存在をめざしたいです。そして、ゆくゆくは複数分野を統括できるオールマイティなQAになれたら嬉しいですね」
現在は情報処理安全確保支援士などの資格取得にも挑戦しながら、業務革新にも取り組んでいます。
「会社にはeラーニングなどの学習コンテンツが豊富に用意されていますし、資格取得のための費用補助制度も整っています。こうした手厚いサポートを活用しながらスキルアップできる環境があるのはありがたいですね。
また、業務外活動として社内で開催されている生成AIワーキンググループに参加し、テストの自動化や効率化など、QA業務へのAI活用を模索しています。学生時代の研究が生かせる場面もあり、非常にワクワクしています」
「こうすればもっと良くなるのでは?」という小さな気づきを積極的に提案する。そんな自身の性格を、開発の最後の砦として品質を守る才能へと昇華させた根岸。社会インフラの信頼を支える眼差しは、日立の品質保証という仕事の可能性をこれからも広げていきます。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです